↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
T―締めくくる。ナイツ
31/36

ねこねここねこねここねこ


 ……温泉日帰り旅行から一ヶ月ほどが経過して。


「サービスカットの次は、やっぱり濡れ場だよね」

「いきなり何の話だよ?」

 普段の学校、普段の教室、普段の休み時間にて。闇代が狼に向かって、突然そんなことを言い出した。

「だって、この前はサービスカットだったし、今度は濡れ場で行くべきだと―――」

「その前に、お前が俺と絡むと大概(血)濡れ場だからな」

「絡むだなんて……きゃっ!」

「……(怒」

 闇代の台詞が気に障ったらしく、狼が静かに拳を固めている。まあまあ、闇代の戯言なんていつものことなんだから……。

「狼君といちゃいちゃしたり、ねちょねちょしたりは望むところなんだけど、そうじゃなくてね。もうちょっとラブロマンスみたいなシーンが欲しいなって」

「何で俺が、お前とラブロマンスしないといけないんだよ?」

 はい、読者の皆さん。これがあの「ツンデレ」という奴です。テストに出るのでよく覚えて置くように。

「そうだよっ! 狼君と―――(自主規制)―――するのは私なんだからっ!」

 いつの間にか会話に入ってきたのは、下級生の教室に沸いて出た、二年生の美也。相変わらず卑猥ワード全開である。

「あのー、お三方、いちゃいちゃするのはいいとしても、休み時間の教室で―――(自主規制)―――とか叫ぶの止めて欲しいんだけど……」

 苦言を呈したのは、狼とは席が隣の氷室。いい加減この光景にも慣れたようだが、さすがに―――(自主規制)―――は突っ込まずにいられなかったか。

「……はぁ」

 今日も色々苦労する狼であった。



  ◇



「……で、どうしてこうなった?」

 放課後、帰宅した狼を待っていたのは、筆舌に尽くし難い状況だった。

「にゃ~ん」

「うにゃ~ん」

「……」

「一体、どうしろと……?」

 無論、言葉に出来ないから『筆舌に尽くし難い』なのだが、それでもこの状態を表そうとするなら、『猫カフェ』だろうか。しかし、この場合の『猫』とは、英語で言うところのキャットではないが。

「ね、ねえ、何が起こってるの……?」

「何か、新しいプレイなの?」

 共に帰宅した闇代も戸惑いを隠せないようだったが、一方何故かついて来た美也は平然と、っていうかワクワクしている。……まあ、それはある種、生活環境の差だろう。

「あ、狼に闇代ちゃん。おかえりなさい。それから美也ちゃんも、いらっしゃい」

 半分ほどがフリーズ気味な彼らを出迎えたのは、狼たちの保護者である優。因みにここは、優が経営する居酒屋『虹化粧』の店舗部分。しかし今は、居酒屋ではなく『猫カフェ』になっているが。

「……おい、この事態について、詳しく説明してくれ」

「と言われましても……私もよく分からないんです」

 そう言って優は『猫』―――何故かそこにいる戸沢と、その膝に擦り寄るさみを見やった。その隣には、同じく紗佐に擦り寄られた一片もいる。さっきの鳴き声は、彼女たちが発していたものだ。

「ともかく、状況が分からんから何らかの説明を」

「そうダナ」

 狼の言葉に、一片は溜息混じりに話し始めた。

「俺は放課後、所用で上沼紗佐と共に行動していたのダガ……。突然この有様になって、とりあえずここまで来た。因みに、こちらの二人とはその途中で合流した」

 そう言って、彼は戸沢とさみを指差す。すると戸沢も、溜息混じりで説明を始めた。

「僕らもそんな感じだ。一緒に帰っていたら、何故か彼女がこんな風になって、まともに動けないから仕方なくここへ立ち寄ったのさ」

「ふーん、『彼女』、ね」

「……言っておくが、三人称として使ったからな」

 まあ、そこに食いつくと長くなるし逸れるから、本題に戻して欲しい。

「それで、女の子たちが文字通りにゃんにゃんしてる、と」

 美也の言う通り、紗佐とさみは『にゃんにゃん』と、それぞれが想いを寄せる男子に甘えていた。一体、何が起こったのか。

「何か、前兆みたいなのはなかったのか?」

「ないな」

「あったらとっくに言っている」

「それもそうか」

 しかし、それでは話が進まない。せめて、何が起こったのかくらいは知りたいものだ。

「おっと、電話みたいです」

 と、変なタイミングで店の電話が鳴り、優が応対に出てしまった。

「さて、どうしたものか……」

 急に頭が痛くなってきたが、それは気のせいだと思いたい、狼であった。



「はい、もしもし牧野です」

 店の奥に取り付けられた黒電話が鳴り響き、やって来た優がその受話を取った。

《あ、お優さん? ちょっと聞いてよ大変だよ~!》

 電話の相手は、若手女性刑事、小宮間舞奈。優の知人で、この前起こった隕石衝突事件の際にも、陰で色々と関わった人物である。主に、隕石衝突事件を捏造する方面で。

「どうしたんです?」

《テ、テロなの! バイオテロなの~!》

「バイオテロ……?」

 舞奈の話はこうだ。今日の昼間、とある研究所で作られたウィルスが、このY市にばら撒かれたらしい。犯人は捕まえたが、拡散したウィルスは一部の市民が感染してしまったとのこと。

《しかもそのウィルス、感染力は低いんだけど、感染すると大変なの!》

「具体的に、どうなるんです?」

《女の子しか感染しないんだけど、感染すると猫になっちゃうの!》

「は……?」

 しかし、途中から話についていけなくなる優。それを察してか、舞奈も繰り返す。

《感染した女の子は、お腹の空いた猫みたいな状態になって、好きな異性に甘えまくるようになるの!》

「……」

 何そのふざけたウィルス? と思わざるを得ない優であった。



  ◇



「というわけで、これはバイオテロによる新種ウィルスが原因みたいです」

 電話の後、優は店に戻って、狼たちに状況を説明していた。それを聞いて、狼は頭痛を堪えるのに必死だった。

「ってことは何か? 二人はそのふざけたウィルスが原因で、こんな猫みたいになってるのか?」

「どうも町中がこんな感じみたいですけど」

 なんとも、狼でなくても頭の痛くなる話だ。恐らく、町のあちこちでそんな現象が起こっているのだろう。……何故下校途中で気づかないんだ?

「ってか、それならなんで闇代と美也は平気なんだよ?」

「そもそも感染力が低いみたいですし、色々と丈夫な子たちですから」

 狼の疑問に、優はそう答えた。そりゃまあ、普通に規格外な子たちだ。感染力の低いウィルスなど、取るに足らないのだろう。

「「にゃ~ん」」

「なんか唐突に感染した!?」

 かと思えば、闇代と美也が甘い声を出しながら狼に擦り寄ってきた。……って、絶対こいつら態とやってるだろ。

「ど、とうしろと……?」

「そのまま、好きにさせてあげたらいいんじゃないですか?」

 結局この『集団にゃんにゃん事件』は、警察によってワクチンが配布されるまで続いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。