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036.共和国での新拠点


 セナさんの市場を訪れ、お昼を食べに来たと伝えた。


「そうかい。じゃあ後でいいから、どこに越したか、教えてくれるかい?」


 その言葉に私は愕然とした。 新たな拠点を決めると伝え出てきたはずが、完全に忘れていたのだ。


「もしかして、カナちゃん、忘れていたのかい?」


 私は苦笑いするしかなかった。 それを見たセナさんは嬉しそうに目を細める。


「思ったより早く、遊びにくることになったようだねぇ?」


「……今晩だけ、またお世話になります」


 私は顔を赤く染めながら頭を下げた。 セナさんは快く笑って迎え入れてくれる。


 謝罪と感謝の意味も込め、私は食堂で一番高い「焼き魔魚定食」を買い込んだ。 川に生息しているが見た目はマグロに近い魔物の魚らしく、淡白ながら旨味が濃縮されているもので、私も好きなメニューでもあった。




 翌日、今度こそとセナさんに見送られ、私は商業ギルドへと向かった。


 Waooon Shopping でドライヤーを三つ購入し、そのまま保管ボックスに忍ばせる。


 ギルドに入ると、昨日以上のざわめきが起こった。 受付のお姉さんが慌てて飛び出し、私を奥の部屋へと案内する。


「ギルド長をしている、ケイロテだ」


 深々と頭を下げて出ていった後、椅子にふんぞり返り、横柄な態度で自己紹介を発したのは、長いひげとそのがっちりとした体形から、ドワーフ族と思われる男性だった。


 昨日の騒ぎで注目され、来場したらすぐに呼ぶようにと命じていたらしい。


「昨日の今日で来るとはな、で、例の鞄は持って来たということでいいんだな?」


 そんな高圧的な言葉と共に、商談が始まった。




「人族にしては良い人脈を持っているようだ。 お前は特別に認めてやってもいいぞ!」


 最後にはそう言って笑うギルド長ケイロテ。


 商談が始まってすぐ、私はリングバッグではなくドライヤーを取り出し、「王国で特別に白金貨六百枚で譲り受けたもの」として提示した結果、「手間賃をつけてやる。 ありがたく思え」と一つ白金貨七百枚での売買が成立した。


 三つで白金貨二千百枚。 日本円にして二十一億円相当の金額の提示に、脳内では狂喜乱舞していた。 ついでにバッグも所望されたため、追加で八個購入し十個を取り出した。


 さすがにまとめ買いということで一割引きし、白金貨九枚で買ってもらった。 金銭感覚が麻痺し始めているのを感じる。


 秘書のような女性が用意した山のように積み上げられた白金貨を、腰にあるバッグを経由してしまい込む。 Waooon Shopping の画面でその金額が表示され、思わずゴクリと喉を鳴らした。


「おいケイロテ、いるか?」


 そんな中、ノックもせずに開け開かれたドアから、さらに体格の良いドワーフ族と思われる男性が二人入ってきた。


「これはこれはエフリステ様、それにディミウル様も」


 そして私を一瞥した後、何やらギルド長ケイロテと話をしている。


「おい、お前はこれを再現できるか?」


 先頭切って入ってきた男性が後から入ってきた方にそう尋ねると、暫くドライヤーを見回した後、「必ず再現してみせます!」と宣言していた。


 そして三人して私を見た後、最初に入ってきたエフリスレと呼ばれていた男性が私に向かって顎をしゃくり上げる。


「女、もう帰っていいぞ!」


 その言葉にお前が言うのかよと苛立つも、貰えるものは貰ったし、と威嚇する愛犬(レイ)を撫でならがら「では失礼しまーす」と部屋を出た。


 部屋の外には先ほど案内してくれた受付のお姉さんが待っていて、丁寧にロビーまで案内してくれた。


 そのついでだと、ロビーまでたどり着いた私はお姉さんに家を借りることを相談しようと口を開く。 できる女の私は忘れることなく本日の目的を達成するのだ。


 だが、成金アホ女としての血を騒ぎ、ついつい家を「借りる」のではなく「買う」のだと言ってしまった私。


「購入をご希望ですね?」


 確認を求めてきたお姉さんに、私は特に訂正することはなかった。なにせ二十億以上持っているから。 二億じゃなくて二十億だよ? きっとお城だって買えちゃうよ?


