父と母
アリシアは娘達をお茶に誘った。最初に現れたのはキャロラインだ。用意された二つの椅子に目を止め思案顔で近づいた。相変わらず用心深い子ね、とアリシアは思った。
次にエリアーヌがやって来た。キャロラインの姿を目にして直ぐに顔を綻ばせた。相変わらず素直な子ね、とアリシアは思った。
フリージアはいつものごとく出掛けているので誘ってはいないが、フリージアの気持ちは既に知っている。まさか自分を飛ばして夫に伝えるとは思わなかったが、その行動力が如何にもフリージアらしい。
先ずは二人に近況を聞いてみる。二人共、別邸での滞在を楽しんだようだ。エリアーヌはその後もお付き合いが続いている。キャロラインはジェラルドとの話を隠してはいるが、どこかすっきりした顔をしている。
実はジェラルドはキャロラインより先にアリシアに会った。アリシアも商売人としてのジェラルドには何度も会っているので、初めてではない。だが婚約解消に向け、先ずアリシアに連絡するところは交渉事に長けていると感心する。
アリシアはこれから二人に、婚約者を選び直したことを伝えるつもりだ。キャロラインはユリウスと。エリアーヌはクリストフと。
キャロラインはユリウスより自分が年上ということに戸惑うだろう。しかしユリウスは面倒見がよく、心優しい青年だ。特に他人に与える信頼感は抜群だ。ユリウスの側に居れば、キャロラインも次第に心を許すだろう。
エリアーヌとクリストフは言わずもがな、お互いに気がある。フリージアもユリウスも気づいているというのに、当の本人達は少し疎いのだろうか。それでも婚約をまとめてしまえば、お互い直ぐに意識するだろう。
ジェラルドを逃して夫は惜しいと思っているかもしれないが、こちらもアリシアはあまり心配していない。というのも、ジェラルドはフリージアをとても気に入っている様子だからだ。ただ、フリージアを捕まえるのは至難の技だ。お手並み拝見といこうかしら。
アリシアは微笑んだ。娘達は一体どんな反応を示すだろうか。
初めて授かった子は妻によく似た女の子だったので、とても嬉しかった。妻と同じように美人になるだろうと思った。だから最高の環境を用意した。キャロラインはしっかりした子に育った。我儘を言わず、我慢強かった。肩に力が入っていたのかもしれない。苦労しない相手を見つけようと思った。
二人目も女の子だったが、どことなく自分に似ていた。妻の反応が気になったが「貴方と同じように格好いい子になるわ」と喜んでいた。フリージアは何にでも興味を示した。そして興味を満たすためには、努力を全く厭わなかった。だから出来るだけ希望を叶えてあげようと思った。
三人目も妻によく似た女の子だったが、上の子達に比べ体が一回り小さかった。成長も遅く、大事に育てなければと思った。エリアーヌは病気がちで、それ故、世間知らずなところもあったが、滅多に顔を会わせない自分にも笑顔で抱きつくような子だった。この先も見守ってくれる人が側にいて欲しいと思った。
そして目論見は外れたわけだが、これまで自分の思うままに事が運んだことはない。物事は常に変化し続けているのだ。今回は妻がその変化に修正を加えた。妻の決断には大いに感謝している。
人生は往々にしてままならないものである。だからこそ願わずにはいられない。幸せに、と。
行くしかないわ。
キャロラインは息を吸い込んだ。
王家主宰のパーティーを欠席するわけにはいかない。婚約者のユリウスも出席するつもりでドレスを送ってきたのだ。噂の的になりたくはないが、ユリウスが側にいてくれれば心強い。
楽しみだわ。
フリージアはにんまりする。
王家主宰のパーティーなら出席者が桁違いだ。久しぶりに会う人も多い。どんな出会いや話題が待ち受けているのだろう。フリージアは待ちきれない。
変じゃないかしら?
エリアーヌは心配になる。
王家主宰のパーティーを欠席するわけにはいかない。婚約者のクリストフも出席するつもりでドレスを送ってきたのだ。ただクリストフとは身長差があるので、大人と子供に見えたりしないかと思ってしまう。
ここは三姉妹が住むヴォンドル邸。それぞれのドレスを前にそれぞれが準備に余念がない。
おつきあいいただき
ありがとうございます
白石 透




