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028.困った時のディナ頼み


 なんたらという貴族の兵士たちがやってきた騒動があった翌日の夕方。


 私は今後の修行の予定を相談するため、自宅にディナを招いていた。


「二人は?」


「ん? 今日は忙しいって。 また飲み屋のねーちゃんのとこじゃない?」


 呆れた様子のディナと二人で、夕食を食べながら相談を進める。


 私はこの際、包み隠さず話そうと決め、結界のスキルについて報告した。


「今更だけど、カナってなにもの?」


 ディナは目を大きく見開き興奮気味に聞いてきた。


「田舎から出てきた、新米の商人さんですよ?」


 そう言っておくが、彼女には鼻で笑われた。


 私は、対人戦で結界を使いこなすための訓練について相談すると、快く引き受けてくれた。 自分たちの方が弱いけど対人戦の経験などは教えることができるのだと、少し嬉しそうに言ってくれた。 お礼は何がいいかな?


 話し合いの末、ディナたちの依頼が片付く二日後に行うことを決め、初めての狩場である鉱山へとピクニックがてら行くことに決まった。 二人にも通信魔具で連絡して了解も貰っていた。


 魔具に出たラフリコは酔っていたようだけど、多分大丈夫でしょ?と笑うディナ。


 鉱山についても聞いてみる。 そこにある坑道の中には魔物が住み着いており、弱いスライムと蝙蝠、そして人型の骸骨騎士がそれなりに居座っているのだという。


 狩場的には稀に鉱石が落ちる程度で、普段はあまり人気のない場所らしい。 でもそこなら、他人の目を気にせずに対人戦の練習ができるそうだ。


 この世界に来てディナという相談相手がいることに感謝する一方、ディナには結局、私と愛犬(レイ)が異世界から召喚されたことまでは言えなかった。


 だが、愛犬(レイ)が聖女であること、私が同じスキルや治癒魔法を使えることは告げることができた。 その報告に、ディナはしばらく考え込んだ後、ラフリコとクリスには内緒にした方が良いとアドバイスを受けた。


 そのため、今回の訓練は純粋な体術のみの訓練を行うことになった。 スキルを使えば強いのだから、対人戦の訓練なら好都合だろうと。


 私の立場を配慮してくれるディナを見て、やはり話して良かったと思った。


 彼女が帰った後、鉱山で食べるための弁当でも作ろうかと考え、市場へと買い物に向かった。


 夜だし目立つこともないかな? そう思いながら外に出たのだが、やはり周囲の視線が気になるほどに向けられてしまった。


「聖女様だ」

「いや、勇者様だろ?」

「聖女様ぁ~、一杯どうだーい?」


 そんな声が至る所から聞こえてきた。


 幸いなことに直接絡んでくる者もいないのは、軽く威嚇をしながら隣を歩いている愛犬(レイ)がいるからだろう。 ふらふらとこちらに寄ってこようとする酔っ払いも愛犬(レイ)を見て慌てて路地へと逃げ込んでいた。


 私はなるべく反応しないように努めたが、好意的な言葉も多く、悪い気はしなかった。 ついつい気分が良くなり、市場では必要以上に食材を買い込んでしまった。



――― 本日の収支


 市場などで買い物 -674,500ダル


 残高 90,838,534ダル



◆◇◆◇◆



 同じ頃、夜の王都にある酒場の一角。


 ディナとパーティを組むラフリコは、目当ての新人の女性に鼻の下を伸ばしていた。 彼は短く刈り込まれた黒髪を整えながら、相棒である大剣をソファの脇に自慢げに立てかけ、得意げな表情でジョッキを煽っている。


 お相手のお姉さんは、若く愛嬌のある顔立ちをしている長い金髪が美しい女性で、つい最近この店に入った新人さんであった。


 相方のクリスもすぐ傍の席で、馴染のお姉さんに甘えるようにくっついて酒を飲んでいた。 クリスの方はそろそろ潰れそうなのか、目をしょぼしょぼとさせながらお姉さんにもたれかかってしまう。


「ラフたんお酒、強いのね。 もう一杯いく?」


 ジョッキを掲げながら「おうよ!」と応えるラフたんことラフリコに、お姉さんがボーイに手を上げ次のジョッキを注文していた。


「あっ、そう言えばこの間、冒険者ギルドの前でラフたんを見たよ。 女の子を二人も連れてたけど……あれどっちが彼女? ちょっと焼けちゃうかも?」


 ラフリコに視線を戻したお姉さんはそう言った後、胸元の開いた薄手の服を揺らし頬を膨らませてみせる。


 彼女の言葉を聞いて慌てたラフリコ。


「ちょ、待ってよ! あの二人は違うんだって!」


 彼は身を乗り出し彼女に顔を近づけ、必死に弁明を始めた。


「銀髪のローブの方はただの同僚。 もう一人、黒髪の方は最近会ったばかりのただの知り合いだよ。 さっきも鍛えてほしいって言うからさ、二日後に鉱山へ行って修行をつけてやる話をしてただけの関係さ」


 必死に言い訳を話し終えたラフリコは、「できる男はつらいなー」と肩をすくめて笑う。


「あら、そうなの? でも鍛えるって女性なのに? あれ? 黒髪って……」


「ああ、物騒な世の中だからね。 俺様が鍛えてあげてんの。 世間では黒髪の勇者だなんたって持て囃されてるようだけどな」


「黒髪で勇者って、やっぱり最近話題の勇者様って噂の人?」


 お姉さんは感心したように声を上げた後、確認するように小首をかしげる。


「そうそう。 噂の。 でもまあ俺から見たら? まだまだなんだけどなー」


「すっごーい! で? 二日後のその炭鉱って、どこにあるの?」


「北西の鉱山の麓にある廃棄された炭鉱でさ、中には骸骨ばっかりの場所なんだよ。 対人戦をしたいんだってさ。 お昼ぐらいから始めるってよ」


「へーそうなんだー! ラフたんの戦ってるところ、見てみたいわー」


 そんな賞賛にラフリコはすっかり上機嫌になり、「今度一緒に狩りに行こうぜ! 何があっても俺が守ってやるからさ!」と豪語した。


 お姉さんの嬉しそうな声を受け上機嫌のラフリコは、言われるがままに酒を煽り、酔いつぶれ、朦朧とする意識の中で何とか宿へと帰り着いたところで、ついには意識を失い倒れ込み、宿の人たちに大いに迷惑をかけるのであった。


 次の日のディナとの待ち合わせに、二人ともが盛大に遅刻し叱られるのは彼らの日常であった。


次回、対人戦へ


お読みいただきありがとうございます!

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