Chirping chorus
何故、一日は二十四時間しかないのか。作者は真理に辿り着きました。八時間寝て、八時間働いて、八時間自由なことに使う。これこそが、人間の幸福! ……これ、イギリス産業革命のスローガンを少しもじったけれど、果たされましたか?
「……もぐもぐ」
アリアが口に朝食であるパンを咥えて、眠そうに目を擦る。口から飛び出る挟まれた野菜によって、食べている様子が山羊に見えなくもない。
「寝る、食べる、歩くと……忙しそうね」
人が消費する殆どの時間を一度に消費できるなら、何と効率的ではないだろうか? 効率という言葉はあまり好きではないけれど。
「ふへぇほー、んぐ……早く村に下りたいんだもん。今年の聖女さんがどんな姿か気になるよね?」
はみ出したものを無理やり手で押し込んだアリアに、私は抱えていたバスケットから手を拭くものを渡した。
「気にならないと言えば、嘘になるけど……楽しみの一つでしかないわよ。私としては、アリアがそっちに興味を持っていたことが意外だわ。食べ物ばっかだと思ってたわよ」
心外だという感じで、アリアは私の顔を覗き込んで、頬を膨らましている。
「私だって、服ぐらいに関心はあるよ。逆に、フィーちゃんがなさすぎるな! 今度お母さんと話してみると良いよ、いつもフィーちゃんを見て何か言いたそうだったから」
「母さんが……そんなものなのかしら。暇な時に聞いておくわ。それより、まず何処を見るか決めた?」
祭り用にまとめられたパンフレットを開いて、アリアの前で見せた。
「勿論、良い匂いのする屋台からだよ!」
「そうだと思ったわ……ちゃんと、お小遣いの残りに気を付けてよ?」
鬱蒼と茂るこの森は私たちに暖かな陽射しを届けてくれた。
*
森を抜けて、坂を下っていくと、お婆さんが腰を屈めて庭の野草を摘んでいた。
「お婆さん、おはよー! 来年もよろしくね」
「あら、わざわざ挨拶してくれてありがとね。でも、その顔からして、何か聞きたいことがあるのかしら?」
穏やかに微笑むお婆さんに、私たちは困惑していた。まだ早い時間とはいえ、その様子がいつも通りだから。
「お婆さんは祭りの方にいかないの?」
アリアが率直に、その疑問を口にすると、お婆さんは少し間を置いて答えた。
「……ああ、私はあの場の雰囲気が好きじゃないんだよ。楽しむ分には、ここからでも充分だからねぇ」
「そうなんだ……でも、今回はいつもより凄くなるよ! なんせ、私たちが祭りを更に賑やかにするから」
手を胸の前で強く握って、強く訴えるアリアに、お婆さんは苦笑いをしながら返した。
「それは楽しみだね、ここからでも見守っているよ」
*
「——お、きたな」
「皆さん、おはようございます。今日は一緒に頑張りましょうね!」
坂の下までくると、そこではロデルとベラがわざわざ会いに来てくれたようだ。淡白な反応のロデルとは正反対に、ベラは私たちを見て頬を緩ませながら両手を挙げて出迎えてくれた。
「ええ、おはよう。……どうして、ベラはそんなにも嬉しそうなの?」
出会ってから暫くして、彼女がおどおどとするような事は少なくなったが、私たちに会えるだけで余程嬉しかったのだろうか。
「あれ? 知らないんですか?」
きょとんとした顔でいるベラの様子を見て、こちらも暫く困惑していた。その沈黙の間に、ロデルが何かを察したのか、軽く息を吐いた。
「……ああ、こいつの叔母さんが今年の聖女役に選ばれたんだよ。村にいたら聞く話だから、こいつも忘れてたんだろうよ」
「そうなんだ! どんな綺麗か気になるよね、フィーちゃん!」
少しの間が空く前に、アリアが目を輝かせて、私の手を取った。
「ええ、そうね……でも、アリアはまず屋台に行きたいんじゃなかった?」
「もうその話はいいよねっ?! さあ、二人に案内してもらおう」
私の手を無理やり引っ張って、先に進もうとするアリアに私たちは苦笑して、彼女を追いかけた。
人の豊かさって、自由時間にあると思うんですよ。
その時間を如何に有意義に使おうとするか、それがポップカルチャーに繋がっていく……時間ってのは、金を得られますが、金では買えないんですよ。
と、作者は適当なことを言います。証明はしてないから、仕方ない。幸福の測り方なんて、まだ編み出されてないからね。
さらに、時間は買えないって上で言ってるけど、遊園地で優待券を買うという形で間接的には買える。まあ、その分お金がかかるんだけど。
冬もいつかは明けるように
心を覆う堅氷も、きっといつかは溶けてなくなる
だから、私たちは厳しい寒さも乗り越えられる




