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リサさんの手料理は根菜や野菜を主に使った優しい味のお料理で、中でも大豆で作られた豆腐という食材の料理が美味しかった。
「豆腐はよく王城の味噌汁にも入っていたぞ」
とザック殿下に言われたが、リリベルは味噌汁の具ごと味噌汁という料理なんだと、ずっと思い込んでいた。
具が変わっても味噌汁と言うんだ!?ミソ味のスープって事か。
だったら子爵家でスープの味付けにミソを入れた物も味噌汁だったんだ!と、リリベルは驚愕で目から鱗が落ちる思いだった。
王城に戻って来てからサオリ達の世話を済ませて、ザック殿下と次の予定について話し合う。
今回は酒蔵も見学に行ける時間がある。南の国のあちこちに酒蔵はあるので、どこに行こうかと相談していると、第二王子殿下がやって来て仰った。
「なあ二人とも盆ダンスの男踊りと女踊りをそれぞれ習わないか?」
「盆ダンスですか?しかも男踊りと女踊りを?」
「ああ。例年、盆ダンス大会には王族も誰かが出場していたんだが、今年は王女が無理だろう?王太子妃も練習が途中になってしまったし、我々ももう随分踊ってない。だから今年は君達が出ないかなぁ?と思って」
「私達がですか?」
「ザエモン様、盆ダンス大会って1ヶ月後じゃないですか?私達、そこまで長居するつもり無かったのですけど」
「そうだな。それにたった1ヶ月の練習で踊れるようなものじゃないのでは?」
「君達ならできるんじゃないかと、皆の総意なんだ」
「王族なら第一会場でしょう?そんな場所で、しかもあんな凄い人達と一緒なんて…」
かなりの無茶振りだ。
「君らのダンスもなかなかだったよ。あのレベルを踊れるのは西の国でも少ないだろうって王太子妃殿が言っていたよ」
「ダンスは小さい頃から習いますし」
「盆ダンスはあれ程難しくはないよ。君らなら1ヶ月で余裕さ。あとこの後、君らは火山の国にも行く予定なんだろ?だったら火山の国の言葉を学んだ方がいいだろう?教師を紹介するよ。その条件でどうだい?」
「火山の国の言葉…」
「それ重要だったけど、今回、学ぶ時間がなかったな」
「そもそも話せる人って、我が国にいない気がしますよね?」
「南の国には沢山いるよ。簡単な会話だけでもできるといいだろ?火山の国では南の国の言葉も多少は通じるけどね。隣国だから」
言語問題は重要だ。
それに私達はスネイプニルのお陰でかなり時間を短縮して動けているので、ここに1ヶ月滞在しても休暇はまだまだ余裕がある。だったらその要望を受けてもいいか…とザック殿下を見ると、殿下も頷かれたので私達は南の国での滞在を延長し、盆ダンスと火山の国の言葉を学ぶ事になった。
その日、リリベルは西の王太子殿下に「滞在を延ばして盆ダンス大会に出ることになりました。火山の国の言葉も習います」と伝令鳥を送っておいた。
盆ダンスの先生は何度も第一会場で踊った経験のあるご夫婦だった。
今は王都で教室を開いてらっしゃって、王太子妃殿下も妊娠前まで習ってらっしゃったそうだ。
そして火山の国の言葉の先生は、こちらで結婚してルビーや金を扱う宝飾店を南で経営しているオーナーだった。
これから1ヶ月間、午前中に盆ダンスを練習し午後に火山の国の言葉を習うという1日のスケジュールとなった。
「また学院生に戻ったみたいだな」
「本当。でもやっておかないと火山の国で大変な思いをするところだったかもしれませんね」
「確かに。道すら聞けなかったよな」
盆ダンスは最初は男女別れてそれぞれの振り付けを学ぶ。私達は既婚者なので両思いのダンスを教わる。
振り付けを習いながら、その振りや仕草の意味を教わる。
なるほど意味を教わりながらだと振り付けも頭に入りやすいし、先生の教え方も上手だった。
だけど習っていくとだんだん気づく。
盆ダンスって意味が微妙。
そして、この両思いのダンスは意味が分かると恥ずかしい。
う〜ん。踊らないとダメだよね…?
そう言えば一昨年に見た女踊りも踊りは素晴らしかったのに踊りの意味は微妙だった。
生活に密着した踊りだからと言われて「そうか」と思ったが、いざ自分が踊るとなると「そうか」とはなかなかなれない。
とりあえずは一通り教わって覚えてみたが、盆ダンスは西のダンスと違って感情を込めないといけないのだ。
リリベルは妊娠前まで盆ダンスを教わっていた王太子妃様に、どんな気持ちで習ってらっしゃったのか聞いてみる事にした。




