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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 バニヤン達は明日には帰ってしまうらしい。

 せっかく遠くの国に来たのに意外と早い。だけど早く帰らないと来月には王都からのキャラバンが来始めるそうだ。

 それに秋の間に船の整備点検もするんだそうだ。とても忙しいんだな。


 今回、バニヤン達は我が国に献上品として、パーム油や珍しい香辛料、薬草などを運んで来たそうだ。うちの国も貰うばかりでは悪いので小麦やワイン、アップルワイン、日持ちするパスタや瓶詰めの果物のコンポートなどを用意したそうだ。

 

 彼らは次は冬場に来る予定だそうで、その時はリンゴが欲しいと言っていたとザック殿下から聞いた。

 今夜のディナーはホテルのレストランで、この国での貴賓を迎える時の代表的なフルコース料理だ。ディナーにはリリベルも参加する。


「キャシー、明日、帰っちゃうって聞いた」

「妖精ちゃん、私達は寄港先ではあまり長居はしない事になっているの。だけど今回は直ぐに帰るのが寂しいわ」

 二人でヒシっと抱き合う。

「ほらほら、別れの本番は明日だぞ、食事の席に着こう」

 エリオットがそう言って、キャシーを優雅にエスコートして席に座らせている。さすがエリオット様だ。キャシーがとっても照れているぞ。


「西の男とはああなのか?」

 バニヤンがリリベルに聞いて来た。

「学び甲斐がありますね」と王弟殿下も。

 あれは…手本にしていい人なのか悩ましいけどな。

「さあリリも座ろう」

 ザック殿下も手を貸してくれてスマートに座らせてくれる。うん。やっぱり西の国の男性はレディファーストが身に付いている。


 運ばれて来る料理は我が国の基本的なフルコースなので、カトラリーも最初からズラリと並べてある。南の国では箸一択だったが、火山の国では手で食べる料理も多いし、それが無礼な行為でもない。

 我が国の、このカトラリーの多さは驚きだろうと彼らを見ると、やはり困ったように左右を見ている。


 この場の代表の人か、身分の一番高い人がカトラリーの使い方を伝えてあげるのが良いのだが、経済大臣は気の利かないオッチャンだ。

「フォークとナイフ、スプーンは料理ごとに端から使って下さい。分からなければ我々を見て頂いて大丈夫です。ですがマナーなど気にせずに、お好きな道具でこの国の料理を味わって下さい」

 やはりここはザック殿下がお伝えになった。


「料理ごとに道具を換えるのか?」

 ごもっともな疑問だろう。だが料理ごとにカトラリーを換えないと次の料理に、ソースや味が移って楽しめないと言う理由がある。そしてこの国ではフォークやスプーンは料理を口に運ぶ道具であって、それらを舐めない。

 ソースや例えデザートのチョコやクリームがスプーンに残ったとしても道具を舐めるのはマナー違反だ。


 説明を聞いてバニヤンもキャシーも驚愕してるが、王弟殿下と長男は真剣だ。やはり将来バニヤンなるのはキャシーだな。ご長男はこのまま上品に成長して下さい。

 

 バニヤン達が帰っても王弟殿下はこのまま西の国に留まられる。

 この軍港の街に最初は交易の窓口を、次に領事館及び大使館を構える予定なのだそうだ。それをお手伝いするのが外務省だが、サポートをする貴族は、軍港の隣りの領地の侯爵家かリコピンの公爵家が候補らしい。


 侯爵家とは前海軍団長で、今の軍の施設長の家門ね。

 早速、赤い髪が狙われるな。まあ出会いは早い方がいいか。早く西の文化も知って欲しいしね。とリリベルは西のフルコース料理に舌鼓を打つ。


 久しぶりのポタージュスープだ!

 食前酒とアミューズの後に続く、夏らしい空豆のポタージュはクリーミーで最高だ。帰国した実感が湧く。

 ここは海沿いだから魚料理はヒラメの香草パン粉のムニエルだ。それに添えられたグリル野菜の彩りも美しい。口休めにブルーベリーのソルベを挟み、肉料理は牛のフィレステーキ、フォンドボーソースだ。赤ワインが進んじゃうね。


 コース料理はお代わりができないが、代わりにパンを食べるよりもシメにパスタかリゾットをプラスで頼む。本来は先に伝えておいてメインの間に挟むのも良いのだけど、腹具合を考えて最後でもOKだ。

 だが皆とのデザートの足並みを揃えたいから早めに頼む。ここはカキのクリームリゾットにしよう!


「リリベル妃は一品多いようだな?」

 チッ目ざといな、気付いたかバニヤンよ!

「そうか、よく食べるんだったな。俺も同じ物を頼む!料理が綺麗過ぎて食った気が全くしなかったわ」

 「私も!」

 エリオットがスマートにバニヤンとキャシーのリゾットを給仕に注文する。


 おぉ仲間がいたか!でもお肉に合わせた赤ワインを、まだ楽しむ男性陣はチーズの盛り合わせを頼むようだ。

 しかし本来、ゲストの満足度を確認するのはお前の役目なんだぜ!と経済大臣を睨む。ヤツはもっと気配りを学ぶべきだ。宰相と王太子には言っておこう。

 でもザック殿下も気付いたようで大臣に「補佐官はどんな人なのか?」と尋ねた。


 これは「補佐官は気の利く人間か?」という質問だ。

 その質問に秘書の方が「ヤベェ!!」ってなっていた。

 大臣が仕事はできる人間ならば、多少気が利かない人でも、それをカバーできる気の利く人間を側に置けばいい。ソッと大臣に告げてくれるフォロー役だ。その機能が全く果たせてないという事は大臣の能力も疑問視なのだ。


 だがエリオット様が「任せとけ!」ってウインクしてきた。

 外交側は北の件以来、経済省に長く因縁を抱えている。

 宰相府ももう直ぐ育児休暇からガブリエラ様がお戻りになるし、ザック殿下も入られる。反撃開始だな。楽しみだ。

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