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王城に到着したその日は、お風呂に入って直ぐに就寝した。
翌朝、起きるとこれまで王城で過ごしていた、いつもの日常が戻ってきていた。
「おはようございます。妃殿下」
「おはようクレアさん、セーラさん」
「私達のこと覚えていて下さったのですね!」
「えぇだって、たったの5ヶ月よ。忘れるはずがないわ」
「良かったです。また妃殿下のお世話に戻る事ができて」
「二人とも大袈裟だわ。ザック殿下は鍛錬に行かれたの?」
「はい。王太子殿下とライオット卿と体を動かしておられますわ」
昨日、帰ったばかりなのに凄い元気だわ。でも私も馬達の世話に行かないといけない。
「私も準備して厩舎に行くわ」
私が厩舎の前に着くと、なんと乗馬スタイルの王妃様が立っておられた。
「おはようリリちゃん」
やっぱりリリちゃんになってる?!いやそんな事より
「おはようございます。でも何で王妃様が?」
「私も今日は手伝おうと思って」
王妃様に馬の世話を?大丈夫なの?と思って横にいる年配の侍女を見ると、彼女は無表情に頷いた。
好きにさせろって?
二人で厩舎を掃除して水とワラを替える。飼い葉を足してニンジンとバナナで馬達を呼ぶと2頭とも走って来た。
「おはようサオリ、セノビック」
2頭とも今日も元気そうだ。王妃様はセノビックにオヤツをあげてブラッシングをしてくれている。
「馬は大きいからブラッシングも大変ねぇ。でも毛並みが美しいからやり甲斐があるわ」
と王妃様もご機嫌だ。
「北では王女はあまりスネイプニルにはかかわらないの。女性は騎士になる事はないしね。でも女神様の馬だし憧れていたわ。特にサオリは私が産まれる前からいたはずよ」
「えっ?!」
サオリって一体いくつなの?
だけどスネイプニルの厩舎や馬場では、王女殿下どころか女性を見る事はほとんどなかったかも。
「タナカタツヤスは北で亡くなったの。彼が「最後は北の大地で」と望んだそうで遺体は火葬されてから南に帰されたんですって」
「彼の石像の石碑に『北で没』と彫られていたのはそういう事だったのですね」
「そう。タツヤスはサオリが産まれる時に、遠巻きに立ち会ったらしいの。それでサオリが産まれて直ぐに、立ち上がる姿を見て「健気だな。きっと妻のサオリのように美しくなるのだろうな」って言ったらしいのよ」
「だから…名前がサオリ」
馬が先か名前が先か?
北の陛下は精力的に活動するサオリが龍康の妻に似ているから、みたいな事を言っていたけど名前が先じゃん。
「サオリは南の国で、たまに抜け出して龍康のお墓に顔を出していたみたいです」
「じゃあ少し縁を感じたのかもしれないわね」
そう仰って王妃様は満足気に戻って行かれた。
この日、無事に帰還した事を正式に国王陛下と王太子殿下に謁見して報告をした。
陛下も前代未聞の二人だけの旅をずっと案じて下さっていて、私達が何事も無く帰って来たことを、とても喜んで下さった。
私は昨晩のうちに侯爵家の伯父の所にも伝令鳥を送っておいた。伯父も王都に滞在していて会いに来てくれるらしい。
「俺は来月の頭から宰相府に初出勤する事になったよ。ちょうど半年経って、下期の始まりからだからタイミングも良いしね」
「じゃあ私も同じタイミングで庭師として働こう!」
「プッ、君は庭師だった。そうだった!」
ザック殿下がそう言って笑うんだけど、一体何がおかしいんだよ!でも今朝は王妃様が馬達の世話を手伝ってくれたと言ったら驚いていた。そりゃ私も驚いたし。
「そうか。サオリもセノビックも、近々いなくなってしまうかもしれないな。その前にちゃんと挨拶しとかないとな。なるべく時間が空いたらスネイプニル達に会いに行くよ」
それからザック殿下は来月から宰相府に入られる為の準備に忙しくなった。
私も王城内の菜園や薬草園、庭園などの状況を散歩しながら見て回り、先輩庭師方にもご挨拶をした。
本当は庭師にも見習い期間があるのだそうだけど、私は植物の担い手の聖女だから必要ないと言われてしまった。
「そんな特別扱い?!下働き!土を耕したり水や肥料を運んで撒いたり、草抜きしたり、何でもやります!」
って言ったのに皆さんには恐縮されてしまった。
やらかしたっ!侍女を連れて妃殿下スタイルで見回ったからいけなかったのか?!
庭師スタイルで行くべきだったのか…と思っていると「いいえ。妃殿下スタイルが正解よ。リリベル妃」と後ろからオッカナイ人の声がした。
私、心の声が漏れていましたか…。




