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「気付いたかい?」
そう言って前陛下は私の瞳を覗き込む。まるで私の中に何かを探すように。
「北の女神様のお名前がイザベル?」
「そうだ。東の神はベルキスト、西の女神はアナベルだ」
「もう、国境関係なく会えているの?」
「君達のお陰だな」
「もしかして西の女神様はずっとリリの中にいたのか?」
「ザック殿下!?」
「そうだ。もう居ないけどな。でも君を通して今まで見れなかった世界を見ていたよ。とても楽しそうだったな」
「一体、いつ入って?」
「それは分からないな〜。でも君の方に心当たりがないかい?」
心当たり…って?とリリベルが考えていると「神々が入る事によって、人に及ぼす影響はあるのか?」とザック殿下が尋ねられた。
確かにそれは気になる。私の体を使って、女神様が何かやれるのかもしれない。
それに…ずっと母似だと言われていた私が、途中で父に似てきた事だって?!
「何も無いよ。中に入った人の目を通して、その人の経験するものを見るだけだ。神々が入った人間を、本人の意思なく勝手に動かすことはタブーだよ。例えその人が死のうが、犯罪を犯そうがね」
「じゃあ、あの三人には何の影響もないんだな。ただ神々が互いの逢瀬の為に視界を借りているだけか」
「そういう事だな。だが名は体を表すと言うからな〜、少し特性が似ている気もするな」
それぐらいなら良かったけど、私に女神様が入ったのだとしたら、思い当たるフシが一回だけある。もしかしたら…?!
「思い当たったか?良かったよ。さすがに神と言えど、招かれなければ勝手に人の中に入れないからな」
私は治癒魔法がなかなか身に付かなかった時、神殿で何日も懺悔して祈った。
きっとその時だ!
「リリ、覚えがあるのか?」
「うん。治癒魔法が使えるようになりたくて、何でも言う事を聞きますって神殿で祈った。多分、その時だ」
「ハハハ。そうかそうか」
「でもきっとそんな人、山ほどいるんじゃないのか?」
「入るのは誰でもいい訳じゃないんだよ。君は女神に似ているだろう?」
「北の女神の血筋…か?」
「アイザック王子は察しがいいな。うちの王子達が何人も西に来た甲斐があったなぁ」
「それも女神様の計画だったの?」
「まさか。色々、偶然が重なって今の形だよ」
「音楽!」「ん?」
「歌も楽器もダメなのに北の女神様はいいの?」
「あ〜そんな事より、弟妹に会えるほうが嬉しいんじゃないかな」
「そっか。マリィ姉ちゃんもラント様も知っているのかな?」
「どうだろうな。でも女神が名付け親なら、少しは気付いているだろうな」
確かにそうだ。
「マックス殿下、ここの白馬達とは仲良くなれたの?」
「お陰様でな。すたばて北のスネイプニル達ほど、意思疎通はでぎねみてぇだ」
「どういう事?」
「こごの馬達さ、ほどんど野生馬に近ぇっつぅ事だ」
「だから、ほぼ野生馬だって言ったじゃん」
「そうが…。ちゃんと仔馬から育でれば意思疎通でぎるがもしれね」
「マキシミリオン!お前まだ諦めて無かったのか?お前のせいで坊主にされ、国で恥ずかしい思いをさせられた騎士達を思い出してみろ!」
おい!その暴露発言はなんだ?!
国境侵犯は父親で、勝手に当時の子爵領の馬に手を出そうとした主犯は、マックス殿下だったのか?!
「おっと、口が滑ったな」
「マックス君も丸坊主で許してやろう」
父も後ろで聞いていたようだ。怒りのブラックオーラを放っている。やっぱり許せないよね?
それからマックス殿下は父によってキラキラの金髪ヘアを丸坊頭にされてしまった。奥様も子供達も大爆笑していたが、ご本人も「凄ぇサッパリした!」と仰っていた。
案外似合っていたし、あまり罰にならなかったのかも…。
楽しい休暇もあっという間で、とうとう王都に帰る日になった。次はいつ帰れるか分からない。
王家を抜けられたら、もうちょっと帰れるはずだと思うのだけどな〜。
息子達も、特に下の息子は伯爵領が気に入ったようで、ずっと帰るのをグズッていた。
私だってグズりたいやい!
「マックス殿下、そう言えばサオリはここにいるの?」
私は姉の結婚式以来、別れてから会えていないサオリが少し心配だった。
「サオリは、すばらくここさ居たさ。すたばて最近見ねぇな。森じゃねべか?それか北か」
そうか。サオリは自由だもんね。元気でいるといいな。
そしてまた会えるといいな。




