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セノビックがスピードを落とし始めると、竜巻の中からセノビックに乗ったザック殿下の姿が見えたので、とりあえず兵士の皆さんは警報を鳴らしに行くのを止めてくれたようだった。
だけど彼らは驚きの表情のまま固まっている。
「リリ、お待たせ。あれ?どうしたんだ?」
ザック殿下は私と兵士達を見て首を傾げている。
「私達が走る時に起こした竜巻を見て災害だと勘違いしたみたいなの。でも竜巻警報を街に鳴らす前に止めたから」
「そうか。勘違いさせて悪かったな」
ザック殿下がマントのフードを下ろして軽くお詫びすると、兵士の皆さんは「赤い髪!」ってまた動揺していた。
更に彼らの驚きに火を注いでしまったなと思ったが、殿下も追い付いた事だし、リリベルは彼らを放って先に進む事にした。
私達が入口の門の所で通行証を準備していると、先程の兵士達が戻ってきて「女王陛下のお客様方でしょうか?」と尋ねてきた。
ちゃんと連絡きてたんだ。
ザック殿下が「そうだ」と応えると彼らは「直ぐにバンヤンツリー船団のお屋敷までご案内します」と言ってきたが、私達は案内をお断りをして場所だけ聞いて、再びスネイプニル達と出発する。
街中は午睡の時間なので空いているから私達は馬を並べて走る。
「通行証を確認されなかったな」
「‥‥‥」
リリベルは「殿下の赤い髪のお陰ですよ」って思ったけど黙っておく。
船団主の屋敷は街の中心地から少し外れた南側にあると聞いたが、繁華街を少し南にそれるだけで遠くからでも立派な建物が見えてきた。
さすが大船団を抱える船主だ。マギーさんのお屋敷に匹敵する立派な邸宅だった。
「まだ、昼過ぎだからお昼寝中ですよねぇ?」
「誰かは起きてるだろ」
ザック殿下がセノビックから降りて門の兵士に声を掛けようとすると「アイザック王子〜、リリベル妃〜!」と大きな声で呼びながら王弟殿下が待ち構えていたかのように出て来られた。
「すいません。もう少し遅く来る予定だったのですが、思ったより早く着いちゃって」
「ええ。そんな事だろうと思ってました。街の門からハヤブサの連絡が来たので直ぐに出て来たんですけど、タイミングが同じだったようだな」
そう言って王弟殿下はニッコリ笑った。
「ようこそ。我が屋敷に西の第三王子殿下ご夫妻。私はここの主人のバニヤンと申します」
と言いながら王弟殿下の後ろから出てきたのは、よく日に焼けた体格の良い男性だった。
おぉ!船長さんて感じのイケメンだ。それに瞳も金色だ。
「船団主、世話になる。まずは厩舎に案内してくれないか?馬達を休ませたい」
「承知しました。神獣達の注意事項も伺っておりますからご安心下さい」
そう言って主人自ら案内してくれるようで私達も2頭を連れて着いて行く。
広い小屋に砂場と水場のある馬場、ちゃんと木陰もある。
そして木陰にはヤシの実…完璧だ。
小屋の中にはすでに水や牧草、ワラも準備されていたので、私は馬達に回復魔法をかけてあげるだけでよかった。
「何か他にご入用の物は?」
厩舎にいた使用人が聞いてくれる。
「果物はありますか?バナナかパパイヤが良いのですが、青いのと熟れているの両方あれば尚良いです。でも後で大丈夫です。今はココナッツジュースだけで満足しそうです」
出発前にも十分食べて来たのだ。
「用意しておきましょう」
「ありがとうございます。サオリ、セノビック、後で果物持ってくるね」
2頭は回復魔法をかけると直ぐにココナッツに走って行った。
そんなに好きなんだね…。
屋敷の中に通された後、主人とはそこで別れてメイドに部屋を案内される。
「一度、部屋で休憩なさいますか?それとも軽食や飲み物をお持ちしましょうか?」
そうメイドが聞いてくれたが、リリベルは休憩よりもやりたい事があった。
「あのお風呂に入りたいのですが、お風呂は直ぐに入れますか?」
王都ではハマムなどの蒸し風呂があったが、ここまでの宿では桶で水浴びが主流だった。そして村では体を拭くだけだったのでリリベルはお風呂に入りたかった。
「ではハマムに直ぐご案内致します」
メイドは直ぐに案内してくれた。良かった。
さすが大きな屋敷なだけある。
リリベルは久しぶりの蒸し風呂で使用人に「脱水症状を起こしますよ!」と起こされるまで爆睡した。
ハマムは横になれるのが良い。




