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「南の軍港は火山の国の船団が停泊できるように、すでに準備が整っている。航海の無事を祈る」
王太子殿下から伝令鳥での返信が届いた。
ザック殿下はそれを伝えに船長室に向かったので、リリベルは甲板でお散歩させていた馬達を船内に戻す。
「サオリ、セノビック、これから船の帆を張るんだって。船員達がたくさん出てくるから、一旦お部屋に戻って待っててね」
馬達はちゃんと言う事を聞いてくれ、扉を開けると自分達で勝手に戻って行った。
リリベルが馬達の背を見送っていると「スネイプニルって本当に賢いな?」入れ替わりでバニヤンがやって来た。
「アイツらトイレも甲板に出た時にしてるんだってな?船室がキレイだって、他のヤツらも驚いてたわ」
「実はそうなの。だから頻繁に外に出してごめんね」
「いや、構わないけどよ。またイイ風が吹いてきたから順調に進みそうだわ」
「そう良かった」
それからの航海は多少、雨が降ったりもしたがハプニングも無く順調だった。スネイプニル達も大人しくてお利口だった。
だけど海の男達はスネイプニル達よりも、少しレベルの低いアホ共の集団だった…。
「なあ!妖精よっ、とうとう明日には港に着くぞ」
バニヤンと兄の船長達?いつの間にかこっちの船に集まっていた。
「それでだな〜我々はまた美しい神獣の姿を拝みたいのだよ!」
その神獣とはフェニックスの事ではないな…。
「俺達の船団は船を扱うプロ集団だろ?船をさぁ4艘並走させるからさっ、お馬さん達を駆け抜けさせてくれないか?」
「はっ?!」
「その目的はスネイプニル達を見たいからだと?」
「そうそう。だってもう二度と見れないだろ〜。あのクラーケンと戦った時の船での神がかった身のこなし!まさに神獣だった〜」
マジか?!
「今から…?」
「おう!張り切ってフォーメーションだっ!」
「とりあえず聞いてみるけど…嫌がったらゴメン」
「それはお馬様だからな〜」
船長達は走行する船の間を小型のボートで互いに行き来していた。船乗りって海の上でもフットワーク軽いんだな。むしろ海上だからか?
私達はスネイプニル達の元に戻って聞いてみる。
「サオリ、セノビック、ちょっと運動しない?海にお船を並べるから船と船の間を駆け抜けてもイイよって言われたんだけど」
4日間、甲板に出る以外の運動をしていないサオリが甲板につながるドアを見やる。ヤるのか!セノビックも?ヤるんだな。
ドアを開け、スネイプニル達と甲板に出ると、私達の船はスピードを落とし護衛船が横に並んで来ているところだった。そして小回りの利くキャシーの船はグルッと海上を旋回して最端に並ぶようだ。
スネイプニル達は船と船との距離が15メートルくらいあっても楽に飛び越える。恐らく助走があれば20メートル以上飛ぶのでは?!
船長達はまた絶妙な距離で船を並走させてくる。悔しいがテクはやはり素晴らしい。キャシーの船も最端に並走を終えたようだ。
舵を取る船員以外が甲板に集まり出した。帆は全部畳んであるので見通しは良い。船の中央をスネイプニル達が駆け抜けられるように船員達は船の機首か機尾側に寄っている。
バニヤンのGOサインが出た!
「サオリ、セノビックあっちの船まで駆け抜けて、また戻っておいで」
リリベルが言うとサオリは「ビュンッ」ともの凄いスピードで飛び出して行った。セノビックも後に続く。
多分、早過ぎて肉眼で馬達の姿を追えないんじゃない?これは船乗り達の誤算だろう。ものの1分くらいでサオリもセノビックも何事も無かったかのように戻ってきた。
「マジか…」
隣の船が手旗信号で「馬、早過ぎて走った姿見えず」と送ってきた。ザック殿下がその様子がツボに入ったのか、横でプルプルと震え出した。決壊寸前だな…。
「サオリ、セノビック、運動になった?あっという間に終わっちゃったね」
とリリベルが言うと「もう一度!」とどこからか声が上がった。それが飛び火して各船から“もう一度”コールが聞こえてきた。
「サオリ、もう一回だって。セノビックもいい?」
サオリは首を傾げる。見せ物にされてるって気付いたかな…?
すると先にセノビックが飛び出した。
だけど次はゆっくりだ。恐らく皆が肉眼に捉えられるスピードだ。きっとセノビックは兄を乗せて船中を走り回ったんだ!きっとそうだ。だからその時の事を覚えていて走ってくれてるんだ。
セノビックを見ていたサオリも、船員達がセノビックに熱い声援を送っているのを見て飛び出して行った。
体を動かしたかったのもあるだろうけど、サオリにしては大サービスだ。
後でしっかりお礼を言ってご褒美をあげておかないと。
その後、大喜びした船員達がたくさん果物をプレゼントしてくれたが、リリベルは姉が持って来てくれていたモナカを2頭に差し入れしておいた。




