晩餐会
フリージアからお茶に誘われた。普段はフリージアの方も関わってこないが、領地に招待した手前、もてなそうとしているのか。気が進まないが、海を見渡せるというので誘いを受けた。そしてユリウスは耳を疑った。何故俺も?と視線を投げかけるとクリストフは頷き、フリージアは「食事に招待するわ」ともう一度繰り返した。
海の見えるガゼボにフリージアとクリストフ、ユリウスが座っているのが見える。フリージアは海の方を指で指し示している。何か説明しているのだろう。聞き手はユリウスだろうか、頷いたり何かを言っている。クリストフは背もたれに身を任せ、海の方を向いたままだ。三人を眺めていると、こちらにものんびりした雰囲気が伝わってくる。
エリアーヌは羨ましいと思った。エリアーヌは他領に住む友人に会いに行ったり、領地に招待したことがない。ましてや異性の友人とも一緒に遊んだことがない。エリアーヌの交友関係はまだまだ狭い。
キャロラインにそう言うと、キャロラインは苦笑した。
「エリアーヌはこれからよ」
「そうかしら…」
今のエリアーヌにはまだピンとこない。
「ユリウス様と出掛けてみたらどうかしら」
そう言われてユリウスと出掛けることを想像してみる。なんだか緊張してきた。ユリウスは婚約者ではあるが、それ以前に友人の様な仲でもない。なんというか、そう、先生のような感じだ。いろいろダメ出しもされたが、指摘された事を学ぶことで、発言の本来の意味や、受け答えする時の言葉の選び方など、気付きがあったり理解が深まった。指導は厳しいが出来れば褒めてくれる、うん、先生だ。
「案内出来なくて申し訳なかったわ」
席に着くとフリージアはそう切り出した。
「馬車が壊れたなら、大変だったな」
「野営して一晩過ごしたの」
ここへ来てから視察だの野営だの、およそ令嬢とはかけ離れた言葉を耳にしているが、ユリウスは黙っていた。クリストフは騎士らしく獣への対策について質問をしている。色気のない会話だ。そういえば、とユリウスは思い出した。社交界デビューのパーティーでフリージアとクリストフがダンスをした。とても息の合ったダンスで、背の高い二人は絵になった。周りから感嘆の声が漏れたが、全く色気がなかった。
「お詫びにヴォンドルの海の幸を楽しんで欲しいわ」
フリージアの言葉を合図に食事が始まった。
食堂ではキャロラインとエリアーヌが席に着いた。エリアーヌは今頃三人は食事を楽しんでいるのだろうか、と思った。そしてユリウスとはまだ正式な会食をしたことがない事に気づいた。一気に不安に襲われる。キャロラインに食事のマナーに自信がないと伝えると、キャロラインは微笑んだ。
「では一緒にレッスンをしましょう」
「はい。お姉様」
エリアーヌは元気よく答えた。今はまだ何事も勉強中の身である。しっかり学び少しでも自信をつけたいとエリアーヌは考えている。
確かに海の幸だ、とユリウスは思った。大きな海老や蟹は食べたことがなかった。貝の種類も多い。新鮮な魚の身は張りを感じる。変わった食感の料理もあったが、フリージアの説明はわかりやすく興味をそそられる。クリストフも頷いては食べ、質問しては味を堪能している。珍しい料理ばかりで、デザートを食べ終わるまで話題に事欠かなかった。食後はフリージアも少しだけワインを飲んだ。ユリウスは先に退席しようと思ったが、部屋にワインを一本欲しいというクリストフの希望によりあっさり閉会になった。




