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姉夫婦の子供達は姉が連れて来たメイドと外交官夫婦が見てくれているらしい。外交官夫婦はすでにお子様達が独立した年配夫婦なので孫のように喜んで子供達を見てくれるのだそうだ。
姉とキャシーは、とても意気投合して肩を組んで飲んでいる。キャシーは見た目通りの酒豪だが姉も凄い。だが明日はきっと二人とも二日酔いだろう。
私はスネイプニル達の世話もあるし、明日は絶対寿司を食べに行きたいから酒量を控える。ザック殿下も同様のようだ。
義兄も姉を連れ帰らないといけないからお酒は控え気味だが、王弟殿下やご長男にまだ西の大陸の王族について質問をされているようだ。
バニヤンは静かに飲んでいるが顔色が全く変わらない“ザル”か。
「妖精、もう飲まないのか?それは酒じゃないな?」
バレたか。これは冷たい緑茶だ。
「バニヤン、王都にいる弟さんが金の瞳じゃないのは、マギーさんの二番目のダンナ様が父親だからだよね。じゃあバニヤンのお父様は?」
「俺の父親はもう随分前に亡くなったが、俺の今の船団の前身みたいなもんか…今より半分くらいの規模の船団主だった」
「そっか。最初のご主人が亡くなったからマギーさんは新しい方と再婚されたの?」
「違うな。当時、母は父の第三夫人になった」
「えっ?!マギーさんが第三夫人って!」
「そう思うだろ?だが第三夫人でも普通の夫人とは違う。金の瞳の夫人だ。父が母を妻にもらう条件は、“父の船団は母の子供が継ぐ”というのが条件だった。当然、政略結婚だし父もそれを望んでいた。つまり父は金の瞳を自分の家系に入れたかったんだよ。まあそれが叶って、しかも今は大船団だろ?」
と言いながらバニヤンは笑う。
「もちろん、ここまで船団が大きくなるまでには祖父、母の父親である元王子の協力も大きかったがな」
「じゃあ第一夫人も第二夫人も、そのお子さん方もバニヤンが後継になることに異存は無かったってこと?」
「表向きはな。それぐらい金の瞳はこの国での威力は絶大だ」
「表向きはって、裏では苦労したの?」
「そりゃあそうさ。実力がなければ海では危ない。もし俺に実力がなければ船団の飾りでしかなく、実権は兄達が握っただろうな」
「今、お兄様方は?別の所で働いているの?」
「ん?俺の左右を固めてくれているぞ。お前たちの船の護衛船の船長達な。今頃、この港の酒場か娼館で楽しんでいるだろうな」
「ビックリした!ちゃんとご挨拶しとけば良かった」
「ああ。ならこの航海中のどこかで酒でも注いでやってくれ。妖精がクラーケンをぶった斬ったと聞いてから、ますます挨拶したいって、あっちも言ってたからな」
「へっ?!じゃっじゃあ近いうちに…」
「ヨロシク頼むわ」
「ねぇこんな事まで聞いていいのか分からないけど、バニヤンと同じ父親の兄弟は?」
「いないな。母は子供を一人産んで自由になった人だ。だが結局、母は実家に戻った。祖父が強く望んだからだ。祖父にとって愛する子供は母だけだったんだよ」
「だから前宰相達と仲が悪かったの?」
「悪くないだろ?金の瞳の姉に敵うはずがないんだから」
そこまで金の瞳には力があるの!
「それにアイツが宰相になれたのも姉のお陰のはずだ。母は若くして女王に立った自分の従姉妹を娘のように可愛がっていたし、凄く心配してたからな。兄は宰相として、弟は呪術で助けてやれって」
「ブーッ!!」
緑茶を吹いたっ!何だって?!
「おい?そんなに驚くことか?」
「バッバニヤンッ!これまでの南の国での私達の話や、前宰相の弟が石になった事とか、王都では呪術を取り締まる傾向になった事とか…そんな話を聞いてない?」
「あ〜…。それは…それで。母もフェニックスと妖精に全部浄化されたから、あとは俺に任せるってさ。だが君の事はたいそう気に入っている感じだったぞ?」
何て事だ…ラスボスで黒幕はマギーさんだったのか…?
「母も真に自由になれたのは祖父が亡くなってからだ。母はずっと王族籍を返還したがっていた。金の瞳を持っていてもその身は利用されるばかりだったんだよ。だから俺の子供達は好きに相手を選ばせるつもりだ。あんな第八王子とかじゃなければな」
バニヤン、良いお父さんだ。
「でもきっと次女は母の養女になる。ずっと打診されていたんだ。次女が成人するまでって拒んでいたけど、母は今年のキャラバンでこっちに来るのは最後にするって言うから分かんないな〜」
そう言ってバニヤンは父親の顔で最後の一杯を飲み干した。
幸い私が吹いたお茶は誰にも被害はなかった。




