61
皆様、頭空っぽの準備です。
第一会場での盆ダンスの競技は全て終了した。
きっと、皆は街に出て打ち上げや祝杯を挙げるのだろう。
定刻に終わったし予定も詰まっているはずだ。
だけど誰も会場を出る気配がない。何で?
そうか王族が席を立たないからか?
ちょっと!王族の皆さん?いきなり何出してんの?
“リリちゃん頑張れ”の横断幕要る?
それに“リリちゃん命”のウチワ。
なに作っちゃってんの?!
えっ何?裏に返すと…反対側は“ザック君命”なの?
その説明のジェスチャー、今、要らないから!
無心だ!無心。心よ早くどっか行け!
ザック殿下もステージの端に控えてスタンバイが完了すると、音楽が鳴り始める。
リリベルの恋する踊りからスタートだ。
〜花ビラ舞い散る入学式、ときめく学園生活が始まるの。
《出会いからザック殿下が登場だ》
“少し悪ぶったあなた”と出会って学園生活もワクワクに。
そっけない態度のあなただけど、それは私への照れ隠しだとちゃんと分かっているわ。
あなたのちょっとした優しさと、時々見せてくれる笑顔に‥‥‥
はいっ!好きになっちゃいました〜はっちゃけます!
《ザック殿下再び端へ退場、リリベルのソロ》
さあ、ここから猛アピール&お節介のウザ踊り。
私はここよ!私が必要でしょ!男は皆ママが好きでしょ!
そして次はライバル登場。
チョイ悪で少し影のあるあなたはモテるのよ。
他の女の影が見えるわ!
ダメよっ彼は私のモノなの、近付くハイエナ共を蹴散らすわ。
他を見ないで!チラ見もしないで!
だけど思い通りにいかなくて悔しいわっ!悔し浅まし踊り。
はいっ地団駄っ!
とうとう告白するわ。
《ザック殿下再び登場》
ドキドキバクバク眠れません。
でも、もうヤルしかありません踊り!
あなたが「好き〜好き〜好き〜っ」の三連発、とうとう告っちゃいましたぜぇ踊り!
ここから新しい踊りだ。
あらあらっ?!あんなに粋がって悪ぶっていたあなたが、まさかの純情青年に。
私の純粋な気持ちに絆されたのね。
照れてるの?可愛いわ。
新しく見せてくれるあなたも好きよ。
そして両思いになりました踊り。
「こんな俺を好きになってくれるなんて、きっとお前しかいないな。ずっと大事にするよ」
純情バージョン。
「キャッキャウフフ」の恋人踊りに突入する。
しかし恋人となっても油断は禁物、火山の国の女王(強敵)出現だ!
ザック殿下を奪われそうになり、戦うリリベルの踊り。
これ私だけのオリジナルバージョン。
「僕を守ってくれてありがとう。だけど、これからは僕が君を守ると誓うよ!」
純情ザック殿下もオリジナルバージョン。
今の二人は間違いなく頭空っぽ、心は果てまで遠征中だ。
でも踊りの途中で気が付いてしまった!
ザック殿下のフンドシの端に“リリベル”って書いてある!
そうか!私達の踊りは余興でプチ競技だから良いんだ!
わ〜心が帰還しちゃったよ。
微妙に恥ずかしいけど感動する。
この想いだけは、踊りの演技ではなく本物だ。
かなり嫌々参加したけど、ちょっとだけ踊って良かったと思ったよ。
だが二度は無いぞ!
そしてザック殿下を無事に奪い返して、恋人踊りもクライマックスに。
リリベルは恋するところから踊り続けているので、もうクタクタだ。
だがちゃんとザック殿下とフィニッシュを決めた。
踊り終わって、やっと気持ちに余裕ができる。
周囲を見渡すと…あれっ?皆、立ってるの?
なんと観客が総立ちで私達の踊りを観てた。
それってどう言う事?
「ちょっとお座りください?」って思った瞬間、割れるような歓声と拍手が鳴り響いた。
私達、南の国の皆さんに認めてもらえたの?
大歓声の中、私はザック殿下と一緒にお辞儀をして舞台を下りた。
その晩は王城でも盆ダンス初日終了の宴会になった。
「いや〜リリちゃんもアイザックも、よくここまで踊ったな〜」
「ホントホント!素晴らしかったよ」
「あの立ち上がって見る行為は何なのですか?」
「ああ!興奮すると立ち上がって応援したくならないか?それだよ」
「じゃあアレって応援してたって事ですか?いつの間に…」
「ハハハ気付いてなかったのか〜まあ踊りにかなり集中していたみたいだからな」
「アイザックのフンドシには気付いたか?」
「はい。自分は見る事ないかなと思っていたので驚きました」
「そうか気付いてくれて良かったよ。サプライズ成功だな」
「君らの踊りは大成功だったよ。盆ダンス大会を盛り上げてくれてありがとな」
腹立つことも多かったけど、南の国の皆さんが踊りを認めてくれて喜んでくれたなら、とりあえずそれで良いかと思う事にした。




