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姉から予定通り到着したとの連絡を受けた。
姉はこの港にある我が国の領事館に滞在するそうだ。しかし領事館と言っても小さな一軒家だそうで、殿下をお泊めできる程の施設ではないと聞いていた。
外交官も年配の夫婦が一組いるだけで、主にこの国に船で輸出入に来た人達の通関や出入国を手伝っているそうだ。
ちなみに火山の国の領事館もあるが、今回は寄港だけなので港街から出ないなら入国手続きも不要との事だった。そして私達は南の国の王太子印の入った通行証を持っているので一切手続き不要だった。さすが王族だ。
私とザック殿下は予定よりも早く旅館を出て、船にいるバニヤン一家に浴衣を着付けてやった。バニヤンは浴衣を着せると、かなり親分感満載で、ちょっとヤバそうな人になってしまったが…まあいいか。
でもキャシーはさすが女の子だから喜んでくれた。
薄ピンクの生地にハイビスカス柄は旅館の人のチョイスだったのだが、なぜかキャシーにすごく似合っていた。焼けた肌と髪のお陰で少しヤンキー風になったけど、これもまた、まあいいかってなった。
私、ちょっと投げやり過ぎかなぁ?
ご長男と王弟殿下は王道でお似合いだった。
王弟殿下はまだしも、ご長男は今後、バニヤンのように育ってしまうのか?とちょっと心配していると、ザック殿下が「バニヤンになるのはあっちだ!」とキャシーを指差したので納得した。
ご長男はマギーさん路線を目指して頂きたい。
バニヤンが貸し切ったお店は“炉端焼き”という店内で様々な食材を炭火で焼く店で、海鮮だけでなくジャガバターとかコーンバター、餅チーズ焼きとか、リリベルの心ときめくメニューも沢山あって、バニヤンの店選びのセンスの良さに思わず、彼に向かってサムズアップをして、また笑われてしまった。
待ち合わせの店に、姉は夫の子爵と一緒に現れた。
姉がニッコリ微笑んでバニヤンにスカートを摘んでお辞儀をすると、バニヤンは頬を染めながら「既婚者じゃなければ第三夫人としてプロポーズしているな」と言ってキャシーとご長男に両側から殴られていた。
そんな事を言われても、姉も義兄も慣れているのだろう。
二人とも顔を見合わせて「まあ、うふふ」とニコやかだ。姉の方が王子妃に向いているのでは?と思える瞬間だった。
きっと姉の面の皮の厚さはリリベルの比ではないのだろう。
そして会話はザック殿下を中心に進んでいく。
なぜならリリベルは食べる事に夢中で忙しいからだ。
男前なバニヤンは「メニューの端から本日のオススメも含めて全部持って来い!」と店主に伝えていた。なんて素晴らしいんだ!
互いに既婚者じゃなければ結婚を申し込んでたぞ!と一瞬でも思った事はザック殿下には絶対秘密だ。
会話は主に南の言語で行われていて、時々、私達の通訳が要るくらいだ。まず姉達の話からすると、西の大陸の王様は今年で御年82歳だそうだ。奥さんは30人はいるだろうという話。なぜそこまで妻が増えるのかというと、王様が女好きの絶倫というよりも国内の各部族や貴族だけでなく、大陸中の国々から嫁が集まってその人数になるのだそうだ。
王は「嫁に来たい」という人を拒まないそうだが離婚も簡単に受け入れるそうだ。だから人数の増減は激しいらしい。もちろん嫁に来れる人にはちゃんと条件はある。じゃないと30人じゃ収まらないだろう。
そして王様の子供を産んでも子供に紫眼が遺伝しなかった場合、子供は王族とは認められないそうだ。
今のところ王族と認められている王子は8人、王女は6人いたらしいが王女は全て嫁に行ったそうだ。奥さんの人数の割には意外と少ない。だが認められていない子供はその倍以上いるはずだと、姉が上品にイカゲソの塩焼きを箸で摘みながら言う。
もうイカとタコの軟体動物はしばらく見たくない。
私だけじゃなく姉と義兄以外、誰もそれらに箸を付けないから気持ちは同じなんだろう。
残念ながら今、メニュー表のイカタコゾーンらしく、姉と義兄に頑張って食べてもらわないといけない。
ちなみに次の国王になる予定の王太子は第一王子で63歳だ。
本当に彼は王位を継げるのか?という雰囲気が漂うくらい現国王はまだバリバリ元気で国政を行っているらしい。
王子達も何人かは婿に出て減っているそうだが残っている王子は国を支える要職に就いている優秀な王子達なのだろうと姉は言った。
「子爵夫人、実は第八王子が船団主の長女に求婚したのだそうだ」
とザック殿下が言うと「黒髪の?」と反応したのは義兄の方が先だった。
「しつこかったわね〜でも彼らだけではなかったけど」
「そうだな」そう言って義兄が溜息を吐いた。
「一体何が?」バニヤンが聞いてくる。
「この人、紫眼でしょ。それにうちの息子もだから」
と姉が言うと『あっ!!』とその場にいた全員が思った。




