50
「王女殿下、体調はいかがですか?」
「あっリリちゃん!今、プテラのオムツ替えてたんだ。昨日はお風呂も入れたんだよ」
プテラ…プテラノドンの愛称なの?
「もう、すっかり体調も良さそうですね?」
「そうそうプテラノドンもよく寝るから退屈でさ。先におっぱいが痛くなっちゃって「飲んで〜!」って起こしたくなるの」
あのおっぱいマッサージ、そんなに効果すごいんだ!
「王女殿下はプテラちゃんのお風呂もオムツ替えもお上手ですわ」
横には第二王子妃様もいらっしゃった。
これはナイスタイミングだ!
リリベルはお二人に盆ダンスの女踊りの意味をそれとなく話してみる。
「ああ!そんなこと?そんな事を随分難しく考えてるのね?リリちゃん」
「そうですわね。でも私はわりと踊りに共感できるの。第二王子殿下はとてもモテモテでしたから。彼と婚約した後もずっとヤキモキする事が多くて」
「そう第二妃ちゃんは、上のお兄様のせいで結婚をズルズル待たせられちゃったからね」
そうだった…王太子殿下の高い理想のせいで結婚出来なかった人達だった…。
「ザック君も素敵な男性でしょう?だからきっとリリちゃんも良くも悪くも、これから踊りの意味を理解していくわ」
そうか、やはり私は恋愛の経験不足だったのね。
だけど、これから私もザック殿下に対して好きだけど嫌い!とか、よそ見するなよ!他の女性を見ないでなんて思うのだろうか?
「男性側の踊りの意味はどうなんでしょうか?やはり女性同様、嫉妬とか独占欲とかの表現があるのですか?」
「まあ!リリちゃんたらっ」
第二王子妃様がコロコロと笑う。
「リリちゃん、踊りを二人で合わせた時に分かると思うけど、盆ダンスは男女の掛け合いだって言ってたでしょう?どっちが主導でも良いように上手く出来てるんだよ。まずは意味がどうかという事より開き直って踊る事だね」
やっぱりそうか。
共感できなくても恋愛なんて、そんもんかと踊るんだ。
それにその内、私も体験するんだろうな。
ザック殿下はモテるはずだから。
翌日は雨も上がり盆ダンスのレッスンも再開される。
大体の振り付けはすでに頭に入っている。
繰り返す動作も多いから振りを覚えれば、あとは手先の動きや足捌き、繊細な感情表現に合わせた目線と表情だ。
「まあ!もう振り付けの動きは完璧ですわね。この後の踊りは相手と合わせてからの方がやりやすいでしょうけど、細かい手先の動きと後ろに退がる動作を、もう少し優雅に見えるように練習していきましょう」
先生にそう言ってもらって、殿下と踊りを合わせる前に感情表現以外の動作を完璧にしていく。
確かに指先とかバックする動作は、西のダンスには無い行為だから苦手かも。
それにダンスは案外大股で動くし、スピードを活かすステップも多いけど盆ダンスはユカタだから、大股もスピードやキレとか一切必要ない。
そうキビキビ動作の中にも指先で優雅さを醸し出す。
時々、それは怒りの踊りだったりするけれど…そう地団駄を踏む踊りもあるそうだ。
それは片思いのダンスに主にあるそうで、その踊りはライバル出現の時でもいいし、自分の天邪鬼さに腹を立ててという時でも良いそうだ。
「どういう時に悔しさを感じるかは人によって違うでしょう?」
と先生は仰った。
「先生!人によって怒りも嫉妬も、感情が昂ぶる場面も違うなら振り付けだって」
と言うと、先生はニッコリ笑った。
「よく気付いたわね?始めてまだ数日なのに。盆ダンスのプロなら即興で踊れるのよ。どんな音楽でもね。夫婦なら掛け合いも即興でできる」
凄い!だから他人も目が離せなくなる踊りなんだ。
踊りで会話するってこういう事ね。
盆ダンスって奥が深過ぎて面白い。
それに自分が感じた事のない感情も仮体験できるのだと考えれば貴重な踊りだとも思える。
夫婦の痴話喧嘩だって、朝帰りの夫ムカつく、ブッ飛ばす!ってなる。
それに盆ダンスって失恋以外の暗い踊りが一切ない。
例え病人がいたり暴力夫や嫁姑問題、借金などの悩みがあっても苦しみを踊りで忘れて、乗り越える為の踊りだから。




