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「王太子殿下、リリにぶっ飛ばされたんですって?!アハハハハ〜!」
「可笑しいでしょ〜ララちゃん」
「君らに笑われても仕方のない失態だったな。しかし何で私だけ魔法攻撃だったんだ?!酷くないか!」
「女性に吹っ飛ばされるなんて貴重な経験でしたねぇ?兄上」
「お前もそう思うか?久しぶりに星を見たわ」
「ねぇその辺はドラゴンだからとかプライド的なものは問題ないの?」
「我々は純粋に強い者を賞賛する。ましてやリリちゃんの攻撃は我々の油断と不意を突く鋭いものだった。女性の力でいかに相手に最大のダメージを与えるか、瞬時によく発揮できた攻撃だった。だが二度と同じ攻撃は我々には通用しないがな」
それって王子妃が褒められても良い内容なのか?
疑問に思わないでもないが…とアイザックは考える。
「なあアイザックも星を見たのか?」
「ノーコメント!」
俺の黒歴史だからな。
「何で見るハメになったんだ?」
「もしかして西の男は皆、リリちゃんの洗礼を食らうのか?」
俺以外が食らったとしたら…ライオット卿は間違いないだろうが他にもいるのか?
「面白いな〜リリちゃん。西の女神もさぞかし楽しいだろう」
確かに女神様もそう仰っていたっけ。
でもなぜ義兄がそういうふうに思うのか?
「義兄上、それはどういう意味ですか?」
「なんだお前、気付いてないのか…まあ私も妹に聞いたんだけどな。リリちゃんが西の女神なんだろ?」
「はいっ?容姿は似ていますが違いますよ」
「そうか?まあイイけどさ。でも二度とリリちゃんを怒らせんなよ?おっかねーぞ」
そんな事、身に染みて分かっている。
本人も恐いけど、周囲も十分恐いしな。
だけど…リリが西の女神?
似てるだけじゃないって事か?!
聖女扱いもあんなに嫌がるのに「君はまさか女神なのか?」なんて聞けないな。そのことを聞けるとしたら聖女殿か?いや北の国王陛下か東の神様ぐらいか。
でも聞いたところで何が変わる?リリはリリだ。
俺にとってそれで十分じゃないか。
ドラゴン達を殴って発散できたのか、リリは吹っ切れたように無心で盆ダンスを踊っている。
火山の国の言葉は相変わらず愚痴ばかりが達者になっていくが…先生も面白がって余計な単語を教えている気がする。
「それスラングじゃないのか?」と思う言葉まで。
一応、王子妃なんだけどな〜使う場面はないだろ!
「ザック殿下、見て!とうとうナイフだ」
リリが嬉しそうにマックス殿下からもらった短剣の柄を光らせて見せてくる。
こっちも凄く成長している。
やはり、リリのパワーのベースは怒りなのだ。
学院にいた頃もよく感じたことだが、理不尽な思いをすると特に能力を爆発させていた気がする。
「俺は君が光の刃を撃てた事にも驚いているんだけど」
「ああ最近、光の剣の方にハマってたからね」
そういう事じゃないぞ!
俺の妻がドンドン強くなっているんだが…違う方向に。
俺も毎朝の鍛錬だけじゃいけないような気がしてきた。
俺が将来的に目指していたのは宰相で文官なんだが…。
まあ俺の治癒魔法も部分的“血行促進”から“虫刺され”に進んだけど、次の段階は知らずにぶつけた時にできる“青あざ”だそうだ。
俺達はそれからも変わらず、ダンスと語学に打ち込んだ。
いよいよ明日は盆ダンス大会が開催される。
途中、大型台風が来たりして第三会場の屋根が飛んだり、第二会場が水に浸かったりとハプニングもあった。
スネイプニル達は暴風雨の中、相変わらず喜んで泥んこになっていた。
それに時々、勝手に抜け出して、ニ頭でどこかに出掛けたりもしていたようだ。
王家の墓で白馬の目撃情報が城に入ったりしたのだ。
まさかタロウとジロウの石像に再びケンカを売りに行ったのでは?!
とリリは心配していたが、今のところ石像には何も起こってないらしい。それに白馬による被害とかケガ人の話も聞かないから、きっと人目を避けて行っているんだろうけど。
だがサオリは、自分の元の名前の主に何か感じるモノがあるのかもしれないな。
それか夫だった龍康の石像を見に行っているとか?
まさかな…。




