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「おぉキャシー、キレイッそれに、すっごいゴージャス!」
翌日の火山の国の客人を招いたパーティで、キャシーはこの国のドレスを着ていた。黒い生地のドレスに金糸の刺繍とルビーが散りばめられていて、とても大人っぽく美しい。
「ありがとう。でも裾踏んで直ぐに転びそうになるの」
「姉はさっきから何度も躓いているんです」
横で長男が苦笑いしながらエスコートしている。
「令嬢、まずはリリベル妃のドレス捌きを見ているといいですよ。淑女が外面だけの従姉妹殿が、この国の作法を忘れていなければですけど」
「エリオット補佐官!ケンカ売ってる。私、一応王子妃ですから!」
「ハハハッ忘れていましたよ!」
「わっイケメン!」
キャシーが従兄弟のエリオットを見て目を輝かせる。
「キャシー、この人も既婚者だからね」
「残念…仕方ないからリリベル妃ちゃんの作法見てるよ」
「キャシーは歳上がお好みなの?」
「さあよく分かんない。でもムキムキで男臭くない方がいいな〜」
第二夫人が言ってた通りだ。
だとしたら職場恋愛は難しいな。
歓迎パーティは、この国の料理とお酒でビュッフェ形式の立食スタイルだが、火山の国は社交ダンスの文化がない国なので今日はダンスタイムは無い。
代わりに船団員の参加も自由にしているので、彼らが船で演奏していた音楽を演奏してくれている。
船員達は船での暇つぶしによく楽器を鳴らして歌って踊っていた。リリベルは楽器も歌もダメだがダンスは楽しくて彼らと一緒によく踊っていた。
踊りも難しい振り付けはなく簡単で自由だった。
「ふ〜ん変わった楽器だ。それに音楽も明るくてテンポが良いな」
「そうでしょう?踊ってると目が回るの」
「それはお酒の飲み過ぎではなくて?」
「え〜違うよぉグルグル回るからね」
「リリベル妃ちゃん!踊りに行こう」
「そうだねキャシー行こう」
私達はドレスの裾を持ち上げて腕を組んで踊り出す。
その踊りに、どんどん人が加わって行って、皆で腕を組んでグルグル回る。
「ホントだ。目が回りそうだ」
エリオットが呟く。
アイザックはリコピンやバニヤン、王弟殿下達の会話に加わっていたが、妻と船団主の長女達が踊り始めたのを見て、ふと笑みが溢れる。
「おっあいつら、めっちゃ回ってんな」
リコピンも気付いたようだ。
「あの踊りでな、意中の相手をグルグル回して目を回させて自分に抱き付かせるんだよ」
「へえ、それで運良くイケば介抱しながらお持ち帰りか?」
「その通りだ」
「アイザック、あれはヤバくねぇかぁ?」
「大丈夫だよ。見てなよ」
「‥‥確かに脱落してるのヤローばかりだな」
「二人とも先に目を回した事がない」
「ハハハッうちの娘もなかなかだろう?」
「ああ。めっちゃイイ。俺があと40歳若ければな!」
「それは良いな。夫が赤い髪なら赤毛の金眼になるかもしれない」
「残念ながら嬢ちゃんに合う赤毛の男子は、今は居ないな〜ジジィかガキばかりだ」
「女子もか?」
「ああ長男にか〜侯爵家にいた気がするな。だが火山の国に、しかも大船団とは言え船乗りに嫁ぐかな〜それに多妻だろ?」
「やはりそこはネックか?」
「遠い知らない国で夫だけが頼りなのに、夫はほとんど家を空け、更に他の妻を迎えられてみろ?この国の貴族令嬢には酷だな」
「バニヤン、火山の国では金眼が大事にされるのと同じで、この国では赤い髪は王族の血縁ばかりだ」
「なるほど。余計に蔑ろにはできないな。それに逆に心配しないといけないのは夫の方だな。赤い髪の妻が他の男に狙われるかもしれない」
「そこまでか?!」
「ああ。多分その可能性は高いよリコピン。俺は身をもって火山の国で体験したよ」
「俺、火山の国ではモテモテか?」
「ハハハハッ面白いな〜海軍団長は。気に入ったぞ!」
その場はリコピンの会話で笑って終わったが、アイザックは考える。
リリベルが王配に渡した『赤い髪リスト』あれには男性は既婚の男性と10歳以下の男子しかいない。
しかし女性はリコピンが言った通り、数名の10代がいる。
王弟殿下の留学…この国との交友の意味は…それは王子が第二王女を迎える為の布石なのだろうと思うが、恐らく王弟もリストの赤髪令嬢を狙っているのではないだろうか?
彼は柔和な男性だが、あの女王の弟なのだ。一緒に過ごしていて、とても賢いのも分かる。
まあ赤い髪の令嬢はついでなのかもしれないし、彼の目的の一つであっても、決めるのは令嬢側だから自分が心配する事ではないかと、アイザックは開き直る事にした。




