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クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
T―締めくくる。ナイツ
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天ちゃんの日常


 ……はい、皆様こんにちは。突然ですが、今日は私の日常について話したいと思います。え、私が誰かって? し、失礼しました……! 私の名前は一片天。はい、瞳お兄様の妹です。本当はお兄様の魅力について四時間ほど語りたいのですが、諸事情により私の日常生活が主題となりました。―――こほん。それでは、私の何気ない日常、始まります。



「んっ……」

 朝。誰に起こされるでも、目覚まし時計を使うでもなく、毎日四時半に起床します。起きてからは身なりを整え、晴れている日は庭で走り込み、雨の日は地下の道場で瞑想と剣術の自主鍛錬です。特に、私の場合は銃剣使いなので、剣の稽古は欠かせません。

「ふぅ……」

 一時間ほど稽古に励んだ後、お風呂で汗を流して、それから朝食です。と言っても、家人全員の食事を作るところから始めるのですが。

「えっと……お味噌汁の実は、豆腐と若布にしましょう」

 大抵は、予め炊いておいたご飯に、お味噌汁と、焼き魚、それから御浸しという献立です。お味噌汁と御浸しを作ってお魚を焼くだけですが、何せ人数が多いので、結構大変です。

 作ったら配膳して、全員で朝食です。食後は食器の後片付けなどをして、その後に学校へ向かいます。学校は家から近いので、ぎりぎりに家を出てもどうにか間に合います。

「あ、一片さん。おはよー」

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます」

 校舎に入ると、色んな方に挨拶されます。他の生徒は勿論、先生方や事務員の方々にも。ここが学費の高い私立校だからかもしれません。……家人たちは、少々見栄を張っているのか、金銭的に無理をして、私をこの学校に入学させました。しかし、私だって一応は一片家当主です。傀儡とはいえ、家にそんな余裕がないことくらい承知しています。ですから私は、成績優秀者にのみ権利が与えられる特別奨学金を頂いて、この学校に通っています。この奨学金は、好成績を維持する代わりに、実質的に学費が免除されます。しかし、それは並大抵のことではなく、日々の弛まぬ努力の結果だと、周囲の方は言って下さいます。……尤も、お兄様には未熟だと笑われてしまいそうですが。



  ◇



「一片さん、一緒に帰ろう?」

「あ、申し訳ありません……今日は剣道部に顔を出さないといけない日なので、一緒には帰れないんです」

 私は剣道部の所属(一応部長)で、普段からあまり顔を出せていないのですが、たまには出席しないと部員に示しがつかないので、週に二日は練習に参加しています。そして、今日がその参加する日なのです。

「そうなんだ。じゃあ、頑張ってね」

「はい。この埋め合わせは必ず……」

「いいって、そんなの」

 級友の方たちは気さくで優しくて、いつも私を気遣ってくれます。それがとても嬉しくて、けれども、同時に恐縮してしまいます。

「っと、早く行かないと……」

 教室の清掃とゴミ袋の交換、溜まったゴミを所定の場所に移してから、私は剣道部の部室に急ぎました。



  ◇



「ふぅ……遅くなってしまいました」

 部活が終わったのは夕方。部活に出るとついつい長居をしてしまうので、学校を出るのが遅くなります。一応鍛錬も兼ねているので、時間のやりくりに支障は出ないのですが……。

 それからは食材の買出しと、帰宅後は夕食の用意です。お夕飯はそれなりのものを作らなければならないので時間も掛かり、帰り道では心なしか足早になってしまいます。

「ただいま戻りました」

 帰宅しても、私を出迎えて下さる方はいません。今までは、時々お兄様が出迎えて下さったのですが……いいえ、これしきのことでくよくよしていては、お兄様に顔向け出来ませんっ! 気を取り直して、夕食を作るために台所へと向かいます。



  ◇



 夕食を用意した後は、家人全員での食事。その後片付けをしてからは、夜の鍛錬です。霊術や霊銃を用いた対霊戦用の訓練は、夜にするのが我が家の慣例となっています。

「三日月」

 今日は、霊銃を使っての射撃訓練と、銃剣状態での剣戟訓練です。特に、三日月の銃剣形態には刃の形状が独特なので、普通の竹刀だけではうまく扱えません。だからこそ、霊銃本体で訓練する必要があります。



  ◇



 鍛錬の後は、入浴を済ませて就寝です。ですがその前に、日課でもある、日記を書く時間を取ります。

「えっと……今日は、と」

 その日あったこと、鍛錬の内容など、取り留めのないことを書き連ねていきます。この日記には、私が生きてきた全ての時間が、事細かに記録されているといっても過言ではありません。

「……ふぅ」

 日記を書き終えたら、布団に入ります。……ここ最近は、布団の中でお兄様のことを思い出してしまいます。幼い頃は一緒に寝ていたのですが、物心ついた辺りからは、話すことすらなくなりました。ですが、お兄様の温もりは、今もこの身に刻まれています。

「お兄様……」

 今は離れ離れとなってしまったお兄様を想いながら、私は眠りに就くのでした。



  ◇



「……」

「何読んでるんだ、一片?」

 あの日の夕方、居酒屋『虹化粧』の住居部分にて。一片が、自分宛に届いた手紙を読んでいた。そこへ通り掛かった狼は、彼の様子が気になった模様。

「天から手紙が届いてな」

「妹から? なんて書いてあったんだ?」

 狼が尋ねるも、一片は早々に手紙を畳んで、懐へ仕舞ってしまう。どうやら、内容を教える気はないらしい。

「……ちゃんとやれているようダナ」

「なんか言ったか?」

「いや」

 彼の呟きは聞き取れなかったものの、狼には、一片の内心が理解できた。何故なら、一片は珍しく、その顔に笑みを浮かべていたからだ。

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