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医師が胎盤やへその緒の処置をして、赤ちゃんが直ぐに王女殿下に渡される。
「うわぁ不思議な生き物っ」
「あなたの息子ですよ!」
「そっか〜。あ〜疲れた」
赤ちゃんがお風呂に連れて行かれると、手を洗いに行ったザウルス様が戻って来られた。
「ザウルス、まだ泣いてる」
「だって、だって…」
「お名前は決まっているの?」
ララ姉ちゃんが聞く。
「まだこれからだ」
「そっか」
王女殿下の無事出産が告げられ、王族の皆様が続々と中に入ってきた。
「息子だってな〜!めでたいな」
「おめでとう、ザウルス!父親だな」
皆、口々にお祝いを言っている。
そんな中「リリ!大丈夫か?」とザック殿下がボーッと立っているリリベルを見つけてに駆け寄ってくる。
「あっリリベル妃、忘れてた!」
「直ぐに部屋に案内してやってくれ!」
それからどうやって部屋に移動したのか覚えていないけど、リリベルは到着したその日の午後、やっと寝る事ができた。
3時間ほど寝て起きると、伝令鳥が戻って来ていて「君達の道中の無事を祈る。南に着いたら皆様に宜しく伝えてくれ」と王太子殿下の伝言を伝えてきた。
それを聞いた後、リリベルは「南の国に到着しました。王女殿下がご長男をご出産されました」とまた伝令鳥を返して、直ぐに温泉に入らせてもらう。
やっぱりここの温泉は疲れが取れる。
今、リリベルが泊まっている部屋は王族の棟なのでお風呂も今までの来客用とは違うが、引いている温泉は同じだそうだ。王族用と言っても特に何かが凄いわけでもなく来客用と違いはない。ただこれまで同様、風呂場は男女別で分かれているくらいだ。
お風呂から上がると浴衣が用意されていて、そのまま夕飯を頂く座敷に通された。座敷にはすでに王族の皆様がお揃いで先にお酒を飲んでらっしゃるようだった。
「やあリリベル妃、悪いな先に飲んでいた。ザウルスが父親になっためでたい日だからな〜」
「いいえ。皆様の夕飯をお待たせして申し訳ありません。ザウルス様も息子さんの誕生おめでとうございます」
「ビーバーちゃん、本当にありがとう。まさか息子を自分で取り上げる事が出来るなんて思わなかった!」
「ほらっ私が言った通りでしょ!リリがいればお産が軽くなるって」
「君は本当に凄いな!やはり聖女なんだな」
「‥‥‥」
リリベルが沈黙していると、ザック殿下が「我が国では、まだ貴族や一部の平民だけにはなりますが妻が立ち合ったような、お産が主流になりつつあります」
「おお!それは凄いな。だが毎回、聖女が立ち合うのは難しいだろう?」
「神官が聖女の代わりに立ち合います」
「なるほどな〜さすが女神の寵愛深い国だ。我が国でも出産の苦しみを少しでも和らげる手段があると良いが」
「そうだ!ララベル夫人は出来ないのか?」
「えっ?私ですか?そんなの無理でしょー!」
「そうか?だって妹二人が聖女じゃないか。君もきっと素質があるぞ!」
「ええぇ!ちょっと待ってぇ」
姉達が騒いでいる間にリリベルに食事が運ばれて来る。
「今日はおめでたいのでお赤飯を用意しました」
と給仕の方が内容を説明してくれる。今日のメニューは赤飯と懐石料理だった。初夏の旬が色取り取りで、見た目にもとても美しいお膳だった。
そしてよく冷えた米酒にもとても合う。
一仕事して温泉に浸かって美味しいご飯とお酒。
「至福の時だ」と思っていると姉が「リリ助けてっ!」と助けを求めてきたので「ララ姉ちゃんも治癒魔法を覚えてみますか?」と聞いてみる。
「あんた!そんな簡単に」
「ザック殿下も今、練習中なんですよ」と言うと「えっ?本当?」とザック殿下を見る。
「自分の属性とは違うので難しいのですが、練習を重ねればできない事はない気がします」
「じゃあ私も出来るか?!」
王太子殿下が話に割り込んできた。
「王太子殿下は…ちょっと違うかと…ドラゴンですし。治癒や回復魔法は女神様への信仰心が重要なんです」
「おぉ…そうか。ドラゴンは丈夫だから、あまり治癒や回復魔法は必要ないしな」
「そうなんですか?!」
「ああ王族は普通の人間よりは丈夫だな。特に龍が名前に付く者は顕著だ」
「なるほど」
確かに昨年の襲撃の時に受けた傷、あの出血量で生き残って、しかも治癒したとは言え3日くらいでピンピンしていた理由が分かる。
「だが男性に限ってだな。女性は違う。丈夫な身体は受け継がない」
と残念そうに王太子殿下は仰るが、それはきっと男女差別とかではなくて“龍憑き”の女性を守る為の“龍”の特権なんだろうとリリベルはそう思った。




