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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 ラクダを走らせ街中に入る。

 まだほとんどの店が扉を閉める繁華街を抜け、市場が立ち並ぶ場所に出る。近くでラクダを預けてから徒歩で進むと、カラフルな屋根に南国情緒が漂う屋台がたくさん見えて来た。


 近付くと網で焼いた魚貝類の香ばしい匂いがしてくる。他にもカットされたばかりのフルーツや串焼きの肉、味付けした肉や魚をトルティーヤの生地で巻いた物、マラサダに似た揚げパンを揚げている屋台など、たくさんの屋台が立ち並ぶ。


 ここでは食べ歩きをするのか、持ち帰って食べるのか?とキョロキョロしているとザック殿下に「迷子になる!」と手をつながれた。確かに食事に来た人だけでなく、色んな目的で訪れた人々で市場はごった返している。

 食べ物以外にも船で運ばれて来た様々な物を販売しているようだが、今は朝食時なので特に食べ物の屋台は混雑していた。


 私達はフードを被って歩いているけど、普通に歩いているバニヤンはとても目立つ。それに兄妹二人も顔を知られているのだろう、あちこちから声が掛かり挨拶されている。


「この港に乗り入れている船の約4割がうちの船団の船なんです。残りは外国籍と他の船団です」

「凄いですね〜。あなたも海に出ているのですか?」

「私は訓練では船に乗っていますが、まだ外洋には出た事がありません。でもやっと15歳になったので今回初めて外洋に出ます。あなた方と一緒に西の国に向かう予定なんですよ」


 ご長男は嬉しそうに、そう仰るのだが…

「私達はまだ船で帰るか決めていないんですよ。決めるのはスネイプニル達ですから」

「!」

 長男さんはとても驚いた顔をされたが、彼の中ではすでに私達は船で帰ることになっていたのだろうか?

「彼らは我が国の神獣でも妖精でもないんだぞ」

 そう言ってバニヤンさんが息子を嗜めるが、一体それはどういう意味だ?!


 色んな食べ物の屋台を抜けて市場の中心部まで来ると、そこは広場になっていて、たくさんのイスとテーブルが並べてあった。皆、買ってきた物をここで食べているようだ。

 ちゃんと座って食べる場所があるんだ!


「日が昇ると暑くなるから午前中だけだ。席で待っているから好きな物を持って来い」

 そうバニヤンさんは言うけど…お金は?

 私達は「市場はスリも多いから貴重品は置いていけ」と言われている。

「父の名前を言えば大丈夫ですよ」

 と次女さんが教えてくれる。


「ツケって事?!」

「父が来たことが皆に伝わっていますから、逆にお金は取られませんよ」

 何てことだ!!だからあんなに堂々と歩いていたんだ!

 “市場の全ての食べ物が食べ放題!”

 リリベルの心が歓喜する。

「だが、ちゃんと息子か娘に着いて行けよ。初心者は迷子になるからな」

 バニヤンさんはワハハハと豪快に笑う。


「とりあえず海鮮を!」

 とリリベルが言うと、ご長男は王弟殿下とザック殿下をチラッと見る。

 あっ!スイマセン…食べ物を前に自分の意見を優先してしまいました…。

「私も新鮮な海鮮を食べたいですね」

 王弟殿下は笑いながら仰った。

 私の方が大人なのにスミマセン。


「私も最初は海鮮が食べたい」

 ザック殿下もそう仰ったので、ご長男は彼のお勧めの海鮮屋台に向かい始める。大きなお皿に焼き立ての大きな魚やイカやタコ、エビや貝類をたくさん盛ってもらって、戻りながら飲み物もゲットする。その後も二度、三度と食べ物の屋台を往復する頃には、皆、お腹が一杯になっていたがリリベルはまだイケる。


「まだ食べるのか?」

 立ち上がるリリベルを見て誰かが言った。

「デザートがまだです!」

 皆、顔を顰めたが、次女さんは違った!

 さすが女子は別腹がある。

「妖精様!オススメのスイーツがあります!」

 二人で仲良く腕を組んでルンルンでデザートの屋台を目指す。


「妖精は食べた物もどこか飛んで行くのですか?」

「息子よ!なにアホな事を聞いているんだ」

「リリベル妃は王宮でもよく召し上がっておられましたよ。栄養が全て脳に行くんでしたっけ?ねっアイザック王子、ん?王子?」

「あ?あぁっスマナイ。そうだな彼女は空腹だと機嫌も悪くなるんだよ」

 慌ててそう言ったが「危ないな…ちょっと上の空だった」と大きく息を吐く。


 アイザックはリリベルがラクダを直ぐに乗りこなした事を思い出していた。いくら乗馬が得意でも普通、ラクダって直ぐに乗りこなせるものなのか?

 スネイプニルだってあの尋常じゃないスピードを除けば、乗った感触は普通の馬だ。だがリリベルは自分が後ろで心配していても、危なげなくラクダを操っていた。

 それに絶対、楽しんでいた…。ホント驚くな。

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