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「私のことはキャシーでいいよ。カサブランカなんて大層な名前、私には似合わないからさ〜」
ご長女は、とてもサッパリとした明るい女性だった。
ご本人は否定するけど、凄くカサブランカのイメージにピッタリだ!
ルドベキアなんて、ちっとも可愛くなかったぞ!マギーさんは確かにマグノリアのイメージだけど。だけどこの国の人、植物名多いな〜とリリベルが思っていると…
「そうだ!父さん、私、結婚する!」
娘の急な結婚宣言にバニヤンが酒を吹いた。
幸い、被害は彼の衣服以外、誰もいない。
「どうしてそうなった?相手は誰だ?」
バニヤンは濡れた服ごと上着をバサっと脱いだ。
お〜ナイス腹筋!さすが船乗りだ。想像通りのイイ身体してる。
「ねぇ父さ〜ん!西の国に行った後に、帰りは西の大陸にも寄ってくれない?彼を紹介するからさ〜」
まるで近所かのように、めっちゃお手軽に言ってる!
船乗りってこんな感じなの?スネイプニルでもそこまでお手軽じゃないよ。
「まさか…今回の仕事で出会ったのか…」
バニヤンは大きく溜息を吐いて、副船長をこの場に呼んだ。
副船長はバニヤンより少し年上に見えるベテラン船乗りという感じの男性だ。恐らくキャシーのフォローというかお目付け役だったのだろう。
彼はこの場に呼ばれ、皆の前でひどく恐縮している。長旅でお疲れだろうに可哀想だな。
「主人、どうされたんで…?」
「カサブランカが結婚するとか言っているが、一体どういう事だ?」
バニヤンに睨まれ、彼の顔が青ざめる。
「お嬢!何、言っちまってんですか?!相手は王族ですが口先だけの男だって言ったでしょう!」
社交辞令を間に受けたってこと?だけど西の大陸の王族って、まさか…
「銀髪に紫眼なのか?」
ザック殿下の口から漏れる。
「違うぞ!黒髪に紫眼だ!」
やっぱり王族なんだね?って事は‥‥ザック殿下と目が合う。
北の国王が仰ってた、確か口八丁、手八丁の人達だ。
バニヤンは再び大きく溜息を吐く。
「父さん、溜息の分だけ幸せが逃げるぞ?」
「‥‥誰が私の溜息の原因かな?」
子育て乙だな。
「アイザック王子、リリベル妃、王弟殿下も悪いが…私はコイツらと席を抜ける。明日の予定は長男から聞いてくれ」
そう言ってバニヤンはカサブランカと副船長を引き連れて部屋を出て行った。
「…姉は、船長としての腕前は父の次に才覚があるのです。まだ若いから周囲はベテランで囲まれておりますが」
「早くから船に乗り、男達にまみれて生活しておりましたので、見る目はあると思っていたのですが…」
第一夫人もそのように仰った。
「でもキャシーちゃんは男臭いムキムキは嫌だって、いつも言っていたわ」
だったら船乗りは反面教師だな…。
今日は正式な場では無いとして、夕飯を第二夫人とお子様方もご一緒している。
「確かに西の大陸の王族は、口の上手い者が多いとは聞きましたが、まだ社交辞令とは決まってないのでは?あちらも本気かもしれませんよ?」
ザック殿下がフォローされるが、そうよね、口先だけだって断定するには早急過ぎるよね。
「黒髪紫眼の王子はすでに妻が3人くらいいるのでは?」
何気に王弟殿下は私達より情報をお持ちだった。
さすがに多夫多妻OKのこの国でも、大船団の長女ならNGか?
まあ彼女なら逆に多夫を迎える方だもんな。
「長女の最初の子は恐らく金の瞳になりますでしょ?金の瞳の娘や息子がぞんざいに扱われるのを、この国の者は黙っておりません。何かあれば国際問題になり、戦争も起こり得ますわ」
「金の瞳を持つ者の結婚は慎重でなくてならない」
皆が口々に仰る。
なるほど、金の瞳はフェニックスだものね。
昨晩はあのまま解散となったが、今日は朝からスネイプニル達に船を見せることになっている。
バニヤン一家とは船で落ち合うことになっているので、朝食後に私達はスネイプニル達の元に行く。
「サオリ、あ〜やっぱり砂まみれか。これから船を見に行くからキレイにするよ!」
とリリベルはサオリの体にブラシをかけていく。
船内にも入れて良いと言われているから砂はちゃんと落としとかないとね。
隣ではザック殿下もセノビックのブラッシングをしながら「セノビックは海も船もきっと見たよな。サオリは見たことあるかな?」と聞いてきた。
「見てるんじゃない?騎士達の任務で。それにノースポールにだって行ってるんだよ」
「そうか〜ノースポールって途中から陸地じゃなくて氷河なんだよな。凍ってても海か」
そう考えれば南国の海は初めてなのかもしれない。
2頭は火山の国の海と大型船に一体どんな反応をするのだろうか?
少し反応が楽しみかもしれない。




