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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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「行っちゃったわね〜」

 王宮には数日の滞在だったが、二人が発つと火が消えたように静かになった。


「30分程で王都の街を駆け抜けて行ったらしいぞ。郊外の見張りからハヤブサで連絡が来た」

「えっ!馬車で普通は2時間以上かかるでしょう?」

「もう隣り街に着く頃かもな…」

「もしかして最初の砂漠も1日で抜け切るのでは?」

 宰相も驚きを隠せない様子だ。


「砂漠の日中はさすがに気温が40度を超えるのよ。危険だわ!」

「ちゃんとその情報も伝えてある。だけど陽が昇り切る前に抜けるなら…」

「まさか!?」

「そうだ。まさかな」


 そのまさかだった。

「ザック殿下、テント要らなかったかも。逆に荷物じゃない?」

「リリ、次の砂漠は、さっき通った砂漠より大きいと聞いている。抜けるのに4日かかるって言ってただろう?」

「そっか!サオリ、ゴメンね。やっぱりこの荷物は要るみたい。重いけど頑張ろう」


「だけどさ、魔法に慣れたら砂漠も悪くないな。誰も居ないから飛ばせるしな。時々、方角の確認は要るけど、実際抜けるのに1日もかからなかった」

 もしかしたら普通の馬は砂漠では速度が落ちるのだろうか?リリベルは何気に、自分がスネイプニルにしか乗ったことがない事に気付いた。だがザック殿下だって砂漠なんて走ったのは初めてだろう。この国にしか無いもんな。


「東の国から来た時に、砂埃の道を経験していて良かったよね?お陰で風魔法の使い方も分かっていたから直ぐに対応できたし」

 今のところ4日以上の行程を2日で来ている。次の街までは再び砂漠を横断して普通なら4日はかかるそうだ。

 夏場の砂漠で昼を迎えたら陽の高い内はテントで休んで、陽が沈む頃、再び移動を開始するのがスタンダードらしい。逆に冬場は砂嵐を目視できる日中に移動するのが鉄則だそうだ。


 王都郊外の街から砂漠を越え、この街までは3日と言われていたが1日で来れた。

 日暮れに出て、夜通し砂漠を爆走し明け方には街に着いたのだ。

 今回も日暮れに出たら午前中に着けないだろうか?着けそうな気はするが初めての場所で、しかも砂漠だ。何があるか分からない。

 やはりテントは要るし砂漠で一泊できるくらいの準備はしていこう。


 そう思って出発したのだけど、やはりテントは要らなかった。

 スネイプニル達は砂漠でもスピードが落ちる事はなかったのだ。


「そう言えばさ、王都にいる間もよく砂漠に抜け出していただろう?もしかして遊びに行っていたんじゃなく走りに行っていたんじゃないか?」

「え?!それってストレス解消を兼ねた遊びじゃなかったってこと?」

「分かんないけど、でも砂漠に慣らしていたのかもな」

「まさか〜!?でもだったらスゴイ。ご褒美たくさんあげとかなきゃ」


「最近、パパイヤにハマってんな」

「そう。セノビックは青いのが好きみたいなんだけど、サオリは完熟一択」

「バナナもそうだったもんな」

 私達は順調に礫砂漠も超えて小さな村に辿り着くと、なんと王弟殿下に追い付いてしまった。



「ルドベキア!彼らは4日目で礫砂漠に向かって行ったみたいだぞ。テントも荷物になるから置いて行ったって」

「はあ?!あの白馬って本当に神獣だったのね?」

「ああ賢かったもんな。戦闘能力も凄かったらしい。砂漠で何人も近寄った者どもが返り討ちに遭っている」


「ノースポールベアと普通に戦うって言ってたわ」

「世界最大級の肉食獣か…それは人間は到底、太刀打ちできないな。火の魔法も無効化されたらしい」

「北の神獣だから?あ、ちょっと待って!あの馬達、魔石の首輪もしていたわ」

「なるほど。水の魔石なら効かないだろうな。それよりきっと彼らは王弟に追い付くぞ。恐らく次の村か街辺りでな」

「ハヤブサ並みなのね」

「フェニックスと妖精だからな〜」

 と夫は大笑いしているけど、本当に妖精の方は面白い娘だった。


 それに…また助けられてしまった。

 国に溜まった古い膿みを自分達が囮になって出して行ってくれたのだ。まさにフェニックスの浄化の力のように国を洗い流して行ってくれた。

 これからは呪術には頼らないクリーンな政治と制度が必要だ。

 “女性がたくさん子供を産みたくなる環境”確かにそれを目指さないといけないだろう。それは夫が沢山の妻を連れ歩く、もしくは妻が夫達を引き連れて歩く事ではないのだろう。


 幸い自分は王配一人だ。

 二人目を何事もなく産めたら三人目も彼の子を欲しい!きっとそう言う事なのだろう。

 自分が子供達に囲まれ幸せな姿を見せれば、貴族の女性もきっと着いてくる。

 他国との交流も増えれば男性の考え方も影響を受けるだろう。

 西の王女を迎えるまでに、やる事は多いが楽しみだ。

 女王はそう思った。

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