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「そ」の場合①

ーーこの世の中の幸福なんてのは、所詮気持ちの持ち様さ


お金を持っているから幸せ?

お金を持っていないから不幸せ?


愛する人がいるから幸せ?

愛する人がいないから不幸せ?


十人十色

人の分だけ幸せに感じる閾値は存在する


だから他人じゃ人の幸福は測れないんだよーー



娯楽に満ちた雑誌でこんな言葉を見た記憶がある


そいつの言い分は正直理解はできる

ただそれは人間として五体満足に生きている前提の元なされる会話であって

この街においてその言葉は適応されるはずがない



13になった俺は、これまで以上に知識を得ていた


そしてこの生まれ育った街に対して、

言葉にできない嫌悪感を沸々とさせていた



〔不良〕になっていたのかもしれない

ただ、感情の吐き出し先が見つからないまま知識の吸収だけは止めなかった






タン タタン タンタタンタン タタンタンタタン


微かに小さな音が聞こえた



久しぶりに文字以外の何かの感覚に触れた気がする


反射で音のする方に足を運んだ




男の子だった

恐らく10にも満たない男の子だ


手に持った石で地面を叩いているようだ



タン タタン タンタタンタン タタンタンタタン


俯いて地面を叩き続けていた




俺はその様子を遠巻きに眺めていた


時折男の子はそばに落ちている違う石に持ち替えて

やはりまた地面を叩いていた



タン タタン タンタタンタン タタンタンタタン




気がつくと随分長い間、俺はその男の子を見続けていた

恐らく好奇心であろう

理解できない行動を取り続ける男の子の姿に

何かの意図を導き出そうと観察をし続けた



"誰かいますか?"


突然、男の子は手を止め呼びかけた



⋯⋯


俺は初めて他人からの呼びかけを無視してしまった

突然声をかけられた驚きもさることながら

ただ石を叩き続けていた男の子に気取られた恐怖

そして今の自分の滑稽さが、成長と共に肥大化した

小さなプライドに響いていたのだ



"気のせいかな"


再び男の子は地面を叩きだした



俺は居ても経ってもいられなくなりその場から逃げ出した




次の日もその次の日も 同じ場所に男の子がいた

やはり石で地面を叩いていた


俺は遠くで見ることしかできなかった




5日目、ついに俺はあの子似話しかける決心がついた



これまでいる場所は変わらなかったので

今日は正面側から近づいて遠くから声をかけ始めよう


これまでの人との関わりから

初対面での人との距離感について学びが多かった



いきなり近い距離に行くのは怖がられる

丁寧な言葉を使わないと不審がられる



まずは優しい言葉で、遠くからコミュニケーションを計ることが大事である と



"こんにちは"


俺の呼びかけに対して男の子は手を止めた


即座に俺がいる方向に顔を向けた




その顔はひどく傷だらけで

だがとても穏やかな少年の顔だった

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