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「火花や火柱の妖精とは?」
気を取り直して、気になる他の妖精についても聞いてみる。
「火柱の妖精は気性が激しく、火花の妖精らを従えフェニックスの傍にあったとされます」
「妖精達の容姿は金髪だったのか?」
「それは神話や言い伝えによって様々です。赤い髪であったり金髪であったり、茶色の髪の事もあります。火柱の妖精はただ苛烈なイメージだけですが、火の粉の妖精はフェニックスが愛した事から、男性からは初恋の女性に例えられたり、可憐で美しく儚い女性として語られる事が多いのです」
「男性と女性とでは火の粉の妖精の捉え方が違うのですか?」
「はい。男性にウケの良い女性とは嫉妬の対象にもなりやすいのです。だから女性からはチヤホヤされるだけの若い女性や、直ぐ捨てられる中身の無い女性としての比喩となる事もあります」
「西のあなた方を我が国の神話に当てはめるのは違うと分かってはいるのです。しかし、あなた方は神話のフェニックスと妖精のイメージにピッタリなのですよ。それに私の姉は…女王陛下は火の粉の妖精が相手だったから負けたという事になっています」
「え?それはザック殿下を王配として迎えられなかった理由ですか?」
「そうです。なぜなら姉はアイザック王子を国に迎えると、ずっと皆に豪語していたのです。それを南の国から戻って来て、いきなり手のひらを返すように王配一筋になると言い出したのですから、周囲はそれはそれは驚いたのです」
「我々は女王陛下が、フェニックスの妖精を想う一途さに心を動かされた。それ故、陛下も王配一筋に心を改められたのだと周囲に情報を流しました」
もの凄い脚色をなさったのですね…女王陛下。
「では石になった宰相の弟達は…」
「フェニックスの想いを踏みにじり、妖精に呪いを行った神罰だと」
わ〜そうなんだ。だけど、それはちょっと使えるネタかも。
歴史家からフェニックスと妖精の話を聞いた後は、昼食会に呼ばれている。主催者は新たに宰相に立った大貴族なので断れない。
リリベルは準備を手伝いに来てくれた女性達に「火の粉の妖精になろうと思います」と希望を言うと、女性達は大喜びで協力してくれた。
彼女達は妖精のイメージを良く知っている。
現地の女性に手伝ってもらえば完璧な妖精に仕上がるだろう。
少々、コスプレ感はあるが白に金糸が入った薄布を何枚も重ねてふんわりスカートに。髪にも真珠や小粒のルビーを散らして火の粉感を出した。
「わあ!リリ本当に妖精だ」
ザック殿下もそう言ってくれたので大丈夫だろう。
今日の昼食会でも、きっとザック殿下に娘を押し売りしてくるはずだ。だったら私も迎え撃つまでだ。
もちろんそちらの土俵の上でだ!
「おぉっリリベル妃…火の粉の妖精だな。私が助言しなくても糸口を見つけたようだな?」
「王配様、文句はたくさんありますがそれは後で。とりあえず行って来ます」
「了解。覚悟しとくよ。ちなみに宰相には未婚の娘が4人いるが、宰相の親族にはもっと…いや誰も君の敵ではないだろうな」
「当然だよ。私の妻が最強だ」
私とザック殿下、通訳のメリッサさんと馬車に乗り込み宰相の邸宅に向かう。
ちなみにサオリ達は火山の国の厩舎をお楽しみ中だ。
まるで南国にバカンスに訪れた富豪のように広い馬場の砂場や池で遊び、ココナッツジュースを飲みながら南国フルーツを楽しんでいる。
この場所はかつて王子殿下の遊び場だったそうだ。そこに囲いの柵と小屋を作ってスネイプニルの厩舎にしたそうだ。
なんて贅沢なんだ。
馬車は宮殿を出て王都の街を走って行く。
街中は所々屋根があって、石畳みの道が熱くならないようにしているらしい。南の国では打ち水をしていたが、降水量の少ない火山の国の王都では水はとても貴重だ。
この国での農業はほぼジャングルの近くに集中している。
鉱物や他の資源などは火山や砂漠地帯にあるのだそうだが、全ての物資がこの王都には集まってくるので街の市場や露店、店などはとても見応えがあると説明された。
馬車は王家の紋章入りなので渋滞知らずで、皆、道を空けてくれる。
時々、荷物を載せたラクダの横断などで停止するが、そういうのも見ていて楽しい。
そして、ある露店に人がたくさん並んでいるのに気が付いた。
「メリッサさん、あの店は何を売っているのですか?」
「人がすごく並んでいるな。人気店なんだな」
「あのお店はこの国の人気のスイーツを売っているお店ですわ。マラサダというお菓子を売っておりますの」
『マラサダ!』二人でハモってしまった。
どこか聞いた名前だぞ!?




