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ザック殿下が初出勤された後、リリベルは温室のサロンに置かれるインテリアを王妃様と選ぶ為に王妃宮に向かう。
王妃様の執務室をノックすると扉を開けた人に驚く。
「シャーロット嬢!」
「第三王子妃様、ご機嫌よう。本日付で王妃様の侍女となりました。宜しくお願い致します」
シャーロット嬢は侍女の制服のスカートを摘み腰を落とした。相変わらずマナーはバッチリだ。
「シャーロットはリリちゃんやアイザックの同級生だったんですってね。色々、二人の学院時代の話を聞いていたの。ウフフ」
ウフフッて王妃様…もしかして、その為にシャーロットを自分の侍女にしたんじゃないよね?!
リリベルの驚愕する顔を見て、いつも王妃様の側に控える年配の侍女が「この者は一応、今年入った侍女の中でも一番の成績優秀者でありました。妃殿下」と説明してくれた。
まあ確かに学院時代も性格以外は案外、使える人ではあったが…。
「光栄ですわ」とシャーロットはすました顔で言う。
今のところ、自分への被害はないからまあいいか。ひとまず自分の侍女じゃなくて良かったと思う事にする。
執務室には王都に家具店を構える貴族も来ていて、デザインのカタログや生地、木材の見本なども持って来ていた。
シャーロットが淹れたお茶を飲みながら、王妃様と温室の家具を決めていく。温室は湿度があるので湿気に強い木材の家具にしなければならない。そういう話をしながら色やデザインをカタログを見ながら決めていった。
昼食の後は王城の菜園に出向く、するとサオリが図ったように現れてリリベルの後ろを着いて来る。
「サオリ、植えているお野菜の葉は食べないでね。気になるお野菜があったらちゃんと後で持って行ってあげるから」
サオリは気になる野菜があると、その野菜の前でちゃんと止まる。それは薬草園でもそうだ。まるで効能を解っているかのようで凄いと思う。
「サオリ?この葉が欲しいの?イイけど…お腹、消化不良中なの?でもその薬草は人には普段、干して使うのよ。じゃないと、ホラっ苦いでしょう!」
説明している側から葉をかじったサオリに慌てて水をあげる。
リリベルとサオリはいつもこんな感じで仕事をしている。
サオリは特に温室を気に入っている。
いつも最初に向かうのはヤシの木だ。間もなく実が大きくなるから、きっと楽しみにしているのだろう。
そして北国コーナーの青薔薇も気になるようでヤシの次にチェックに行く。次はパパイヤだ。これは、そろそろ食べれるかもな。サオリにも分かるようだ。見上げて熟すのを待っているのだが、パパイヤにはライバルがいる。
「そろそろ食べ頃じゃないか〜?」
ライバルは王太子殿下だ。王太子殿下が執務の合間に時々やって来るのだ。
実は、これまでの温室のフルーツの木は彼の趣味で選ばれていたのだ。でも彼の目的は食べる事もだが王女殿下達に色々見せたい、食べさせたい!というのが大きい。良いパパなんだよな。
サオリが警戒しながらパパイヤの木の前に立ちはだかる。
「おっ!もしかしてサオリもパパイヤが好きなのか?熟れたのが美味しいのか?一緒に食べよう。楽しみだなぁ」
王太子は一瞬でサオリの警戒を解いた。サオリもパパイヤを独占する気はないのだ。
「リリベル妃が、これからは管理してくれるから楽しみだな。また美味しいマンゴーを頼むよ」
そう言って王太子殿下は去って行った。
任しとけ!
そんなこんなで帰国してからリリベルは、平和な日常を送っている。ザック殿下は、まずはフィリップ様の下について働くことになった。
入府当初はフィリップ様にコキ使われてクタクタだったが、直ぐに状況が変わった。ザック殿下は火山の国とのやり取りの為に専属で動くことになったのだ。
ザック殿下的にもフィリップ様の下でもっと下積みを重ねるつもりだったみたいだが、我が国には火山の国の言葉を話して理解できる人がいない。そのせいでエリオット補佐官が港から送ってくる交易の書類などをザック殿下が取り扱う事になったそうだ。
火山の国との書類は、火山の国の言葉と南の言語で訳した物とあるそうだが、ザック殿下は南の言葉も両方分かる。
しかも自分が連れて来た人達なので「責任取れ!」と王太子殿下に投げられたらしい。だけど書類の量はハンパなくある。仕方がないので今は庭仕事しかないリリベルも、植物の手入れの合間に宰相府に行って翻訳のお手伝いをする事にした。
王太子妃様が、その様子をほくそ笑んでいる事も知らずに…。




