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シルシナキセカイ  作者: 徘徊猫
 On a holy night with bouquet
19/28

in a roundabout way

 夜道は怖いから、全身から光を放てば無敵だね

 日は既に没して、家の灯りが付いていく。暗闇を窓越しに見ながら、そんな風景を幻視した。

 手元には読みかけの本があり、それを照らすのは近くにある蝋燭の火だけ。静かでも、暖かな時が流れていく。


 「そんなに顔を近づけてどうしたの? アリアお姉ちゃん」

 アリアお姉ちゃんは本の内容を窺うようにして顔を近づけていた。その長く伸ばされた髪が、僕の肩にかかるくらいに。

 「わっ、気付いてたの? 私の方が驚いちゃったよ」

 その大きな瞳をぱちくりと瞬いて、その驚きを目に見えて伝わってきた。


 「リューくんの読む本が気になっただけだよ。正直、リューくんやフィーちゃんが羨ましいよ。本を読んでも、寝ずに見ることができるなんて。到底私には出来な——いたっ、痛いよフィーちゃん!?」

 「あんたが余計な話を続けるからでしょ。次は角いくわよ」

 アリアお姉ちゃんの背後で、フィーネお姉ちゃんがその頭に片手に持てるくらいの本をぶつけていた。

 今も半目になって睨み、アリアお姉ちゃんに次の言葉を急かしている。トントントン、と本の角を手に軽く当てる音が響く。


 「酷いよー、フィーちゃん……こほん、リューくんは祭りに興味ないかな?」

 咳払いをした後、お姉ちゃんは人形遊びをした時のような口調で尋ねた。……地味に上手いから、何とも言えない気持ちになる。


 「興味はあるよ。話で聞いても、実際とは違うだろうし……でも、村の人たちに迷惑になるのは困るな」

 悪目立ちして、折角の雰囲気が台無しになるのは嫌だし、祭りの趣旨にも僕は不適合な気がする。何事にも適切な距離感があり、一定のルールがある。それを破ろうとするならば、相応の代価を支払わなければならない……そして、その代価を自分が払えるとは限らない。


 「お姉ちゃんたちの気持ちは嬉しいけど、今でも満足してるから——」

 ——それ以上は望まない。と、言いかけたところで、アリアお姉ちゃんが僕の手を取った。

 「ダメだよ、リューくん。そんな小さなところで閉じこもろうとするのは……きっと、その選択肢を選ぶことが癖になって、気付いた時には体を動かせなくなっちゃう。差し伸べてくれる手はいつも気まぐれで、恐ろしいものだから」

 「で、でも……」

 どちらが良いかなんて、考えなくても分かる。しかし、体は……意思はつい尻込みしてしまう。


 そんな僕の様子を見て、アリアお姉ちゃんは顔を近づけて、

 「むぅ、『でも』の先にあなたはあるの? もしないのなら、あなたの足で踏み越えて欲しいよ。……ああっ、やっぱりこういうのは苦手だよ! フィーちゃん、あとはお願い」

 不満げに口を膨らませて、フィーネお姉ちゃんの方を見た。その様子に肩をすくめて、フィーネお姉ちゃんの手は既に本を膝まで下ろしていた。

 「ふっ、しょうがないわね。……フリューゲルは気にしすぎなのよ。祭りなんて、どんちゃん騒ぐ以外の目的でやらないでしょ? 誰も特に言わないし、誰も紙に書こうとすらしない。”慣習”と呼ばれれば大層だけれど、どんなものも始めは規則なんてなく、ただ美しいものをまた見ようとしただけのはずよ。後からつけられた規則という型に囚われる必要はない。結局、祭りなのだから、楽しめれば良いのよ」

 それは酷く暴論な気がする。祭りという言葉を全てひとまとめにして、その全てのしきたりが下らないと投げ捨てられたのだから。


 「……はぁ、頑固ね。私からの命令よ、とにかく祭りには参加しなさい。うだうだ言ってるのも飽きたわ。勿論、姉の言う事は聞いてくれるわよね?」

 「……そうだね、うん。お姉ちゃんの命令なら仕方ないか」

 言い訳はもうやめよう、お姉ちゃんが折角の大義名分をくれたから……いつの間にか笑っていたのは多分、僕はいつも通りに誘われるのを待ってたからかもしれない。


 「さっ、あいつらよりも凄いのを作って、見返してやりなさい!」

 「――えっ?」

 思ってもみなかった言葉に、僕はただ呆気にとられていた。

 暗き夜道で手を引いて

 あなたがいれば迷わないから

 暗き夜道で手を引いて

 あなたのいる場所は眩いから

 あなたの隣が私の居場所

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