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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 我が国の経済大臣が今朝、到着して午後には王弟殿下とバニヤン一家とで、具体的な国同士の国交と交易についての話し合いが始まった。ザック殿下も王族として参加なさっている。


 今回、火山の国側は外交の全てを王弟殿下とバニヤンに一任しているらしい。王弟殿下はまだ14歳だ。バニヤンが後見しているとは言え、僅かな護衛と側近だけで大臣を一人も伴わずに外交を任されているのは凄いと思う。

 まあ下手な事をしたとしても国同士は遠いしね。


 けれど王弟という身分と、国を代表する大船団を連れて来たのだ。変な老獪を寄越すよりも、我が国が見下されたと感じる事もないし安心もできる無難な人選だったのだろうと思う。


 リリベルは昼食後、何もやる事がなくて部屋で地図を見ながら、王都までの帰りの道のりを考えていた。サオリもセノビックもこのまま王都まで一緒してくれるようだ。

 だが、この軍港の街から王都までは意外と遠くて10日もかかる。かかる時間が南との国境並みなのだ。やはり海側に出るからだろう。


 だったらスネイプニルで単純に5日くらいか?

 この港のすぐ上に立地している中央の港だったら、王都までは一週間らしい。だけど港自体も漁船や積荷の船で混み合う上、港から王都までの道も混み合うと聞いたのだ。

 北の港だったらナル兄ちゃんに会えたかな〜。


 ナル兄ちゃんは王都ではなく侯爵家の領地で来年、式を挙げるらしい。結婚したら、もうほとんど王都にも来ないのかもしれない。兄ちゃんは侯爵家の仕事にどっぷり浸かってしまった。

 私もお嫁に行っちゃったし、まだ父は元気だけど今後、うちの子爵家はどうなるんだろう…?なんて事を考えているとザック殿下が戻って来た。


「リリ、ただいま。退屈してた?」

「うん。でも帰りの道を少し考えてたの」

「そうか。帰りはリコピンが途中に公爵家の領地があるから、宿泊に公爵邸を使ってくれって言ってくれたんだ」


「リコピンはしばらく王都には戻らないよね?海軍の団長になっちゃったから、ここが任務地なんでしょ?」

「そうだな。リリにはきっと新しく近衛騎士が護衛に付くよ」


 寂しいけど、今までリリベルの護衛にリコピンがいたこと自体が異例だったんだ。それにうちの国の海軍を盛り立てる為にも、リコピンにはぜひ頑張ってもらわないといけないよね。


「リリ、これから造船所の視察に行くんだ。バニヤン達も来て色々、造船のアドバイスもしてくれるらしい。リリも来るか?」

 この街は軍港でもあるけど造船所の街でもある。主に大型船はここで作られているらしいけど私はあまり興味はない。


「ん〜私は船の事は一切分からないからいいや。スネイプニル達の様子を見に行くね」

「そうか。スネイプニル達の世話も任せてしまって済まないな」

「ううん。いいよ。お仕事頑張って来て」

 きっと王子としての立場だけでなく、宰相府に入る殿下の仕事の為にも必要な事だろう。


 ザック殿下を見送って、リリベルも海軍本部の厩舎に馬達の様子を見に向かう。昨日、入館証をもらったが、朝も世話をしに行っているので顔パスで入れてもらえた。

 

 だけど厩舎に向かう途中で、偉そうな人に声を掛けられた。

「妃殿下、第三王子妃殿下!」

 久しぶりに、そう呼ばれたから直ぐに振り向けなかったけど、そうだ…私は第三王子妃殿下じゃん!


「私はこの軍の施設の施設長を務めております。元は海軍の船乗りでしたが、今は施設長に退きまして事務方を担当しております」

 と挨拶して下さったのは、リコピンよりも少し年上に見える初老の男性だが、まだ全然騎士の雰囲気が漂う貫禄のあるお方だった。


 この人…“元海軍の船乗り”とか言ってるけど絶対、前海軍団長だったんじゃない?そんな人が私に一体、何の用?


「馬の世話にいらしたのですか?」

「そうです」

「ご一緒に馬を見に伺っても?あ〜もちろん近付きませんから!」

 これ断っても、着いて来るでしょ?


「馬を見に?それとも私に用が?」

「どちらもですかな〜。あの銀の馬には見覚えがあるのですよ。妃殿下の兄君が乗られていた馬ではないのか?と」

「!」


「兄が海賊討伐の時に乗っていたスネイプニルと言うなら、間違いありません。あの馬がそうです」

「おお、やっぱりそうでしたか。もう三年も前になりますかな〜。私は海賊が増え始めた春頃から、討伐の為にこの海で奮闘していたのですが、力及ばずケガもしまして国に迷惑を掛けました」


「私は当時の事情はよく分かりませんが、その時、第三王子殿下が南の国で襲撃に遭われて、往復での護衛に人数を割いたため、十分な騎士団をここに派遣出来なかったと聞いております。前海軍団長の責任だけではなかったのではと思います」


「ですが我々がもう少し戦えていれば、沿岸地域の領主や住人に損害も被害も与えなかったのではないかと思うのです」

「では、これからリコピンを鍛えてやって下さい。せっかく火山の国のプロも来訪しているのですから、新しい海軍団長が挽回すればいいでしょう?」


「リコピンとは…リッカルドの事ですかな?アレをリコピンと呼んでいるのですか?ワハハハ」


 ‥‥アレが“リコピン”って呼べって言ったんだぜ?

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