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~後日談② 三竜の旅立ち


 俺たちは深遠の迷宮内で、古の三竜の呪いを解いた。

 そして、その呪いは魔王自身にはね返り、魔王が迷宮主の牢獄に入ることになった。


 その後、俺たちは、魔王の牢獄を後にし、迷宮内をゆっくりと歩く。


 古代竜アルタインとその兄弟たちは、改めて俺たちにお礼を言ってくる。


 しかし、お礼を言うべきはこちらの方だ。


 魔王を倒すために、彼らには多大な尽力をいただいた。

 俺の手には、勇者剣「アルネガの星」が握られている。

 彼らの協力があったからこそ、俺は魔王を倒すことができ、ひいては魔神まで倒すことが出来たのだ。


 そして、彼らは太古の昔、魔王が世界樹を攻めて来たとき、勇者と共に世界樹を守ろうとして勇敢に戦ったのだ。


 俺は、自分の頭に飾られている『ミルレリアの祝福』に触れる。

 その神級アイテム……世界樹の冠に、付与されているもう一つのスキル。

 

 ――世界樹の洗礼(使用回数3回)


 この術を俺に与えてくれた女神様の想いは、俺にはよく分かる。

 女神様の、彼らの今までの献身に対して恩返ししたいとの気持ちが伝わってくる。その想いを、このアイテムを通じて俺に託したのだと俺は確信している。


 鑑定によると、スキル「世界樹の洗礼」は、魔物の命の循環から、世界樹の循環に、命――魂を変えることが出来る術だった。モフが聖獣になったことで、「深遠の迷宮の循環」から「世界樹の循環」に入ったように、魔物から聖獣に変えることの出来る術のようだ。これも凄い術だと思う。


 彼ら古の三竜は、かつて勇者と共に、魔王の手から世界樹を守ろうとした。三竜は世界樹の循環に入るにふさわしい働きをしたのだ。


 彼ら古代竜、アルタイン、デネル、ベーガは、もはや俺たちの仲間だ。太古より、勇者と志を共にした仲間たちなのだ。


 もう彼らを魔物とは呼ばせない。彼らは聖獣になるべき存在だ。そして、あのような暗い深遠の迷宮ではなく、世界樹の元にいくべきなのだと思う。


 俺は……古の三体の竜に向かって言う。


「アルタインさん、デネルさん、ベーガさん、"世界樹の洗礼" を受けてみませんか? 今、あなた方の魂は "深遠の迷宮の循環" にあります。そのあなた方の魂を、"世界樹の循環" に変えてみませんか?」


「なっ! なんと! そんなことが……出来るというのか! ああ……世界樹に包まれる我が魂! 我らが何度夢見たことか……!」

「なっ! なんと……。我らは魔物……死後、深遠の迷宮に入り転生をする宿命を持った存在。その我らが……世界樹のもとで転生出来ると言われるのか! ……ああ……なんと有難いことだ……」

「おお……おお……世界樹の循環に入れるとは……なんたる幸運! 素晴らしい!」


 三竜は感嘆と喜びの声を上げている。


「それでは……その術を使いますね。アルタインさん、デネルさん、ベーガさん……行きます。――世界樹の洗礼!」


 眩しいばかりの光が、彼ら三竜を優しく包み込む。


「「おお! おお……おおお!」」 


 ――天から声が聞こえて来る。


≪古代竜アルタインは、世界樹の洗礼を受け、聖獣になりました≫

≪古代竜デネルは、世界樹の洗礼を受け、聖獣になりました≫

≪古代竜ベーガは、世界樹の洗礼を受け、聖獣になりました≫


≪聖獣竜アルタインは、世界樹の循環に入りました≫

≪聖獣竜デネルは、世界樹の循環に入りました≫

≪聖獣竜ベーガは、世界樹の循環に入りました≫


「アルタインさん、デネルさん、ベーガさん! 世界樹のもとへようこそ!」

「「「おおお!!」」」

「「「やったー!!」」」


「おおお! 我らが……魔物から聖獣に……。そして……世界樹の循環に……なんとありがたいことか……これは、きっと……女神様の加護であろう! 女神様……感謝いたしますぞ!」

