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「リリ、相談がある」
リリベルが石になったココナッツと睨めっこをしていると、女王陛下との話が終わったのか、ザック殿下がリリベルの元に戻って来た。
「ザック殿下、早かったのね?でも帰国の手段なんて、そもそもスネイプニルに乗って帰るしかないでしょう?」
「そうそれなんだけど、やっぱり君がいないと話を進められそうにないから「一旦、戻って聞いて来ます」って言って戻ってきたんだ」
「ん?まさかスネイプニルを置いていくとかじゃないよね?」
「違うよ!そんな事できないよ。でもさリリは海を見た事あるかい?」
「海…ない!一度もないっ。だって私、学院に入るまで子爵領と王都と伯父の領地の本家しか行った事なかったもん」
「そうか。あのさリリ、女王陛下に西の国に戻る時、海路で戻らないか?って提案されたんだ。その…それでスネイプニル達は船はどうかな?っていうのが心配で」
「船!」
リリベルは湖でボートにしか乗った事がない。
だから船と言われても、大きさとか規模とか全く想像できない。
「ザック殿下は海を見た事あるの?船にも乗ったの?」
「海はあるよ、だけど船はない。王家の別荘が海の近くにあるんだ。小さいけど王領地なんだよ。そこは港も無いから大型の船も来ない」
「ザック殿下、陸路で火山の国から南の国を通って戻れば最速2週間くらいで戻れるかなって思ってたけど、海路ならどれぐらいで帰れるの?」
「火山の国の者は火属性が多いだろ?だから船の動力が西の風と違って火なんだよ」
「それって、どういう事なの?」
「ちなみに南の国は水が主な動力だ。水の力でスクリューを回して動かしている。西は帆船の風がメインで補助が水だ。国によって動力は違うんだけど、船の動力で一番効率的なのは火なんだよ。火山の国の船は蒸気船でスピードが速い。しかもスピードを変えず休みなく一日中進むから、もしかしたらスネイプニルと変わらないかもしれない」
「そうなの?」
「王配殿下が王子殿下と西の国に来た時も船で来たんだよ。その時は海路だけなら2週間もかからなかったかもしれないって仰るんだ」
「ええ〜っ!」
「もちろん嵐や台風とか天候も左右するんだけど、その時は、最寄りの港に寄港するから遅れるけど」
「ザック殿下、何でそんなに詳しいの?王子教育でそういう船についても学ぶの?」
「ああ、海賊被害が以前あっただろ?あの時、随分学んだんだよ。それに学院の選択授業にも造船や船による輸送や航海術もあるんだよ。まあそういうのは領地に港がないと、あまり興味を持たないのかもしれないけどな」
リリベルは全く想像のつかない話に目がパチクリなる。
「スネイプニルは分からない。船の規模も分からないから。サオリ達は退屈と体力さえ持て余さなければ大丈夫だと思うんだけど」
「そうだよな〜。見てるとかなり好奇心が強いもんな。体力も凄いしな」
「でもどうして女王陛下は船での帰国を提案してきたの?」
「貿易だよ。西の国との貿易を考えたいそうだ。東の国とはジャングルや火山があるから海路は難しくて陸路しか無理だけど、これまでも細々とあったらしい。でもうちの国とは無かっただろう?だからこれを機に貿易を始めたいって。そして行く行くは北まで航路を伸ばしたいそうだけど、まずは西からって考えたらしい」
「へ〜お互いに、すごい第一歩じゃない?!」
「そうだろ?西に領事を置いて外交官の派遣も検討したいって」
「それなら王太子殿下に伝令鳥を一度、飛ばしておく?」
「そうだな、火山の国の考えを少しでも伝えておくか。とりあえず夕飯の時に、君を交えてまた話をしたいって」
「分かった」
「なあ、それよりそれ何だ?大きな石みたいだけど」
「ああこれ何でもないの。ただの庭にあった石…」
なぜかつい誤魔化してしまった。
ココナッツを石化しましたって言うのが、何だか恥ずかしくて。
「ふ〜ん。変なの」




