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「いや〜笑って申し訳ない。騎士団の団長が交代する時に、私はアレを次期海軍団長に推薦したのですよ。しかしアレは勝手に騎士団を退団しやがって爵位まで息子に押し付け、自分はしばらく遊ぶのだと言いやがったのです!」
その遊び先が私ですけどね。
「だけど、ずっと妃殿下の護衛をされていたのだそうですなぁ。納得ですな。アレも二年間だったが十分楽しんだと言っていました」
なぜ納得?そんな事より‥‥
「兄は、あの馬と共に船で現れたのでしょうか?」
「いや〜私も最初ビックリしたのですよ。船から海賊に向かって飛び出す兄君とあの馬に。だがその姿がいつしか我々の勝利の姿になった。しかも聖女殿まで沿岸地域にいらして下さった。あなた方、兄妹には本当に感謝ですな。私はそれをお伝えしたかったのですよ」
「私は何もしていませんが、兄と姉が皆さんの力になれて良かったです」
「妃殿下、今回の火山の国の一行の訪問と国交開始は第三王子殿下とあなたのお力なのでしょう?」
それは…海路で帰る事になったから、たまたまだと思うのだけど。それに彼らだって全くの善意だけじゃない。
むしろ我が国と繋がっていたいのは赤い髪が欲しいからだ。
きっとそれを見据えた国交だ。だから造船の情報だって惜しみなく教えてくれるのだろうけど。
まあ、そういう方向に持っていった張本人の私が追及できる立場にはない。
厩舎に到着すると2頭は馬場にいるのが見えた。
ここは我が国の最南の海辺だが、秋も近付いているせいかだいぶ涼しい。木陰がなくても馬場にいて平気なぐらいだ。
「馬は外にいるな。だったら厩舎の掃除くらいは私も手伝おう」
「そんな!悪いので大丈夫です」
リリベルは遠慮するのだが「王族の女性が、しかも厩番がするような下働きをしようというのに、手伝わなければ騎士の名折れだ。まあ元騎士ですがな」と言って彼はすでに動き出していた。
「ここに新しい水を入れればいいか?」
「前海軍団長は水属性ですか?」
彼が水飲み用のオケに新しい水を魔法で入れるのを見て、リリベルは尋ねる。
「あ〜…私が前団長だとバレてるんだな?もしかして自分で言ったか?まあ海軍は水と風属性が多いんだよ」
彼は赤い髪ではないが瞳は青だ。
何となく彼も王族なのではないか?と思うのだが…リリベルがジッと彼を見つめると「ハ〜…王位継承権は無いぞ。だが息子の一人と孫娘達は髪が赤い」やっぱり!
なんか自分も王族になって、王族センサーでも付いたのかなぁ?
この5ヶ月間、王族としか付き合ってないから、王族を嗅ぎ分ける勘が発達したとか!って言い過ぎか。
実はトンガ教授に学んだ王族の系図に、海軍団長は陛下のハトコだと記載があった。
教わった系図にはあまり遠い王族は省いてあったが、彼自身が重要な役職に就いていたのと、子供に赤い髪がいたので載せてあったのだ。
まあ思い出したのは、彼が魔法で水を出した時なのだが。
「赤い髪ってしつこいよなぁ。私は違うのに、その子供や孫には受け継がれる事があるなんてな」
と彼は笑って言いながら作業を終えて厩舎から出る。
「サオリ、セノビック、お掃除終わったよ。ブラッシングは?」
リリベルが馬場の2頭に声を掛けるとセノビックが走って来た。
「セノビック、海軍の前団長だよ覚えてる?」
セノビックは柵の外にいる前団長をチラッと見たが、オヤツが無いのが分かるとまた馬場に走り去ってしまった。サオリもブラッシングは要らなそうだ。
「私は嫌われているのかな?」
「いいえ。オヤツの野菜と果物が無かったので去って行っただけです。最近、甘やかし過ぎたので今日は控えただけですから気にしないで下さい」
「そうか。神獣も躾をするんだな」
「あまり甘やかすと、北に戻った時に北の騎士達が困るでしょうから」
「ハハハハ。お別れの時が近付いているんだな。王子と妃が二人だけで旅に出たと聞いた時は驚いたが、何事もなく無事に帰還したのは神獣達のお陰かな?」
「それは間違いありません。それに私達の旅にお心を砕いて下さっていた各国の王族の皆様のお陰かと」
「そうか。君らが王都に戻る時は、我が侯爵家にも寄ってくれ。この軍港の街の隣が我が領だ。公爵家の領の手前だよ。息子に先触れは出しておくよ」
そう言って現施設長は去って行った。
そう言えばあの人、最初敬語だったのに途中から敬語なくなってたな…。




