Show your hand
作者は好きなんだけど、木を削ったりして彫刻するのは難しいよね。特に木だと、ささくれのように剥けちゃうから……
部屋に近づいてくる足音に、つい息を潜めて毛布の中に隠れてしまう。心臓が鳴り止まず、また動き出した音を聞いて、肺に滞留した空気が抜けた気がする。
「……行ったよね?」
「……うん、大丈夫そうよ」
「んっー、けほっ、……し、死ぬかと思ったよ。フィーちゃん!」
アリアお姉ちゃんは口を塞がれていたからか、少し恨めしげにフィーネお姉ちゃんを見る。
「……うわ、安易に口を塞ぐもんじゃないわね」
当の本人は汚れた手を拭き取り、何食わぬ顔で話し合いを再開した。
「捧げ物はこの手で作ったものでないといけない……だからといって、中途半端なものを渡すのは流石に失礼よ」
「聖女様に捧げる供物は何が相応しいんだろうね? 僕たちに作れるもので……」
先ほどから散々議論して進まない案件。意見は多く出るが、どれも供物としては今一つ確信を得るものは上がっていない。
「料理なんて、村の人たちの方が上手いはずよね。面白みに欠けて、陳腐でしかないわ」
思い付いたというより、取り敢えず口にしただけの意見が呟かれる。
「……フィーちゃんは意見があるだけ良いよ。私なんて、送れるものがないから。賑やかしになるしかできないんじゃない?」
既に詰まりを見せている状況で、アリアお姉ちゃんはベットの上で上半身を伸ばして、だらしなく埋もれている。
「思ったんだけど、供物は形があって、残るものじゃないとダメなの?」
ふと、そんな事を疑問に思った。僕たちの腕では、細かな造形を作って送ることなど出来ない。そもそも村には器用な人が何人もいるだろうから、子どもが作った工作などが超えることなど、普通ならありはしない。それは料理と同じことだ。
だから、僕たちにできるのは大人よりも柔軟な思考で奇抜なものを選ぶしかないと思う。
「そうね……でも劇とかは諦めなさい。明らかに人数も、人数も、道具も足りないから」
どうやらお姉ちゃんたちの稽古を見せるという手は使えなさそうだ。僕の主観だけど、村の人たちがそれを見たら、小銭を投げてくれると思う。
……それは本命ではないので、白紙に戻すとして。
「形にして渡さなくても良いなら、一つだけアイデアがあるよ」
二人の視線が集中して、言葉には出てないが続きを促した。
「お姉ちゃんたちは“花火“って聞いたことある? 東の国では祭りの時に使われるらしいものなんだけど」
「知ってるけれど、火薬は簡単に手に入らないわよ。きっと取り寄せるにも時間がかかるし、そもそも素人が手を出して良いものでもない。そんな危険なもの、どこで知ったのよ?」
花火は火薬が必要なのか……うん、その方法は明らかに無理だと思う。この村で銃を使う人なんて、一人もいないから。
「必要なのは火薬じゃないんだけど……というか、フィーネお姉ちゃんは何で知ったの? 花火についてなんて、紀行本以外になかったと思うけど」
「……どこで聞いたか忘れたわ。おおかた父さんか、お婆さんだと思うけど。……うん、そんなことより、火薬を使わないなら何を使うのよ」
少しはぐらかされた気がするが、今は聞いても時間を捨てるようなものだ。
「確かに材料は必要だけど、それは錬金術を使う為のもの。複雑なことではないから、材料もそこまで必要じゃないよ」
……少しずるいと思うけど、お父さんにねだったら資金の面は問題ない。
「ねえ、二人とも……私、話し合いに付いてけないよ」
「大丈夫よ、私もよく分からないから」
不安そうにアリアお姉ちゃんは裾を引いて、それに気付いたフィーネお姉ちゃんも若干困惑している。
「あっ、ごめん。僕は錬金術の反応によって生じる光を使って、花火に見立てようと思うんだけど……どうかな? 火は使わないし、危険性もないと思うから」
二人が口を開けたままの表情を見て、まるで奇術師にでもなった気分になった。じゃあ、次に手札を公開しようか。
少し関係のない話だけど、花火は夏の風物詩で…何処か日本のものって雰囲気あるけど、花火自体は昔から世界各地であるんだよね。火薬は中国の発明だから。
……で、次は錬金術だけど。これは呪術ほど長ったらしくない。一言言えるならば、ぶっ飛んだ錬金術ではない。等価交換というか、質量保存の法則というかはあるけど。
人は誰しもカードを持っている
手札の数は人それぞれ
カードの力も、それぞれのカードで決まる
大事なのは駆け引きだ
手札をただ出し切って、相手を翻弄させるのも
持っているものの価値を誤認させるのも良い
これこそが、人が生み出す知恵の結晶だ