 そんなことを考えながら、気付けば「市場に近く広いお屋敷はありますか?」などと口走っていた。 愛犬(レイ)からは甘噛みされたが、後悔はしていない。 お金はあるのだから。


 ギルドのお姉さんからは担当の者を付けると言われ、内見に行くことになった。 そして、担当となった若いお姉さんが紹介する一軒目、貴族が使っていたという屋敷を即購入となったのだ。


 貴族の屋敷としては小さ目と言われた庭付きのお屋敷。 価格は白金貨五百枚、五億ダルの物件である。


 広いリビングには豪華な調度品、広いキッチンには最新の魔道具という調理器具が並ぶ。 一階には他にお風呂もあり、残り二部屋は寝室と倉庫に使えそうだなと考えた。


 倉庫って、保管ボックスがあるのに何をしまい込むつもりだ? と考えたが、一度「こっちは寝室。ここは倉庫にいいかしら?」と口走っているので、訂正する気はないのだ。


 さらに二階には五つの部屋があるので、セナさんを呼んで使ってもらってもいいかな? お友達? 使い道はそのうち考えよう。 と確実に脳内をお花畑を作り上げてしまう私。


 居間にはフロアマットを敷き、ベッドにはマットレスを設置しよう。 のんびりと寛げる理想のマイホームを作り上げるぞ! と一人頬を緩ませている時、お姉さんから現実的に提案がなされ、引き戻された。


「侍女は必要かと思いますが、紹介もできますよ? 後は料理人についても必要なら紹介可能です」


 なるほど、ここまで広いと掃除も大変だし……でも浄化でなんとかなるかな? うーん、快適にするために色々使いたいし、秘密にしておきたいこともあるから……。


「秘密保持の契約魔法の締結についても、当方でお安く斡旋できますよ?」


 侍女は断ろうとした私に、言葉を付け加えるお姉さん。


「なら侍女さんは女性で二名お願いしたいです。 料理も出来る子がいいのですが、給料、報酬? はどのぐらいになりますか?」


 嬉々として話を聞く私。


 給金は月に金貨五十枚。 契約魔法により、私と愛犬(レイ)に関する秘密を一切漏らさないという条件をつけた。


 この世界の侍女に休みはほとんどないそうだが、私は交互に休みを取ることも契約内容に盛り込んだ。 常時一人いれば大丈夫だろう?


 すぐに見つかると言うので、そのまま移り住むことにした。


 担当のお姉さんを見送った後、待っている間に愛犬(レイ)と二人で浄化スキルをフル活用して回る。 数十分後には屋敷の中は綺麗にすることができた。 これなら侍女さんも楽だろう。 そう思いながらフロアマットなどを設置する。


 お昼を過ぎたころ、侍女を二名確保し、明日のお昼にはお姉さんと一緒にやってくると連絡がきた。


 提示した内容が高優遇過ぎて、かえって躊躇する人が多かったとも言っていた。 あれか?ホワイト過ぎてつらい的な? なら少しこき使ってもよいのかな? ここでできるようなつらい仕事、何かあったかな?


 そんなことを考え時間を浪費する。


 まだ見ぬ侍女二人をあれこれ想像しながら昼食を食べ終わると、久しぶりの安堵できるスペースとなったためか、気付けば愛犬(レイ)に抱き着いたまま寝ていたようだ。 窓の外からは夕日が差していた。


 軽く身支度を済ますと、眠い目を擦り市場へ向かう。 セナさんに正式に家を購入したことを報告した。


「……寂しくなるねぇ。 でもね、いつでも遊びきておくれよぉ?」


 寂しげに、けれど優しく笑う彼女の言葉に、私は少しだけ涙を流した。



――― 本日の収支


 市場での買い物など -350,000ダル

 ペットドライヤー / スタンド付ハンズフリー*3(クーポン*3 利用で5,000ダルOFF) -41,400ダル

 スリングバッグ*8 -28,000ダル

 販売 2,109,000,000ダル

 屋敷 -500,000,000ダル

 侍女*2 報酬(初月分) -1,000,000ダル

 契約魔法(サービス価格) -500,000ダル


 残高 1,713,505,234ダル


次回、カナに新たな出会いが……


お読みいただきありがとうございます!

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