138
それから5年が経って、マリィ姉ちゃんは三人の子持ちになっていた。
そして夏を前にララ姉ちゃんが帰国して来た。ララ姉ちゃんご夫妻は伯爵に陞爵され、納涼舞踏会の後から、また南に派遣され大使館と領事を取りまとめる総領事になるそうだ。
その間、東の国では王太子殿下がリズベット王女とご結婚された。
そして東の神様の司書を務めていた伯父も司書を引退し、次の司書の座を王女殿下に譲られた。
第二王子殿下は筆頭侯爵家のご長女と婚約されていて、ご長女は東の国の学院に留学されているが、そのまま卒業後は第二王子殿下とご結婚され西の国には戻られないそうだ。
そんな中、侯爵夫人は少し前までは、ナル兄ちゃんをモデルにした小説に忙しくしていたが、第一王女殿下が来年、立太子される為、今はご長男の準備で忙しくされている。
ちなみにナル兄ちゃんの小説は恋愛小説ではない。
少しフィクションが混じった、貧乏子爵家の末息子が成り上がるサクセスストーリーで、主に令息方に愛される物語となっている。
ちょっとズルいな…。
でもナル兄ちゃんは私達の中で一番野心がある。
兄ちゃんは小侯爵になった時、伯父とアイオット様に豪語したのだそうだ。
「私はこの家を公爵家にするからな!」と。
それを聞いたアイオット様は笑って「王配の実家になるんだから良いんじゃないか」と言い、伯父は「お前に任せるのだから好きにしろ」と言ったそうだ。
話は逸れたが、やっとやっと第一王女殿下の立太子だ。
まだ陛下が在位中なので王太孫の扱いだが、立派に後継の指名なのだ。
とうとう私達はお役御免か?と思われたが、まだ解放されなかった。やはり王太子殿下が王位に就くまでは、ザック殿下は保険として必要なんだそうだ。
道のりはもう少し長いな…。
その年の冬、婆様が女神様に召された。
そして、その一週間後に爺様が後を追うように亡くなった。
婆様は肖像画のある別館の休憩室で、ひ孫達の腹巻きを編みながらロッキングチェアに座って、まるでうたた寝をしているかの様に亡くなっていたそうだ。
そして爺様は婆様を埋葬した後、お墓で祈りを捧げながら亡くなっていたと言う。その時、爺様の側にいたのはマックス殿下で、ずっと気落ちした爺様に寄り添ってくれていたそうだ。
リリベルとザック殿下は婆様の訃報を聞いて伯爵領に向かっている道中で、更に爺様の訃報まで聞いてショックを受けた。
だけど同時に納得もした。爺様が婆様なしで生きていけるはずがないのだ。
婆様も同様だ。だから二人で共に女神様の元に旅立ったんだ。
お陰でリリベルは爺様の葬儀には間に合って参列する事ができた。
そして爺様の安らかな表情を見て安堵した。
きっと婆様と二人で息子にも会えているはずだ。
もしかしたら姉のオリベル王女やお母様にも。
リリベルがマックス殿下にお礼を言うと「気にするな。わは爺様にわの爺っちゃの姿を重ねでいだだげだはんで、むすろ最後、爺様さ看取らへでもらって感謝すてら」と仰った。
マックス殿下は「自分のお祖父様に何も孝行が出来なかったから、代わりに爺様に返したかったのだ」とボソボソと語ってくれたのだが…そんな理由で彼は伯爵領に移住したのか?!だから畑仕事なども手伝ってくれていたの?!
もちろん伯爵領のスネイプニルにも興味があったのだろうけど。
彼には感謝の方が大きいけど、驚きと共に少し呆れた事は秘密だ。
今回、リリベルとザック殿下は葬儀の為に急遽、帰省したので二人の息子達は置いて来た。
ザック殿下は公務もあって忙しいので、葬儀の翌日には二人してトンボ帰りだ。
だけどマリィ姉ちゃんとラント様のお子様方、全員にやっと会う事ができたのだが同時にドン引きもした。
全員が金髪で上の二人は水色の瞳、末の娘はエメラルドグリーンの瞳だった。
名前もイザベル、ベルキスト、アナベルだった。また“ベル”じゃん!!
リリベルがラント様を睨むと、ラント様はサッと目を逸らしてきた。目を逸らすラント様は今は要らない!
「父よ!止めなかったのか?」
と父を見ると「また全員、ベルになっちゃったな〜」って笑いやがった。
始めたのはお前だろ!だったら終わらせるのもお前じゃないのか!
姉ちゃんの子供達に浮かれる伯父も同罪だ!
本当に男どもは役に立たん!
でもお母様が「リリ、そんなに怒らないで。マリィが女神様にお願いされたみたいなの」と巨大な爆弾を落とした。




