幕間1
"これが「あき」との出会いだ"
映像の向こうの男が少し悲しそうに呟いた
"まぁ、なんだ。俺は若かったし世間知らずだった。
この場合『世間知らず』ってより、街のルールを知らなかったってほうが正しいのかな。"
少しの沈黙に男は何を思ったのだろう
「あき」を思い出しているのかもしれない
[なにこれウケる]
[てかおっさん誰だよw]
この時初めて生放送にコメントがついた
気づけば視聴者は5になっていた
"そんなわけで1つ目の⋯⋯お、これはなんだ"
どうやら男はコメントに気がついたのかもしれない
"1つ目の真実は、《この街の実体》だ"
気を取り直して語り始めた
"この街には法律と呼ばれるものが存在しない。
治外法権ってやつになるのかな。とにかく本にあるような外の世界とは全く違う世界と思っていい。
人の生き死には当たり前だし、人権なんてものも存在しない。3大欲求に従順なことに何の咎めもない。"
見てくれから結びつかないほど流暢に淡々と男は続ける
"ただ妙だと思ったんだ。
もしこれが当たり前なのだとしたら「あき」は何故男性に対して恐怖を感じていたのか。
後から分かったことなんだが、「あき」は街で妊娠、出産をしたらしいが、その頃から人目を避けて生きていたらしい。
元から当たり前に三大欲求が暴れている世界で、それに恐怖する人間は誕生するんだろうか。
そこで考えついたのが2つ
人間とはそういうものであるという考え
この街の人間には恐怖する感情または記憶が植え付けられている
少なくとも、普通じゃない街だってことが分かったんだ。"
意気揚々と持論を展開する男は少し意気が揚がっていた
[こいつ頭イカれてね?w]
[名物おじさんキタコレ]
男の熱弁あたりから視聴数は10になっていた
同時にコメントをする人間が増えていた
男の持論は今の時点で意味がわからなかった
[「あき」さんはどうして死んだのですか]
恐らくこれまでコメントした者とは別のコメントが現れた
このコメントに気づいてか気づかずか
画面の中の男は口を閉ざしていた
軽い放送事故を迎えた午後3時




