The lie will be revealed right away
誰もが飛び込まない泥沼に私は飛び込む
そう、私はファーストペンギン……
そんなくだらない事を考えて、
無言のままポチャンと落ちるまでがワンセット
「お前らやっと帰って……おいおい、どうしてそんなに汚れてるんだ?」
家の前で待っていた父が私たちに気付くと、釣り上がっていた眉が途端に下がった。
「えっと、それは……」
「中々足の抜けない沼に嵌っちゃてね! すごく大変だったんだよ、お父さん!」
私の声に割り込むように、というか物理的に割り込んでアリアが遅くなった言い訳を口にする。
「沼? 水溜りにでも足を突っ込んだのか? にしては、全員汚れているが……」
泥だらけになった私たちを父は訝しげに見詰める。
実は、ありとあらゆるところにベタベタと付いた泥は、帰り道でわざと付けたものだったりする。
「……ま、子どもだしな泥遊びくらいはするか。だが、門限を守れなかったことに変わりはない。フィーネとアリアは俺の部屋に来い、体を洗った後でな」
先に家に入っていた父を見送り、私は二人に耳打ちする。
「……ね、言ったでしょ。こうすれば、一時は誤魔化せるって」
「流石フィーちゃん、策士! でも、この手は二度も使いたくないよ。服が汚れちゃうから」
私だって、二度も使いたくはない。でも、木を隠すなら森の中が最適だろう、
「お姉さんたち、ごめん。僕のせいで父さんに呼び出しもされてたし……」
「いいのよ、父さんは甘いから……ま、精々十数分拘束されるだけよ」
泥を落とす為に、鍛錬の後水浴びする場所で服を脱いだ。それを桶に入れて、力任せに石鹸を擦る。
……洗濯機、洗剤すらもないから、昔話のお婆さんのようにするしかないのだ。
「はぁ……残るわよ、これ」
手加減なく汚したのがいけなかったらしい、広範囲に飛び散った泥が中々落ちない。
「ふふっ、でも楽しかったよね」
手元に向けていた目が、自然とアリアの方に向いていた。
「……手が止まってるわよ」
「はーい、分かってますよー!」
私のぶっきらぼうな返事に、顔まで泥の付いたアリアの口角は上がっていた。
*
体を洗い、新しい服に着替えて、父の部屋までアリアと共に来た。
「それで、父さんは何で私たちを呼んだの?」
本当に説教をするなら、家の前で済むはずだ。……フリューゲルの前では十数分と言ったが、ずっと説教の話なら私は父を甘いと言わない。
「そりゃ、フリューゲルの足に打撲の跡があったからな。これでも元は騎士だったんだ、怪我の見分けくらいできる。……何があったか、教えてくれるか?」
私は事のあらましを父に話した。詳しい事は知らないので、アリアと細かい部分を擦り合わせながら。
父は暫く目を閉じて沈黙した後、
「……確かに村の子らは外に慣れてないからな。だからと言って、俺の息子に手を出したことに変わりはない。……その解決に、俺の力は必要か?」
私たちの瞳を見て、私たちの意思を確認した。
「いや、父さんは家で待っていて。多少懲らしめても、私たちの目の届かない所で何かを企むだろうから。この問題は……まだ根深くない。今は村の子との溝を埋める為に時間を使った方が、遺恨も残らない」
いじめっ子たちも、フリューゲルに興味を持ち始めた段階だ。単純なうちに解決するに、力技では……他人の力では複雑にしかねない。何よりフリューゲルも、それを望んでいない。
「……ごめん、私もみんなと仲良くなれるように付いていたんだけど。それも間に合わなかったね」
とにかく私たちは村との交流が少ない。それには……様々な事情があるが、現状を嘆いても仕方ないのだ。
「あんたは誰よりも早く動いた。それだけで褒められること。なんで俯くのよ」
そもそも村に行かなければいじめられなかったのか、そんなこと考える必要もない。どちらにしても、あと少しで私たちは村の学校に通うことになる。
その為に、予め動いた彼女を責めることがあって良いはずがない。
「……ふふっ、そうだね。フィーちゃん、ありがとう」
「まだ感謝を送り合う時じゃないわ、あんたも意見を出しなさい。絶対にあいつらを後悔させてやるんだから」
作者は服が泥まみれになるまで遊んだ記憶はないけど、
精一杯遊んだ記憶なんて、意外と残らないものだと思う。
嘘の味は蜜の味
真実を蜜で塗りたくって、味を調整する
人は辛すぎるものや苦すぎるものが苦手だから
でも、喉が渇いた時には余計喉を乾かさせるの




