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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 東と南の国境はジャングルを切り拓いて作られている。

 西側から入る関所と違い、東の国から入る南の国は、関所を通過してもしばらくは亜熱帯に近い森の中を進んで行く。


 国交が西よりも遅れて再開した為、どちらの関所も開けているのは日没までだ。しかし道はきちんと整えられているから有難い。

 そして夜間営業をしていないお陰で、ほぼ無人の道を全力疾走できるのも有難い。


 私達は夜明けには王都付近まで辿り着き、朝の早い農夫が田んぼや畑で仕事をする中、道を駆け抜け無事に王都まで到着した。

 しばらく街中を走ると王城の天守閣が見えてくる。


「もう何度も来てるから、何だか懐かしいな」

 ザック殿下がそう仰ったが、私もそう思って頷いた。


 王城の正門まで来ると私達に気付いた誰かが走ってくる。

 ん?誰だ?

「リリベル〜!リリッ!大変っ急いで!」

「あれはララベル夫人じゃないか?」

「ララ姉ちゃん?!どうしたの?」

「リリベルッとにかく急いで来てちょうだい!」

 リリベルは姉に言われるまま急いで馬を降りる。

 サオリをザック殿下にお願いしてから、ララ姉ちゃんの後に続いて走るが、姉ちゃんは王族の住まいにどんどん入って行ってしまう。


「第三王子!来て早々済まないな。厩舎はこっちだよ。以前と同じ場所を用意しておいたから」

「第二王子殿下、お世話になります。王族専用の厩舎ですか?また申し訳ないですね」

「いいんだよ。我々もまた美しい神獣の姿を堪能させてもらうからね」

「そう言って頂けると有難いのですが、何かあったのですか?妻が直ぐに必要になるなんて」


「ああ、妹だよ。昨晩、遅くに陣痛が始まったんだ。だけど今日、ビーバーちゃんが来るからって言っててね」

「え?産まずに待っていた?」

「そんな器用な事、女性はできるのかい?分からないけど妹は陣痛でギャーギャー言いながら、ビーバーちゃん!って叫んでたよ」

「‥‥‥」

 アイザックは心の中で妻を激励しておいた。


「ビーバーちゃん!よく来てくれたっ!」

「ザウルス様、今はどんな感じですか?」

「ああ医師が言うには、まだかかるみたいなんだ」

「陣痛の間隔は?」

「リリ、まだ5分おきくらいよ。破水もしてないわ」

「じゃあ、あと数時間はかかるかな。でも診てみます」

「助かるよ。とりあえず君が来てくれただけで喜ぶはずだ」


 部屋の外には王太子殿下や王太子妃様、王族の皆様がお揃いで心配そうにされていた。

「ああリリベル妃、今は第二王子妃が付き添ってる。妹を宜しく頼むよ」

 王太子殿下にそう言われてリリベルが姉と共に中に入ると、ちょうど陣痛が遠のいたところだったのだろう、第二王子妃様が王女殿下の汗を拭って水分を摂らせているところだった。


「王女殿下」

「び〜ば〜ちゃ〜ん」

 弱々しい声で呼ばれて近くに行って声を掛ける。

「直ぐに手を洗って来ますから」

「待ってるね〜」

 王女殿下はヘロヘロ状態だった。


 姉の話では昨晩から陣痛に苦しんでらっしゃるそうだから結構、体力を消耗しているのだろう。初産には有りがちだ。

 リリベルはマントと上着を脱いで、手をしっかり洗ってから全身に浄化魔法をかける。

 そして王女殿下の側に行くと、また陣痛がきているようで苦しんでらっしゃった。


「王女殿下、今から陣痛の痛みは取りますから」

 リリベルが痛みを和らげる治癒魔法をかけていく。

 あまりかけると出産時のいきみのタイミングが分からなくなるので調節が大事だ。

 だが少し痛みを取るだけで随分楽に感じるだろう。


「わあっ凄く楽になった!」

「殿下!今のうちにご飯よ!」

 経験者の姉が梅粥を王女殿下の口に運ぶ。

「梅干し美味しい〜」

「まあ凄いのね?ララちゃんが言った通りだわ」

「ザウルス様は?ザウルス様は赤ちゃんを取り上げるかな?」

「ザウルス、ビビるんじゃない?」

「聞いてみましょう」


 王女殿下の食事が終わる頃、ザウルス様が恐る恐る部屋に入ってきた。

「ザウルス様はとりあえず、そちらで王女殿下の手を握っていて下さい」

「分かった」彼は神妙に頷いた。

 王女殿下の陣痛の間隔はまだ5分だが、痛みを和らげると身体がリラックスして出産が進むはずだ。


「医師の先生、次の陣痛で子宮口の開き具合を確認して下さい。恐らくその後、陣痛間隔が短くなるはず」

 王女殿下の次の陣痛で子宮口はかなり開いた。

 9センチ開けば直ぐだ。


「王女殿下、あと1時間以内ですよ。頑張りましょう」

「うん。ビーバーちゃん」

 王女殿下の顔色も随分良くなった。

 それから陣痛の間隔がどんどん短くなって来た。間もなくだ。


 しばらくして「頭が見えて来ましたよ。王女殿下!」医師がそう言った。

「王女殿下もう一度いきみに合わせて力を入れて!」

「頭が出て来ました」

「よし!今度はいきみを逃します。大きくゆっくり口で呼吸して鼻から小さく吐いて、意識を下半身に!息を吐きながら赤ちゃんがゆっくり出て来るのを想像して」

 リリベルが横から手を握って誘導する。


「いいですよ。殿下!その調子です」

「ザウルス様、赤ちゃんを取り上げますか?」

 リリベルは反対側で手を握るザウルス様に尋ねる。

「急いで判断しないと」


 ザウルス様は意を決して医師と場所を代わる。

「半分出てきたぞ!」

「ザウルス様、取り上げる準備を!王女殿下、短息呼吸に切り替えます。ハッハッと短く口呼吸!もう自然に出てきますから」

「出てきた!」


「直ぐに口の異物除去!泣かせてっ」

 赤ちゃんは無事泣いた。

 そしてザウルス様も「男の子だ〜」と言いながら泣いていた。

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