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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 早春の頃、サオリが王城にひょっこり現れた。

「サオリ!元気だったの?随分久しぶりじゃない?!」

 リリベルは農作業中だったが、スコップを放り投げてサオリの首に抱き付いた。


 最後に別れてから10年以上経っているのにサオリはちっとも変わってなかった。やっぱりスネイプニルは神獣なんだな〜。

「今日、来たの?疲れてない?今回は何の用なの?」

「母様、質問攻めだなぁ。サオリは僕を迎えに来たんだよ」

 アルキスが現れるとサオリはフイッと息子の方に行ってしまった。

 

 えぇっ!!サオリはアルキスとは初対面ではないの?!

「もう行っちゃうの?」

「今じゃないけど…父様と陛下には報告しないとでしょ?」

 その通りだ!サオリ到着の一報を受け、本人を含め夫や陛下、主だった重鎮達が緊急で集まった。


「北が迎えを寄越すって言ったのは、サオリだったのか!?」

 と陛下が仰天して仰った。そりゃ驚くわ。

「君らの新婚旅行を思い出すな〜」

 あの時は二頭だったけどね。

「まさか一人で行かせるの?!」

 ガブリエラ様も驚きの声を上げるけど…そう問題はそこよね?!


「それもだけど、アルキスはスネイプニルは初めてだ。乗りこなせるのか?」

「…多分。少し練習というか、馴らしてみようとは思いますが」

 それは当然だ!だが当の本人はこんな調子なのだ。

「さすがリリベル妃の息子だな」

「確かに肝が据わってる」

「一人で大丈夫なのか?怖くないのか?」


「…多分?」

 そう言って息子が首を傾げる。


『‥‥‥』

 私達は全員沈黙した。


 それからアルキスがサオリを乗りこなすのは直ぐだった。

 風の魔石のブローチも問題なく使いこなしていた。私達は以前、新婚旅行で移動したルートを息子に伝えた。

 そして必ず別荘と辺境伯家には立ち寄るように伝え、あちらにも伝令を出した。きっと国境を超えた北の辺境伯の所で、また白馬の迎えが来るのだろう。


 出発前夜、リリベルは自分達がかつて使っていた魔石の伝令鳥を息子に渡して要所での連絡を約束させる。

 アルキスは頷きながら意外な物を私に強請(ねだ)ってきた。

「母様、この絵、僕にくれない?」

 それはマティアス氏が描いた私達家族四人の絵と、なぜか南の国で私が新婚旅行で買った墨絵のサオリ画だった。

 家族の絵は分かるけど、なんでサオリ?

「この墨で描かれた曲線が良い」…そうなんだ。

 まあ良いけど…。


 いよいよアルキスが出発する日が来た。

 見送りには引退した前陛下も含め、沢山の関係者が集まってくれていた。そして前王妃様がアルキスに何かを渡していた。

 それっ!ユキチのっ!前王妃様が渡したのは「脱走のススメ」だった。それって嫌だったら逃げて来いってこと?!


「西に王子が散々来たから、次は逆輸入か…」

 陛下!何て事を仰るの?!

 だけど、だけど本当にイヤになったら戻って来て欲しい。

 私は息子をそんな気持ちを込めて抱き締める。


「母様、大丈夫だよ。二度と会えない訳じゃないし。母様達が今年から北に遊びに来ればいい。そしたら、また家族四人で過ごせるよ」

 その通りだ!私はサオリに声を掛ける。

「サオリ、息子を宜しくね!」

 サオリは心得たとばかりに「ブルルッ」と鼻を鳴らした。

 私達は旅立つ息子とサオリの背を見送る。

 アルキスは早朝の王都の道をサオリと共に颯爽と消えて行った。


 それから私達は念願の王族から籍を抜くことが出来た。

 10年どころか20年近くかかったじゃんか!

 王族籍を抜けた後、夫は長い間、王家に貢献したとして公爵位を受けた。だが王族籍は抜けても、夫も長男も王位継承権は維持したままだ。継承順位は下がったが夫は三位、息子は四位で依然として上位だ。


 私達は領地として、王家の別荘のある海沿いの王領地を拝領した。公爵家としては小さい領地だが、王城に各々仕事を持つ私達には十分な大きさだ。それに何より私達家族の思い出がたくさん詰まった場所だ。


 王都にも屋敷を構え、今はそこから各々、王城に通勤している。

 私もまだ現役庭師だ!だがルベライトは弟の為に、エリオット大臣に北への外交官派遣を働きかけ、北の陛下の「いいよ〜」というライトな一言で、外交官として北に行ってしまった。


「あの行動力、やっぱり君の息子だな」

 夫だけじゃなく、皆にそう言われた。だけど北に行ったのは息子達だけじゃない。北の王女を妻にもらった火山の国の王弟殿下も便乗して、妻を連れて北に行ってしまったのだ。

 王弟殿下はただの里帰りで、割と直ぐに戻られるらしいけど。

 まあ他国の心配までする必要はない。


 私達も休暇は北の国に行くようになった。

 お陰でノースポールで魔石掘りまでやってしまった。でもペンギン達は本当に恐ろしかった。音も無く穴から飛び出してくるので一瞬で抹殺しないと自分の身が危ない。

 お陰で私は短剣だけじゃなく、光の長剣まで出せるようになった。


 今では光の刃も二回撃てる。

 ますます強くなり、夫と長男にまでドン引きされる私だが、今はとっても幸せだ。ちゃんと王族も抜けられたし、私達はこれからももっと幸せになる。

 それしか考えられない!

予約投稿の為、10分後にエピローグが投稿されます。

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