第12話少女の孤独と髪を切る勇気
第12話:少女の孤独と髪を切る勇気
街の裏路地、ひっそりとした宿屋の一室。そこに、俺と彼女はいた。
「……お前、本当に髪を切らないのか?」
俺は、窓際に座る少女を見つめながらそう尋ねた。
彼女——セレスは、膝を抱え、長い髪を指で弄びながら視線を落としていた。
「切りたい……でも、怖いの……」
その声は、どこか震えていた。
俺はセレスの髪を見つめる。腰のあたりまで伸びたそれは、綺麗にまとまっているけれど、不揃いな部分もあった。自分で切ろうとしたことがあるのかもしれない。
「……なんで怖いんだ?」
「……私……昔、髪を切るたびに、みんなが笑ったの」
セレスの声はか細く、途切れ途切れだった。
「短くすれば、"男みたい"って笑われて……長くすれば、"気持ち悪い"って言われた……」
「……」
「髪を切るたびに、笑われて、馬鹿にされて……だから、もう……髪を切るのが怖くなったの……」
俺は言葉を失った。彼女がどれだけの孤独を抱えてきたのか、その一端を知った気がした。
「……でも、本当は切りたいんだろ?」
セレスは、ぎゅっと膝を抱きしめたまま、小さく頷く。
「じゃあ、俺が切ってやるよ」
「……え?」
セレスが顔を上げ、驚いた表情を浮かべる。
「俺が切れば、誰も馬鹿にしない。お前が望む長さにしてやるよ」
「……でも……」
「世の中には悪い奴ばかりじゃない。少なくとも、俺はお前を笑わない」
そう言うと、セレスは戸惑いながらも、少しだけ目を伏せた。
「……わかった……お願い……」
震える声だった。でも、そこには確かに"勇気"が宿っていた。
俺は静かにハサミを手に取り、彼女の長い髪にそっと触れた。
それは、彼女が"過去"と向き合う第一歩だった。
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次回、「新しい自分と第一歩」




