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翌日のお昼頃、バニヤンに甲板に呼ばれて目を凝らして遠くを見ると、肉眼でも薄っすらと陸地が見えてきた。もう少しで祖国に到着だ。
港が近付くにつれ沢山の人々が歓迎に集まってくれているのが見える。
そして我が国の軍艦が港の左右で帆を張って、空砲で出迎えていて、陸地では花火も上がっている。凄く盛大な出迎えだ。
いつの間にかバニヤンも長男も、船長と副船長の正装に身を包んでいる。正装があったのね?だけどバニヤンのそんなピシッとした姿、初めて見たぞ!
船が着岸すると、我が国の騎士団が整列して出迎えているのが見えた。先頭の騎士は見覚えのある赤い髪だ!
「ザック殿下!リコピンだっ」
リリベルはスネイプニル達がいるから、まだ馬達と船室にいて窓から外を見ている。
下船の準備が整って2頭と陸地に降りると、私達とスネイプニルは騎士によって海軍の敷地に通された。とりあえず早く馬達を休ませられるようにという配慮だ。厩舎は軍の敷地なので馬場も広い。
バニヤンや王弟殿下は着いたばかりだが、これから我が国との会談があるそうで、拠点となる軍港の街の大きなホテルに移動していった。
会談にはザック殿下も一緒に加わわるそうで、セノビックを厩舎に入れると急いで会場に向かって行った。
会談は南の国の言語でされるそうだ。双方、共通で話せる言語が南の国の言葉というだけなので、ザック殿下は通訳としても重宝されるだろう。
私は厩舎に残って馬達の相手をする。
2頭には随分世話になった。無事に最速で各国を移動し、安全な旅が出来たのはサオリとセノビックのお陰だ。
リリベルは2頭にお礼を言いながら労う。
「サオリ、セノビックも本当にお疲れ様。長い間ありがとうね。西の国に着いたから、もう終わりでもいいんだけど2頭とも王都まで来てくれるかな?まだ王都まで私達と一緒してくれる?色んな国に行って楽しかったね〜。美味しい物もたくさん食べたね」
しばらく厩舎で2頭を相手に、リリベルはこれまでの旅のお喋りをした。
会談の後は火山の国の一行には、今夜はゆっくり休んでもらって明日の夜、ホテルで歓迎パーティをするそうだ。バニヤン一家や護衛船の船長達は今日は我々が用意したホテルに泊まるそうだ。
リリベルもスネイプニル達と別れた後、ホテルの部屋に入って久しぶりのお風呂に浸かる。
今日の会談は簡単な挨拶だけだから早く終わると聞いていたけど、まだザック殿下は戻らない。リリベルはもう一度、身支度を整えて会談をやっている会場まで様子を見に行ってみる。
会場の扉が開いていたので中を覗くと会談は終わっていたが、まだ我々の国の皆が残って中で話をしていた。
何を話しているの?と見ていると「リリベル!」と呼ばれる。
「エリオット様!」
「やあ、お嬢お帰り。5ヶ月ぶりだな」
「リコピン!何で?何でいるの?私を迎えに来てくれたんじゃないよね?」
「リリ、リコピンはまた騎士団に復帰したそうなんだ」
「えっ!」
「ああ、そうなんだ。お嬢の護衛の方が面白かったんだがな〜「遊びはもう終わり」って言われちまってな」
ちょっと待て!リコピンは遊びで私の護衛をやってたのか!
その言い分には腹が立つ!だが「でも騎士団長は…」
「ああ。次はこの軍港を任される事になった。後任が見つかるまで俺が軍港の責任者だ」
「エリオット様は?」
「僕は外務省の代表でここに来たよ。火山の国がここに交易の窓口を設けたいそうだから、その手伝いと王弟殿下がこの国の学院に留学なさりたいそうなんだ。彼が外交官代理も務めるらしいから、ここでの暮らしもサポートするよ」
「そうなんだー!」
「君らにも色々、手伝ってもらうよ。火山の国の言葉も随分、話せるようになったんだろう?」
「うん。分かった」
「リリ、そうだ、僕のところはまた女の子が産まれたよ。兄のところと、ルトのところは男の子だった」
「わあ、エリオット様おめでとうございます。5ヶ月離れていただけで、なんか色々、変わってる気がする」
「そうだな。リリは…まだか?」
「えっ?」
「てっきりハネムーンベビーで途中で戻って来るんじゃないかとも思ったよ。だがちゃんと計画できていたようだな」
「俺、リコ爺になるの楽しみにしてたのになぁ」
「リコピンはもうお孫さんいるでしょ!」
「ハハハッ、アイザック、そりゃまだ二人だけの新婚期間を楽しみたいよな〜」
「5ヶ月ずっと一緒にいて、まだ足りないか?逆にもう顔を見たくないって…ならないか…ならなそうだなあ〜良かったな。ラブラブで」
「なんかトゲあるぞ?補佐官、その言い方」
「ハハハハッ」
「エリオット様!それより聞いた?西の大陸の第八王子が船団主のお嬢様にプロポーズした話」
「えっマジか。第六王女はヤバかったぞ?もう嫁いだけど。アイツの兄だよな…ま〜本気だったとしても相手にするべきではないぞ。アイツは妻は三人だが愛人は一番多いはずだ。それに孫もいるぞ」
「エリオット様、ぜひ全力で止めてあげて」
「そうか〜代わりの紹介も要るのか?」
「それはバニヤンに船団主に聞いて!金の瞳の人達だから全員、王族の血縁なの」
「分かった。慎重にいくよ」
さすが外務省のトップにいる人だから最新の情報も知ってて当然か。この件はエリオット様にお任せしとけば安心だ。
リリベルは、その日は懐かしい仲間と会って、久しぶりに西の国の空気をいっぱい吸い込んで帰国の実感を満喫した。




