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「空腹のリリベル妃!確かに凄く怖かった!あの日、火の粉から火柱の妖精に皆の見解が変わったんですよね?」
そうだった…火山の国、到着初日の王族達が集まった晩餐会でリリが空腹のあまりブチ切れたんだった…。
「…という事は船で帰国するなら、多めに食料を積まないといけないと言うことか?」
「えっ?!そこまで人の何倍も食べる訳ではないかと…でも普通に大柄の男性くらいは食べます」
「そうか、それぐらいなら…安心したよ。でも万が一を考えて、物資を補給できる港は検討しておこう」
気を遣わせてスマナイな。
でもリリが“よく食べる”という事を早い内に知っておいてもらった方が良いだろう。
特に中身は妖精ではないってこともな。
食後は海辺の方に歩いて行く。
市場の先はもう海だ。だが砂浜ではなく小型のボートが乗り着くような船着き場になっている。
しかし初めて海を見るリリは目を見開いている。
「デッカい…」
感想はそれか?
まあ海とは言えボートの船着き場だ。感動は少ないのだろう。本当なら美しい砂浜が広がるビーチを見せてあげたかった気もするが、砂浜はもっと市場のある場所から南下した先にあるのだと言う。
そこはこの国の有数のリゾート地で別荘などが建ち並ぶそうだ。
この船着き場は大型船や漁船からの荷を海から直接、市場に運ぶために作られたそうなので人々の生活に密着した海岸なのだ。
「まあ、この辺りは荷運び用のボートしかいないが、あちらを見てみろ」
バニヤンの声に皆、北の方角を見ると何艘もの大型船が遠くに停泊しているのが見える。大きな灯台もあった。
「デッカい」
やはり同じ感想なのか?
俺は少しツボに入って笑ってしまう。
「ザック殿下、ホント笑いの沸点低いな〜。今、どこに笑う所が?」
君が面白すぎるんだろ!
「いや、海と船への感想が同じだなと思ってさ」
「ああ。でも海は思ってたのと違ってて。船は近づいてみないとね」
「そうですね。私も思ったほど海に感動しませんでした。期待値を上げ過ぎたのかなぁ」
王弟殿下もそう感想を漏らした。
「じゃあ船の方に行くか」
バニヤンがそう言って、また皆でラクダに乗って大型船が停泊する港まで向かう事になった。
「ベンジャミン!ニンジンだよ!」
「いつの間に!?」
さっき俺達を乗せてくれたラクダがリリに向かって走って行く。
それよりラクダの名前“ベンジャミン”なのか?スネイプニル達より立派な名前だな。あっちは神獣なのに…セノビックだって本当はマスオだっただろ。
「神獣が彼女に懐く理由が分かった気がするな」
餌付けだけじゃないぞ!だが半分は当たっているな…。
「バニヤン、リーダー格のラクダは何て名前なんだ?」
「ヘラクレスだ」
やっぱり立派な名前だった。
ラクダを走らせ20分ほど行くと船の汽笛が聞こえてきた。
「わ!何の音?」
「船の汽笛だよ。これから出港する船がいるんだろうな」
「え!見たい。間に合うかな?」
ラクダで港まで乗り付けると、ちょうど船が港から離れたところだった。
「わぁ!」
陸から離れて行く船に釘付けになる妻。
何を思ってるんだろうか?また「デッカい」かな?
「どこに行くんだろう?!」
あ、違った!残念。
「あの船は行き先は分からないけど南の国の船籍だよ」
長男が応える。
「何で分かるの?もう船のマークも国旗も見えないのに」
「船が出港する時に見えた動力だよ。スクリューが大きいのは水の力を有効に使う為なんだ。主に水が動力の南の国だよ」
「凄い!風が動力だと?」
「最初から帆を開いている事が多いよ」
「火山の国では?」質問攻めだ。
俺が説明した時より食い付きが良いのは、実際に船を見たからなんだろうな。
船団の使用人がラクダを引き取りに来てくれた。
「これから、君達が海路を選ぶなら乗船する予定になる船を案内するよ」
リリの目が更に輝く。
気持ち分かるよ。俺だって船は初めてだしワクワクする。
気付けば100話…王弟や長男、次女の名前は考えていないのに、ラクダの名前を考えている自分に呆れました…。




