39
夕飯には農園の職員に言われた通り、バナナのフリッターが出てきた。しかも青パパイヤのサラダにココナッツチキンシチュー、ピザにはサラミやブルーチーズと共にパイナップルも載っていた。
どれもデザートではなく普通の食事として出てきたのだ。
想像以上の料理にリリベルは興奮しっぱなしだったが、マックス殿下も北では見た事のないフルーツや料理に、これまでの無口な男はどこへ行ったのやら、パイナップルワインのアルコールも手伝ってとても饒舌になっていた。
やはり気温も上がると人って開放的になるのかしら?
この農園の場所は西の砦と緯度は変わらないはずだが、ジャングルからの湿度のせいで冬でも気温が15℃を下回らないそうだ。
夏場も30℃を越える事は無いそうだが、湿度のせいで体感は暑く感じるのだと説明を受けた。
翌朝、湿度を含んだジャングルの澄んだ空気の中、サオリ達の世話の為に3人で厩舎に向かうと、馬場でマラサダがヘビと戦っていた。
「わー!マラサダッそのヘビ、毒があるんじゃないの?気を付けて!」
そんなに大きくはないが鮮やかな黄色と黄緑のシマシマのヘビだ。ジャングルではキレイな色の爬虫類ほど毒があるのだと聞いている。
ヘビは「シャーシャー」言いながら、マラサダに飛びかかるタイミングを伺っている。
マラサダもスキを見せず双方睨み合っている状態だ。
「マックス殿下、助けなくていいのか?」
ザック殿下がホウキを構えるが「手出すはスネイプニルに対する侮辱だ」と言いながらマックス殿下もホウキを握り締めている。
王子二人が真剣にホウキを握り締める様も見ものだが、時間がもったいないので、リリベルはさっさと厩舎に向かって中の掃除を始める。
古いワラを履き出していると、カラフルなヘビやトカゲの死体がワラワラと出てきた。
「わぁ…」
これは普通の令嬢が見たら気絶ものだろう。
だがリリベルは幸い自領の森や川で、この手の爬虫類には慣れている。多少、色違いなだけだ。
だけど「サオリ、こんなのが夜通し出たらくつろげなかったよね?」とサオリの頭を撫でる。
「それは違うぞ!それはそいづらの戦利品だ」
とマラサダの戦闘を見終わったマックス殿下が新しいワラを入れながら仰った。
「戦利品?!」
「んだ。スネイプニル達はやっつけた獲物を集めて戦果を見せでくるんだ」
「確かに。厩舎にこんなに毒ヘビが出るなら観光が成り立たないもんな」
ザック殿下が汲んできた水を桶に入れながら仰る。
「あいづら朝っぱらから少し運動したんだべ」
と、さも当たり前のようにマックス殿下は仰って、ヘビをやっつけてご機嫌で戻ってきたマラサダのブラッシングを始める。
「おまいらの暇つぶしがあってえがったな」
なんて言いながら。
これは…スネイプニルに関する新たな発見か?!とか言っていいのだろうか…。
「強い強いよ。確かにサオリは強いよね。分かったから、もう死骸を集めなくていいよ」
と言いながらリリベルもサオリをブラッシングする。
「ホント毎日、これを見せられたら逆にヘビ達に同情してしまうな」
ザック殿下もセノビックのブラッシングをしながら仰った。
農園の朝食もフルーツ三昧だった。
しかし今朝は変わった料理はなく、シンプルにカットされたフルーツ盛り合わせだったが、どれも新鮮で熟れた果物はとても美味しかった。
「ご希望でフルーツパンケーキやワッフル、フレンチトーストもできます」
と給仕に言われ、リリベルは悩み苦しんで明日の朝食はパンケーキをお願いする事にした。
その後、リリベルは農園を見学させてもらう事になったが、王子二人はジャングルを散策するそうだ。
ここは観光用にジャングル内に歩道を通してトレッキングできるようにしているらしい。
手前を少し見て回るものから全長10キロほどのコースもあるそうで、そちらにはガイドも付くそうだ。2キロコースからガイドは必須だそうで、むしろガイドを付けないと中まで入れないらしい。
危険な植物などは、あらかじめ農園の付近は取り払っているそうだが、新たに生えたり見逃しもある。何より危険生物もいるからジャングル経験豊富なガイドは絶対らしい。
あとヒョウやトラのような猛獣は奥地にしかいないそうだが湿地にはワニやオオトカゲは出てくるそうだ。
そして虫除け魔法が添付された虫除けシールは、とても重要だと言っていた。
ただリリベルはジャングルはどうでもいい。
とにかく農園にあるフルーツの木や植物が見たいし触れ合いたい!
ここに来て初めてザック殿下と別行動だ。
リリベルはジャングルのトレッキングが楽しみ過ぎてソワソワしている二人の殿下が、ガイドを伴ってジャングルに消えて行くのをご機嫌で見送った。




