ジェラルドの訪問
別邸にジェラルドが訪れた。
フリージアを見るなり「君もいると思ったのに」と声を掛けた。手紙には領内のパーティーに出席すると書いてあった。そのパーティーにフリージアもいると思ったのだろう。
「完成した時は見に行ったわ」
「見違えたよ。素晴らしい港になったねえ」
近くにある交易の港を整備していると、キャロラインもフリージアから聞いたことがある。
「君達も見に行ったかい?」
ジェラルドはクリストフとユリウスにも話を振る。
「落ち着いたら訪れる予定でいます」
港の事情を知っているのかユリウスが代表して答える。
「それがいいかもねえ。今は有象無象で埋め尽くされてるよ」
ジェラルドの話しぶりから、大きなパーティーだったのだろう。交易の港であるので常に船や人が行き交っていて、異国の者もいると聞く。繁華街もある大きな街である。エリアーヌは勿論だが、キャロラインも訪れたことはなかった。
六人が顔を揃えるのはヴォンドル家のパーティー以来だ。今回は自然に談笑が始まった。クリストフは初めて海を見たことを話し、ユリウスは市場で売られていた魚介を話題にした。フリージアは馬車が壊れ、一晩野営したと話した。その話にエリアーヌは目を輝かせながら聞き入った。「侍女を守るのは主人の務めよ」というフリージアの言葉に大きく頷いて、「言葉通りに受け取らないように」とユリウスに注意を受けた。どの話にも花が咲いた。ジェラルドがいると話が拡がってゆく。
ふと、ジェラルドがニヤリと笑みを浮かべながらユリウスの方に顔を向けた。
「君は優秀だねえ」
「…恐れ入ります」
ユリウスは無難に返したが、フリージアは横を向いて吹き出す。
ジェラルドも笑った。
「まさか、そんなに大胆じゃないよ」
ジェラルドの発言に、クリストフはぎょっとしてフリージアを見る。
「貴方が商売人でよかったわ」
今度はユリウスが鋭い視線をフリージアに送る。
エリアーヌはきょとんとしている。ジェラルドとフリージアだけが笑っている。キャロラインは男の世界の話だろうと思った。幼い頃から父に付きまとっていたフリージアにはわかるのだろう。
港に宿泊しているからと、ジェラルドはおしゃべりだけして席を立った。最後は婚約者らしく見送りに出たキャロラインの手を取り「次は二人っきりで」と言って馬車に乗り込んだ。
キャロラインの背後で話し声がする。
「ふふ、忙しない人ね」
「彼だけではないだろう」
「忙しくなるな」
ユリウスのため息が聞こえた。
キャロラインは少し寂しさを感じた。自分はジェラルドの考えを理解できない。彼の仕事を助ける事もできないだろう。そしてジェラルドはフリージアのことをとても気に入っていると感じた。




