55
また頭を空っぽにして頂く時間です。
「リリちゃんがザック君と踊りを合わせるんですって」
「大会で披露する踊り?」
「それもだけど何でも一連の恋愛の踊りを全てマスターしたらしいの」
「へえ〜。まだ踊りを始めて10日だろ?それなのにか?」
「でも先生が言うには振り付けをマスターしただけだから、本番に向けてはこれからだって」
「そうだろうな。だったらアイザックと合わせるのも、そう早い訳でもないな」
「でも楽しみね」
「遠慮なく意見してやろうな」
「そうだな。我々の伝統芸能だしな」
「私のリリちゃんは大丈夫!いつも完璧だよ」
「王女は本当にリリちゃんが好きねぇ」
「お前、息子よりその人形を抱っこしてる方が多いよな?」
「抱き心地良い〜」
「あ、ザック君が来たわよ。始まるわよ!」
「皆、静かにな!緊張させると悪いからな」
しっかり全部聞こえてるし…また王族全員集合してるし…
それ以外のギャラリーも…一体何なのか?!
「リリちゃん!雑念を払うのよっ。大丈夫、あなたまだ女踊りを習って10日よ。ザック君もなんだから。王族の皆様も踊りは上級だから胸を借りて見てもらうのよ!」
おぉ前向きの激励ありがとです。
でも私も心がお出掛けする事も多いから大丈夫。
「リリ、待たせたな」
ザック殿下もいらしたし、さあ心よさらば〜!
音楽が流れ始める。
最初は恋をするところからだから、しばらくは私の一人踊りだ。
先生の言われた通りに踊るだけだが、先生発案の乙女シチュはシャーロットもきっと大絶賛だろう学園物に近い。
美しい花ビラが舞い散る春の学園。
入学式、あなたに出会って胸がときめいて〜何度か接して言葉を交わして、フトした仕草にあなたを好きだと自覚する。
今、はっちゃけてるところだ。
私はここよ!私に気付いて〜あなたの為に何でもするわ。
着替えのパンツはここよっママが居ないと何も出来ないでしょ?
ほら“お節介ウザくね?踊り”発射だ〜っ!
とっても素敵なあなたですもの。
やっぱりライバルはいるわよね。
女の影がチラつくわ〜疑ってぇ嫉妬してぇ、そんな女がいいの?
私の方が良い女なのにぃ〜はいっ地団駄ぁっ!
「マジか…凄いなリリちゃん」
「入り込んでるな」
「シッ静かに!」
音楽とリリベルが踊る衣擦れの音以外、その場はシーンと静まり返り皆が踊りに注目している。
ここから告白の踊りで男性登場だ。
音楽と共にザック殿下が踊りながら加わる。
ドキドキバクバク寝不足です!でもあなたに想いを伝えたい。
あなたの気持ちを知るのは怖いけど、ここまで来たらヤルしかありません!
「好きだぁ好きだぁ好きだぁ」の三連発。
“ついに告っちゃいましたぜぇ”の踊り。
ザック殿下がそれに応える。
男性側の応え方にもいくつかパターンがあると聞いた。
ジゴロ風、純情風、ツンデレ風、分かっているのは両思いになる事だけ。
さあ何で返してくる?!
「仕方ねぇなぁ、そんなにオイラが好きなのかい?」
ジゴロ風だー!
「オイラは女にモテるけど、そんなに好きなら付き合おう。だけど束縛はダメだぜぃ。オイラは自由な渡り鳥」
「あぁ気持ちが伝わったのね!あなたの恋人になれるならそれだけで嬉しいの」
「そうかいそうかい可愛いヤツだぜぃ」
と二人でしばらく盛り上がって“キャッキャウフフ”をやってから三味線のジャカジャン!でフィニッシュだ。
終わった途端に皆から大声援と拍手が送られる。
二種類の踊りを踊り続けたリリベルは肩で息をしている。
「とても素晴らしかったよ。だけど恋人の踊りは踊らないのかい?」
国王陛下が先生方にお尋ねになる。
「今日はここまでですわ。いかがです?なかなかでございましょう?」
「ああ10日で仕上げたとは思えない踊りだった。恋人踊りも見たいな」
王太子殿下も絶賛くださる。
「この後の踊りは本番までお楽しみに!という事で」
「えぇっ!この後の踊りは見れないの?」
「本番用の踊りは、まだこれから仕上げて参りますので」
「そうか、それは仕方がない。でも楽しみだな」
「リリちゃん、殿下、お疲れ様でした。私どもはこれから王太子殿下方とお話がありますので、今日はこれで終了です」
「ありがとうございました」
と二人で礼をすると先生方も挨拶を返され、その後「ご相談がありますの〜」と言いながら王太子殿下と第二王子殿下と一緒に去って行かれた。
なんかちょっと嫌な予感がするよねぇと思って見送っていると「リリちゃんお疲れ様!凄い感動したよ」と王女殿下が駆け寄って来てくれた。
「本当にあんなに悩んでいたのに。私も心配して損した気分よ」
「王女殿下ありがとうございます。第二王子妃様もご心配お掛けしました」
「リリ、本当に踊り良かったわ。それに殿下もジゴロ風、可愛かったわ」
「え?可愛い?」
「ええ。若い子が粋がっている感じが可愛かったわよ」
「まだジゴロは貫禄が足りないか〜」
「そんな事はないわよ。これはこれでねぇ」
「そうねぇ。ザック君ならツンデレでもキュンてなりそうだし、純情風ならきっと皆、萌え死にするわ」
「萌え死に…」
やはりザック殿下はマダムキラーだった。




