第13話クロウの警告と忍び寄る影
第13話:クロウの警告と忍び寄る影
静かな夜の宿屋。セレスの髪を切った後、俺は一息ついて窓の外を眺めていた。月明かりが街を照らし、人々のざわめきが遠くに聞こえる。
セレスは鏡を見つめながら、短くなった髪を指で撫でていた。
「……変じゃ、ない?」
不安そうに尋ねる彼女に、俺は微笑んだ。
「似合ってるよ。すっきりしたな」
セレスは少し頬を染め、小さく「ありがとう」と呟いた。
——その時だった。
ドアが静かにノックされる。
「……誰だ?」
警戒しながらドアを開けると、そこに立っていたのは黒いコートを羽織った男——クロウだった。
「よお、相変わらず面倒ごとに巻き込まれてるな、ユウト」
クロウは苦笑しながら部屋に入ると、ちらりとセレスに目を向けた。
「そっちの嬢ちゃんが噂の"歌姫"ってやつか?」
セレスはビクッと肩を震わせ、俺の後ろに隠れる。
「おい、脅かすなよ」
「ああ、悪い悪い。……だが、お前、本当に大丈夫か?」
「……どういう意味だ?」
クロウは少し真剣な表情になり、低く言った。
「王都で"彼女を狙う動き"がある。貴族連中が『異端の歌姫』を危険視して、始末しようとしてるらしい」
その言葉に、セレスの顔が青ざめた。
「つまり……ここにいるのは危険、ってことか」
「そういうこったな。お前ら、早めに移動したほうがいいぜ」
クロウはそう言って、懐から一枚の紙を取り出し、俺に渡す。それは"手配書"だった。
『異端の歌姫 セレス 発見次第、報告せよ』
「……マジかよ」
「貴族どもが裏で動いてる。俺もできる限り情報を集めるが……長居は無用だ」
クロウの忠告に、俺はセレスを見る。彼女は不安そうに手を握りしめていた。
「……俺が守る。だから、大丈夫だ」
俺がそう言うと、セレスは驚いたように目を見開き——やがて、小さく頷いた。
こうして、俺たちは新たな逃亡の旅へと足を踏み入れることになった。
——次回、「逃亡と決意」
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