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「水属性の魔法使いは各船に一人はいる。だが船の水漏れや嵐に遭遇した時、逆に何日も雨が降らない時の対策要員だ。普段は技師として船内にいる」
「そうか。私はきっと天候に関する事なら多分、役に立てると思うんだ。今は雲の動きが気になる」
「確かにな。こんな追い風の時は、これまでの経験からすると天候も変わりやすい。だから先に進めるところまで進んでおきたい」
彼らにも船長や航海士としての経験があるんだろう。余計な申し出だっただろうか?
「我々は経験や勘が頼りだが、王子は違うのだろうな。意見は歓迎だ。特に天候は重要だし気になることがあれば早めに言ってくれ」
「ああ。分かった」
その日の航海は幸いにも順調だった。追い風のお陰もあって距離も伸ばせたみたいでバニヤンも満足そうだった。
スネイプニル達も午後には甲板に出ることが許されてデッキに連れて行くと、2頭とも大人しく潮風に吹かれながらデッキの端で海を見ていた。
翌日の航海は風もなく帆も畳まれている。
「王弟殿下、海って本当に周りはどこを見ても水平線だけで、何も見えないんですね?この状態で丸1日」
「本当ですね。波も穏やかで揺れもないし良かったですが、本当に何に見えないですね」
王弟殿下も退屈そうにそう仰った。
天気にも恵まれているから良い事なのだが、海の真ん中と言うのは本当に周囲には何もない。読書やカードゲームなども早々に飽きてしまった。
そしてザック殿下は船員達と体を動かしたり、船長室にいたり、マストの上に登り天候を気にしたりと意外と忙しそうに動いている。
リリベルはスネイプニル達の相手もあるが、王弟殿下はあまりする事が無いのでリリベルに「西の言語を学びたい」とお願いしてきた。彼はこれまでもメリッサさんに学んできたが、西の学院に入学を希望しているので1年以内に会話をマスターしたいのだそうだ。
リリベルは船で過ごす間、簡単な単語や短い会話を王弟殿下に教える事にした。
それにしても思い出すのは南の国で火山の国の言葉を習った日々だ。
「グチとか変な言葉ばかり直ぐに身に付いたんです」
と話すと王弟殿下は笑った。
「だから初日のあの言葉!“クソ野郎”はなかなかでしたね」
「スミマセン…お腹が空き過ぎてつい」
「アハハ。だとしても他国の要人に言わせていい言葉ではないのですよ」
「言った私が無礼だったのでは?」
「そうですねぇ。あの場であなたが吐き捨てればそうでした。でも、我々にそういう気持ちを抱いてると、あなたは遠回しに仰ったので、逆に我々があなた方にとても無礼を働いたと知る事が出来たのですよ」
二人で話していると、船員の一人がスネイプニルを甲板にお散歩させても大丈夫だと教えてくれた。彼らは甲板上でずっと仕事をしているわけでもないので仕事や作業が終わると教えてくれる。
でもまた何かがあると直ぐに退去しないといけないが、少しでも馬達を外に出してやれるのは有り難い。
リリベルはお礼を言って王弟殿下とは一旦、別れてスネイプニル達を甲板に連れてくる。
サオリ達は今のところ、船内でも外でも大人しい。でも船や海の様子をとても観察しているように見ている。そんな時、何を感じているのか?話せたらいいのになぁって、やっぱり思う。
「サオリ、海に何かいるの?お魚は食べないでしょう?」
「君は食べることばかりだなぁ」
「ザック殿下」
セノビックがやって来たザック殿下に甘え始める。
「お!何だか久しぶりだな〜水遊びをねだられるの。お利口に大人しくしてるから遊んでやりたいけど、雨が降りそうなんだ。だから知らせに来たんだけど…そうか2頭は平気だよな?むしろ嬉しいか?!」
すごく良い天気だったのに、それからしばらくするとザック殿下が言ったように雨が降り出した。
私は屋根のある場所に移動したけど2頭は甲板の上ではしゃいでいた。通り雨だったみたいで直ぐに止んだけど馬達は自然の水遊びで満足そうだった。
「アイザック王子の天気予報はスゴイですね〜」
夕飯時にご長男が仰った。
「水属性の人は天気を読むのは上手いし早いんですよ」
「うちの水属性の船員もできるのかもしれないですが、彼は整備担当の方でずっと船内にいるからな〜」
「南のドラゴン達はもっと凄かった。近付く嵐だけでなく嵐が発生するのも感じるらしいんだ」
「そんなに早く分かるなら避けるのも容易いですね〜」
「ああ。国民は彼らが出す予報で嵐の備えをしていた」
「アイザック王子、寝る前にも天候を少し確認していただけないですか?夜は予兆を逃しやすいんです。私はまだ経験も浅いですし」
「今晩の夜勤は君なんだな。夕食後にデッキに出てみるよ」
リリベルも食後にスネイプニル達を連れてザック殿下と甲板に出る。
夜風は少し肌寒い。日中は陽が差して暑いが陽が沈むと急に寒くなる。夏場は寒流が南に向かって流れていると言うから、海の上は涼しくてとても過ごしやすい。
ザック殿下は空を見上げて雲の気配を探っているみたいだ。
私にはさっぱり感じないけどねと思っていると遠くの方で「ポンッポンッ」と音がして信号弾が上がるのが見えた。
花火のように白い火花が上空に上がり、高い所で「ポンッ」と音を出して弾けている。それが何発も。急に甲板は騒がしくなる。
「リリ、何があったか聞いてくるよ。スネイプニル達を頼む」
私は頷いてサオリとセノビックを呼び寄せてデッキの隅に向かう。
「サオリ、セノビック、先を航行していた他所の船が救助信号を送って来たの。船員達が甲板を走り回るかもしれないけど、船室に戻りたくなければ、ここで大人しく様子を見てよう?」
2頭とも状況を理解したのか大人しく従ってくれた。
一体、先を行く船に何があったのだろう?!




