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翌日の夕暮れ時、私達の出発に、また王族の皆様とララ姉ちゃんが見送りに集まって下さった。
「火山の国の王族達にも宜しく伝えてくれ」
「リリ、まだ油断しないでね!殿下も気を付けるのよっ」
「そうそう。ハニートラップなんかあっても引っ掛かかんなよ」
皆が心配しているのはそれか?!
「リリちゃん、これモナカよ。荷物にならないように少なめだけど」
「第二王子妃様、ありがとうございます。スネイプニル達が喜びます」
「リリちゃん、以前は前方後円墳の形のセンベエがあの店の名物だったんだよ」
「そういえばセンベエもありました」
「モナカはサオリの好物だったんだって。それに龍康が旅の携帯食にしていたのもモナカだったんだよ。北でも凍りにくいから食べられるってね」
「本の中では寒い時、お湯に溶かして飲んでた!」
「そう。ゼンザイにもなる。でもきっと美味しくはないわ」
「自分達は多分やりません」
「皆様、一ヶ月もの間お世話になりました」
王女殿下にもギューッと抱き締められて、私達は馬上の人になった。
王都を外れると夜間で道も空いてくる。
南に向けスネイプニル達も加速し始めた。
空が白み始める頃少し休憩して、気温が上がる前にまた少し走る。そうして午前のうちに私達は南の砦に無事到着する事ができた。
南側の砦の関所でも偉い人が出迎えて下さり、スネイプニル達の厩舎と私達の部屋も用意して待っていて下さった。
リリベルが仮眠して起きると、ちょうど伝令鳥が西から戻ってきた。
『火山の国は暑いと聞く。二人とも体調には気を付けろよ』
「兄上からか」
「うん。やはりこの距離だと丸3日くらいかかるみたい」
「だから次は火山の国に入ってから送ろうかと思います」
「そうだな。今、何時かな?まだ外は明るいな」
「夕飯の時には呼びにきてくれるそうです」
「そうか。その前に馬達の様子でも見てくるか」
「そうですね。暑さでバテてないといいですけど」
二人で厩舎に向かうとサオリ達は大人しく厩舎の中にいた。
馬場は広いけど日陰も木陰もないので、日中の炎天下はさすがのスネイプニルも平気ではなさそうだった。
ザック殿下が水の桶を満タンに補充する。
「サオリもセノビックも暑いよね?そろそろ魔石の出番かな?」
リリベルは東の国で作ってもらった魔石の首輪を2頭にはめて魔法を作動する。
水属性の魔石で着用すると体の周りの気温を下げる効果がある。
温度調節も可能だが水魔法なので気温よりも低くしか設定できない。
「どう?涼しくなった?」
2頭は涼しくなって急に活力が戻ったのか馬場に出そうになったので慌てて止める。
「サオリ、セノビックも涼しくなったからって炎天下の影響が無くなるわけじゃないの。お日様が高いうちは馬場はダメよ。木陰もないでしょう?」
2頭は渋々、厩舎に戻る。
「日が沈み出してから馬場に出てね」
リリベルは2頭を宥めてからザック殿下と部屋に戻ると、砦の武士が夕飯に呼びに来てくれた。砦の食堂で関所の責任者や、砦を守る武士の隊長達とテーブルを一緒にして夕飯を頂いた。
火山の国の王都はここから1日で行ける距離なので、深夜に出たい旨、伝えると火山の国の検問所は朝に開けると昼に閉まり、また夕方前に開いて夜には閉まってしまうのだという。
年中、気温が高いので昼間に働いたり移動する事が少ないのだそうだ。
午前中に出発すると途中、炎天下の移動になる。
だったら夜間の検問所が閉まる前に入国したい。
「夕方以降は混み合うでしょうか?」
懸念材料はそこだ。
「真夏は物流自体が減るのであまり混まないですが、火山の国側の国境の街で馬からラクダに荷物を乗せ替えるので、ラクダのキャラバンが前にいたら時間がかかりますよ」
と答えが返ってきた。
「ラクダ!見た事ないです」
「ラクダは暑さや乾燥にも強いので火山の国での輸送はラクダが重宝されますが、とにかく移動スピードが遅いのです。また道を隊列を組んで歩くので追い抜くのも大変なんです」
「ただラクダを使うような移動は午前が多いので、夜は大丈夫だと思いますが」
と説明してくださった。
「火山の国の女王はいつも馬車で早朝に来ていた。きっと夜から朝にかけての涼しい時間帯に移動していたんだな」
「そうですね。私達もそれが理想ですが、夜に出たら深夜に着く可能性もありますね」
「火山の国側の検問所にもその旨伝えておきましょう。検問所には王配殿下の直属の配下もおりますので、ハヤブサを飛ばしてくれるでしょう」
「凄い!猛禽類を扱うんですね?!」
「ええ。火山の国は不死鳥フェニックスを信仰していますから、我々より鳥の扱いが遥かに上手いです。狩なども猛禽類を使うようです」
そういう情報はガイドブックには一切なかったな〜。
東の本はグルメと観光のガイドブックだったしな。
火山の国に着いたら色々、文化や国についても教えてもらおう。
リリベルは少し楽しみになった。




