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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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「ザック殿下、この後の語学の授業の後に遠乗りに行きませんか?」

「ああそうだな。俺もそれ思ってたんだ。この前は大雨が降って馬達も気分転換できたみたいだけど、やはり出掛けてやらないと、そろそろ限界そうだなって」


「殿下、行ってみたい所があるんです」

「そうか。俺はどこでもいいよ」

「馬場からも見えるのですが、ここから少し走った所に王家のお墓があるんです」

「あ!それ知ってる。以前、義兄上があの山は墓なんだって教えて下さった事がある。確か南の国の勉強の時にも覚えたな…前方後円墳だったか?」


「そうです。そのお墓から少し離れて横にある高い山がご霊山で、その山は以前ラント様とも出掛けた事があるのですが、お墓の全貌が見える山なんです」

「そうか。お墓を見た後はそっちにも行ってみるといいな。でも王家のお墓に行ってみたいなんて何か理由でもあるのか?」


「墓所に入れる訳ではないんですけど、一度、祈りを捧げておきたくて」

「サオリと龍康か?」

「そう。二人もそこに眠っているそうなので」

 “龍憑き”が前任者の命を継いで産まれてくるという事は、ザック殿下にも話してある。サオリと龍康の娘が“龍憑き”だったという事も。

「そうか。龍康のお墓参りは彼の冒険記や書物のファンには欠かせないものらしいしな」


 昼食後、語学の授業を受ける。

 先生に授業後は王家のお墓まで遠乗りに行くのだと伝えると、早めに切り上げてくれて残りを宿題にして下さった。

 王家のお墓は、王都から往復の時間を入れても5時間くらいで観光できるらしいのだが、スネイプニルなら余裕で夕飯までには帰れるだろう。


「サオリ、あの山見える?あれはドラゴン様のお墓なんだよ。あなたの名前の由来になったサオリという女性もあそこに眠っているの。一緒に行ってもらってもいい?」

 サオリは山の方を見つめている。

 そして隣の山にも視線を移す。


「あっちの山は前に行ったよね?ラント様とタナカと一緒に行ったでしょう?」

 サオリはリリベルに視線を移すと「行っても良いよ」と言わんばかりに頭を擦り付けてきた。

「ありがとう。一緒にサオリに挨拶しようね」


 私達が出発しようとすると「アイザック、リリちゃん」第二王子殿下が急いで声を掛けてきた。

「どうされたんですか?」

「間に合って良かったよ。君達が王家の墓まで遠乗りに出掛けるって聞いてね」


「はい。夕飯までには戻って来ますよ」

「ああ、いやそうじゃなくて、さっき墓の方にハトを飛ばしたんだ。だから多分スネイプニルよりも早く伝令が行くと思うけど、君達が着く頃、他の観光客を少しの間、立ち入り禁止にするよ」

「え!そんな事してもらうなんて」

「そうです。私たち急に、しかも勝手に行こうと決めましたし」


「良いんだよ。君達は王族なんだから、本来はこっちが案内すべきだろう?そういう時は観光の制限もするんだ。だけどスネイプニルだと付き添いも警護もできないから、これぐらいはさせてもらうよ」

「ありがとうございます」

「確かに助かります。スネイプニル達もいますから一瞬でも人払いされていると安心して観光できます」


「別に観光と言っても何がある訳でもないぞ。でも龍康の墓もあるから説明の立て看板と石像などがあるくらいだ」

「分かりました。では行って来ます」

 道中はサオリがまた直進するんじゃないかと少しドキドキしたが、そんな事はなく、ちゃんと道を走ってくれた。それに道も空いていてスムーズにお墓まで着く事ができた。


 第二王子殿下のご配慮のお陰でお墓の入り口付近や立て看板、龍康の石像の辺りも無人でとても有り難かった。

 せっかく遠くから観光に来た人もいただろうから、私達も速やかに看板や石像を見て、最後にお墓の入口で祈りを捧げて戻って来た。


 ほんの1時間くらいの滞在だったから慌しかったけど、龍康の石像の左右にはタロウとジロウの石像もあって、ちょっと笑みが込み上げた。

 だがサオリが2頭の石像に、なぜか突撃しそうになって慌てて止めた。

 壊したら大変だ!


「サオリッただの石像だよ?!」

 何とか諌めて、お墓の向かいの売店のお菓子でごまかす。

 前方後円墳の形をしたモナカという茶色くて薄い皮にアンコの入ったお菓子なのだが、2頭ともアンコは大丈夫?


「え?お代わりなの?」

 アンコの甘味は黒糖とハチミツですよとは言われたけど…


 そして、他にも美人だったと噂に名高いサオリの墨絵を買って帰った。戻って来て寝る前にサオリの墨絵を部屋で広げると「ふ〜ん。美人かどうかはこの絵では分からないが墨で描かれているのは雰囲気があっていいな」とザック殿下が仰った。


「そうでしょ。なんかこのサオリの筆で描かれた曲線と、シットリした感じが良くて、私達の姿絵より何倍もいい」

「姿絵な…」

 ザック殿下もウンザリしたように呟いた。

 あと絵姿があるとしたら火山の国だ。


 確か南の国経由で引き出物を渡して下さっていると聞いた。

 火山の国の女王陛下はまさか主要な場所に飾ってないよね〜。

 リリベルは淡い期待で眠りに就いた。

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