「おお! なんと……有難く……素晴らしいことか! トール殿、ありがとう……そして……女神様……ありがとう……」

「女神様……我らが……長年抱いていたのぞみ……叶えてくださって……ありがとう……。本当にありがとう……」


 感激する古の三竜たち。その目には、涙が溢れていた。


 聖獣になり、彼らの霊体の色は、薄暗い色から、光のように白い霊体に変化している。


 モフが虹色の転移門を出す。


 行先はすでにモフに心のなかで伝えている。島国ニホンだ。


「さあ、皆さん、これから深遠の迷宮を出ましょう。この先は島国ニホンです。そして……精霊神ラビィの元へ参りましょう」


「「精霊神……ラビィ?」」 


 三竜の声が、わずかに戸惑いの色を帯びる。


 アルタインが言う。


「そう言えば、前にお主たちが我のもとを訪ねて来たときに……言っておったな。たしか……ラビから精霊神が生まれたと……。そして、お主たちは、その精霊神を探しているとも言っておった。……そうか……お主たちの探していた精霊神ラビィは、この迷宮で見つかったのだな。救い出して、今はニホンにいるということなのだな?」


「はい、アルタインさん。その通りです。精霊神を無事救い出すことが出来ました。……そして、ぜひとも、あなた方に……精霊神ラビィに会って欲しいのです」


「うむ。我ら三兄弟は幼いころから、ある一人のラビに育てられたのだ。ラビは我らの育ての親でもあり恩がある。そのラビから生まれた精霊神にも恩があると言えよう。ぜひ、お会いしてお礼の言葉を述べたい」


 デネルとベーガも、アルタインの言葉に強くうなずく。


 彼らはまだ知らない。

 彼らの言う育ての親は、聖獣ラビミーラだということを。

 そして、聖獣ラビミーラは、精霊神ラビリアとなり……ラビリアのしっぽから生まれたのが、精霊神ラビィということを。

 つまり、彼らの育ての親は、ラビィ自身なのだ。


「さあ、門をくぐりましょう。今のあなたたちの状態なら、深遠の迷宮を抜け出せるはずです」


 彼ら三竜の霊体と一緒に、皆で転移門をくぐる。


 そこは、島国ニホンのラビの集落の広場だった。


 精霊神ラビィが、俺たちの到着を待っていた。


 ラビィは三竜の霊体に向かって微笑んでいる。



 ラビィの姿を目にし、三竜――アルタイン、デネル、ベーガの霊体は驚きの表情を浮かべる。


「父上……なのか!?」

「父様!」

「お父上!」 


「アル、デル、ベグ。よく戻ってきたね……。今まで大変だったね……本当に良かった……」


「「おおお……お……父上……!」」

「「ずっと……お会いしたかった……!」」


 三竜の目に涙があふれてくる。


「皆に一目会えてうれしいよ。やっと呪いが解けて……そして、世界樹のもとに行けるんだね……」


 そして――


 三体の古代竜の霊体は、ゆっくりと、空に昇って行く。


「勇者トール殿……父上に引き合わせてくれて、ありがとう……これは我らからのお礼だ……」


 三竜から輝く何かが落ちてくる。



―――鑑定―――

星竜の輝き(アルタインの宝石)

星竜の智慧(デネルの宝石)

星竜の情熱(ベーガの宝石)

・レジェンドアイテム(神話級アイテム) 

・三竜の力が込められた宝石

・この世に一つしかない稀有な宝石

・最高位の錬金用素材としてその効果は千変万化に及ぶだろう

―――――――― 


 俺は、彼らからの贈り物を受け取る。


「ありがとう……アルタインさん、デネルさん、ベーガさん……」


 そして――彼らは、


 世界樹のあるエルフの里の方向に……旅立っていく。


「「お父上ぇえええ――! 我らを育ててくれて……ありがとう……!」」


 精霊神ラビィ……かつての育ての親のラビに向かって、声を届ける古の三竜たち。


「ああ……行っておいで……世界樹のもとに……アル…デル…ベグ。またいつか、きっと会えるよ……」


 遠ざかり、見えなくなる、アルタイン、デネル、ベーガ。


 こうして、古の三竜たちの魂は、世界樹の元へ旅立って行くのだった。


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