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「王都に戻って二か月以上も経つのに、ラント様は一体、何をやっているんですか!あんなにライバルがっ!とか心配していたクセに今更尻込みですか?それとも心変わりでもされたんですか?!」
「こっ心変わりなど、あるはずがないっ!」
ラント様、声が裏返ったぞ。
「まさか、あと二年もあるなんて思ってますか?違いますよ?たった二年ですよ。あと二年!婚約しても結婚まで一年はあった方がいいでしょう?準備もありますし」
「えっと…それは…」
しどろもどろのラント様は要らない。
「姉の引退後、直ぐに結婚したいですよね?王弟殿下の時のように」
「えっ…だがリリベッ「姉と結婚したいですか?」
「わっリッリリベル妃!サオリも近いっ!」
二人してラント様に詰め寄っているところだ。
「結婚したいか?」
「…しっしたぃですぅ…」
「声が小さいっ!結婚したいのかっ?」
「したいですっ!」
「本当か?」
「本当ですっ!」
「じゃあ、直ぐ行けーっ!毎日行けーっ!毎晩、姉の部屋に突撃じゃー!」
「オォーっ!って…えっ?」
「サオリッ宜しくねっ」
サオリはラント様を引っ張って背に乗せると、王城を勢いよく飛び出して行った。あ〜鞍…まあいいか。
どうせ子爵領の野生馬はいつも裸馬だ。
後は女神様が何とかしてくれるだろう。
「検討を祈る!」
とラント様が出て行った扉を仁王立ちで見送っていると、視界の端に王太子殿下が目を見開いて固まっているのが映った。
「あれっ?王太子殿下?いつの間に?」
「ハッ!リッリリベル妃、あっ兄上がお越しと聞いて…来てみたのだが…」
「ちょうど良いところに王太子殿下。ラント様の馬を誰かに頼んで大神殿まで届けてあげて下さい」
「あっあぁ」
王太子殿下が温室から出て行くと、その様子を見ていた人がもう一人、王妃様が大爆笑されていた。
「さすがっリリベル様は王太子殿下をアゴでお使いになるのですね!」
とシャーロットも拍手喝采していた。
ヤっちまったか…あとで王太子妃様に呼び出しをくらうかもしれないな…と心配になったが大丈夫だった。
サオリに配送されたラント様は、その後、毎日姉の部屋に通い詰め、とうとう婚約を勝ち取った。
『人気ランキング、7年連続1位の聖騎士電撃婚約!』
の号外を見てザック殿下と涙したが、火山の国の王弟殿下に、
「お相手が聖女様なのに、聖女婚約の方じゃないんですねぇ?」
と言われてハッとなった。
マリィ姉ちゃんより、ラント様の方が人気者だった!という事実が判明した瞬間だった。
それから青薔薇達がツボミをつけ始めた。
北ではもっと遅いのだが、西では例年少し早い。
王妃様に相談すると「ちょっとずつ咲かせて長く楽しみたいわ」と仰ったので、一部の表にある青薔薇を北国コーナーに移した。
そして今年の青薔薇の茶会は私の出産を理由に中止となり、代わりに皆で青薔薇の押し花を作る事になった。
そしてラント様が婚約の報告に直接来てくれたその日、リリベルの陣痛が始まったのだった。
最初に駆け付けてくれたのは、王太子妃様の侍女に復帰したばかりのアイリーン様だった。そしてなぜかラント様に聞いたのかマリィ姉ちゃんまで来てくれた。
「姉ちゃん、ラント様に聞いたの?」
「うんうん。リリの陣痛が始まったって」
「姉ちゃん、大神殿を出て来て大丈夫?それにお仕事は?…アイタタタッ」
「あっリリ、大丈夫?」
「うん。まだ5、6分置きだし。だから…まだしばらくかかると思うよ。ザック殿下にも仕事に戻ってもらったの」
「リリベルちゃんが、陣痛来てても平常心なのがスゴイ!」
「実は言い難いんだけど…ライ兄がさぁ迎えに来たの」
「えっ?ライ兄が?」
「そう真っ青な顔で来て「リリが…リリが…」って言うからさ、難産なのかもって大神官様が心配して、ぜひ行って来いって」
「ライオット卿、自分の妻の時より動揺してない?」
「アイリーン!絶対、秘密ね!」
「…そんなの言えないわよ」
それからも陣痛の間隔が短くなるまで時間はかかり、翌日の朝までかかって、リリベルは元気な男の子を出産した。
姉ちゃん達のお陰でリリベルの出産も安産だった。
だけどマリィ姉ちゃんは取り上げた赤ちゃんを見てドン引きしていた。
赤ちゃんは真っ赤な髪に青い瞳で、まさに王族を主張した色だったからだ。
アイリーン様まで絶句していて、リリベルは一瞬、赤ちゃんに何か異常があったではと心配になるほどだった。
更に赤ちゃんを取り上げる立ち位置を姉に奪われたザック殿下は、名付けの機会も奪われた。
出産直後に王妃様が駆け込んで来たのだ。
「青薔薇が!赤ちゃんの名前は“ルベライト”だって言ってるわ!」って。
それって青薔薇じゃなく、王妃様の北のお兄様が言ってるんじゃないの?




