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実は今日のパーティは二回催されていた。
ランチパーティと夕方以降のパーティだ。ランチの方は良識があると思われる貴族と商人達のパーティで、夕方からは怪しい噂のある者達を集めたパーティだった。
ランチパーティは何事も無く無事に終わったが、夕方の方は恐ろしいくらい無法地帯と化していた。
女王が身重で近ごろ表に出ない事と宰相の交代で、油断した奴らが出てくるだろうと予想はしていたが、想像以上のあぶり出しの結果に私達だけではなく女王陛下も王配様も、宰相も前宰相まで驚愕していた。
それぐらいザック殿下の赤い髪のフェニックス効果は凄まじかったのだ。
「ザック殿下、意外と火山の国に嫁いで来ていたら種馬どころか神様扱いだったかもしれないですね〜」
「そんなこと言うのやめろよ…だけど君に会う前の俺だったら間違いなく有頂天だったかもな」
「それはそれで幸せだったんじゃない?」
「どうしてそんなこと言うの?俺がアホのままが良かったみたいに」
「ゴメンなさい。フェニックス信仰の凄さを目の当たりにして、おかしな感想をつい言っちゃった」
リリベルはザック殿下を横からギュッと抱き締める。
ザック殿下が側からいなくなったら、自分が一番ショックを受けるクセに…私、馬鹿だ。
「君らの飲物に混ぜられた薬物は、ほとんどが判断を鈍らせるような違法な麻薬や媚薬類だったよ」
「恐らく思考を鈍らせて、側妃やリリベル妃の貸出しを強引に頷かせて言質を取るつもりだったんだろう」
「じゃあ媚薬は…」
「飲ませたら互いを引き離して、どこかに誘い込むつもりだったんだろうな」
わー鳥肌立ちまくり…。
「王宮の牢屋が満室になったのでは?」
なんせ複数の一族丸々入れている。この国は一族諸共、処罰するものが多い。
「あぁまさかだな。王宮でやらかしたんだ。王族侮辱罪、違法薬物所持や混入とか色々罪状を付けて、捕らえた者の家は全家、家宅捜査するつもりだ」
家主空っぽの家宅捜査はとてもやり易そうだ。
「きっと何かが出る者達ばかりでしょうな。出なかった者達も罰金など課す予定です」
「へ〜財産没収とか罰金や保釈金などで、しばらく財源潤いますね!」
「いや、それが無くても我が国は資源大国だぞ?」
「そうだった!忘れてました」
「ねぇあなた方、今回もたくさん迷惑掛けたわ。慰謝料を請求してもらって構わないわ。何か欲しい物はない?」
女王陛下に言われてザック殿下がリリベルを見てくる。
殿下は何も思い付かないようだ。
私も特には無いけど、パーティ中に多夫多妻について考えた事を言ってみる。
西の大陸も一夫一妻ではないし、北の国も王族はそうだ。
それに周辺国も子供に恵まれなければ国王は側妃を娶る。
でも人口増加には、まずは女性が子供をたくさん産みたいと思うような環境が大事なのだ。それを検討して欲しいと言ってみる。
それに我が国の王太子殿下も、一夫一妻を約束しないと第二王女殿下をお嫁に出さないはずだとも伝えておく。
女王陛下は目を丸くして驚いていたけど、直ぐに笑って「王弟は14歳だから、このまま西の学院に留学させて色々、学ばせようと思っているの。その次は王子も」と仰った。
「女王陛下も配偶者は王配殿下お一人なので、貴族や平民の間でも、今後、一夫一妻が自然な流れになっていくと思いますよ。法整備はまだ難しいでしょうが、王弟殿下や王子殿下の頃には整うよう私も尽力しますよ」
宰相もそう申し出て下さった。
「アイザック王子、リリベル妃、女王がなぜ姉弟が二人なのか?とは思わなかったか?王族は多いのに」
「確かに!でも瞳の色は関係ないか?黄金の瞳は陛下と王弟殿下、王子殿下だけだ」
ザック殿下が仰った。
「そう。先代の国王には妻が一人だけだったんだ。その前の王には複数いたが、黄金の瞳を産む妃は不思議なことに最初に迎えた妃だけなんだ。だから先代は「だったら妃は一人で十分だ」と一人しか迎えなかった」
「わ〜すごい不思議」
「そうだろ?」
「だったら女王の場合…他の男性との子供は…」
「そうだ。私以外の相手とは黄金の瞳は産まれないだろうな。例え君と一緒になって赤い髪の子が産まれても瞳の色は違ったな」
「ねえ!もしかして結婚してなくても国王の最初の子は黄金の瞳になるって事?そして、もし第一妃より先に第二妃が身籠ったら?」
「よく気付いたな。国王は黄金の瞳の子供を二人以上、設けないと第二妃以降を娶れない。一応、そういう制約はあるよ。あと黄金の瞳の王族は婚前交渉は王族と言えど厳罰だ」
「もしかして女王陛下と王弟殿下の年の差を考えると、先王は第二妃を持ちたくても持てずにお亡くなりになったんじゃ?」
「君のそういうとこ!先王の美談で良いじゃないか!」
ザック殿下に叱られた。
「スミマセン…」
「ハハハ君は本当に勘が良い。だけど女王もまだ王子が一人だからアイザック王子を迎えても、婚姻はしばらく待たせただろうな」
「マギーさんも黄金の瞳だった」
「ああ父親が黄金の瞳の王子だったからな。第一夫人の娘の彼女は特別だったんだよ。前宰相達もそれを分かってた」
「やっぱり多夫多妻って複雑過ぎる」
「そうだな〜第一夫人の大変さもあるからな。一夫一妻はそういう煩わしさも無いのだろうな」
私達の王宮での最後の夜はそうやって更けて行った。




