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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 とある北の神殿の一室〜


「母上、ご機嫌いかがですか?」

「悪ぐね。なぁそんな事より、あの二人は火山の国でもやらかしてらぞ」


 北の女神である母は、私を軽く一瞥しただけで面白そうに口の端を上げている。私に対する態度はいつも通りだが、母がこんな風にご機嫌なのは珍しい。そして腕にはリリちゃん人形を抱えているが、これの存在も母の癒しになっていると姉が言っていたな…。


 特に今は父が亡くなって、まだ1ヶ月が過ぎたばかりだ。にもかかわらず、落ち込む様子も見せず、普段通りに過ごせているのは、あの二人の存在のお陰だろう。


「おめは、マキシマム気にかげでけでおぐれ」

「マキシマムじゃねぐでマキシミリオンだぎゃ」

 北の国王はそう言って溜息を吐いてから、続けて伝える。

「母っちゃ、わは一年間、喪に服すたっきゃ国王引退するす」

「はん?そうだが…んだばて(たの)すそうだな〜?顔がニヤケてらねぇ」

「そりゃあな」


 母に鋭く睨まれたが、軽く流して挨拶してから部屋を出てくる。

 そして神殿内にある王族の墓に向かうと、真新しい墓標の前で座り込む息子を見つける。

 やはり今日もここにいたか…。

 彼の妻も幼い息子と一緒に心配そうに彼を見守っている。


 父が亡くなって1ヶ月経っても、彼は祖父の死に目に間に合わなかった事に胸を痛めて、毎日ここに通い詰めている。

 だが彼だけではなく誰も父の死に目には会えていない。

 夜中の就寝中に静かに息を引き取ったのだ。

 発見したのは、なかなか朝の庭仕事に降りて来ない父を心配した神殿の庭師と侍女だった。


 それでも父の世話した青薔薇が各地の青薔薇に知らせて、マキシミリオンが直ぐに気付くことが出来たのは奇跡に近いだろう。ちょうど子爵領にいたと言うのも何かの縁を感じるな。

 もうほとんど薔薇は散っていただろうに。


 マキシミリオンに比べ、驚くべきは母だろう。

 父の死を長く悼むのだろうと思っていたが、復活が早かったのはやはりあの二人のせいだ。


 他国には母の力は及ばない。

 それに、特に遠く離れた火山の国など気にもかけた事はなかったのに、ここ最近、母はずっとスネイプニル達を通して他国を見ている。

 これまでも母はサオリがあちこち出歩くのを放任していた。脱走癖のあるサオリの行動範囲も北の国内にとどまっていたが、転機は私の西の国の訪問だった。それ以降まさか山脈を越えて子爵領にまで向かうとは…。


 お陰で意外な事も分かった。

 まずスネイプニルは西の山脈は夏場なら丸1日もあれば駆け上がってしまうという事、あんなに阻まれた聖女の防御壁はスネイプニルに乗っていれば全く引っ掛からなかったという事、そして子爵家の人々は驚くほど我々、王族と類似していた。

 歴代の肖像画を見れば納得だった。


 随分と我が国の王子達が世話を掛けたようだ。

 母から逃がれた者もいるが、好奇心から西に渡った者もいた。子爵家の呪いは最初の王子がかけられたものが、今だに続いていたのだが、それに気付いたのも最近だというから驚きだ。

 しかも呪いを解かなくても良いのだと言う。

 

 北の王は墓標の前に座り込む息子の背中を見ながら考える。

 マキシミリオンは末の方の王子だからか、あまり王族らしく育っていない。しかし口下手だが心優しい王子で母や父に気に入られていた。

「マキシミリオン、お前のそんな姿を父は望まない。妻子も心配しているだろ」


「父っちゃ、爺っちゃに青薔薇の世話を習う約束してあったに…」

「お前…騎士だろう?!庭師に転職するのか?」

 彼の妻も初耳だったのか目を見張っている。

「手伝うだけだが。おいはスネイプニルが好ぎだ。あいつら面白ぇし」

「安心したよ」


「なあ!父っちゃ、おいはやりで事ある」

「分かった。だがちゃんと妻と相談するんだぞ」

 何だか想像つくな。

 私はもう一人のタンクトップの男を思い出すのだった。

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